一公の将棋雑記

将棋に関する雑記です。

第4回 中井広恵の将棋合宿(第5手)・カロリーナさんの熱局

2012-05-30 00:31:31 | 将棋イベント
西武秩父駅前の食事処で美味しい昼食を摂り、午後1時40分、「越後屋」に戻る。表はきょうも快晴だが、私たちにはまったく関係ない。ここから将棋マラソンの再開である。…あれっ?
「な、中井先生、髪切りました?」
「いまごろ気づいたの?」
ああ、そうか…。中井女流六段が活動的に見えたのは、髪をバッサリ切っていたからなのだ。
「オレなんか(きのう会ったときに)すぐ気づいたよ」
とW氏。
以前も書いたが、どうも私は女性の髪型に鈍感でいけない。数センチ切っただけではまるで分からず、島井咲緒里女流二段のようにバッサリとショートカットにして、初めて気づく有様である。これだから女性に縁がないのだろう。
対局の前に、女流王座戦一次予選が気になる。午後1時からは、高群佐知子女流三段と、カロリーナ・ステチャンスカ(ポーランド)戦が行われている。幸い対局中継もあるので、その将棋を大盤に並べる。
戦形はカロリーナさんの石田流三間飛車。序盤はソツなく指し、8筋からの飛車先突破を見せて、カロリーナさんが有利に見える。これはひょっとしたらひょっとするのではないか。
現在の局面に追いつき進行が滞ったので、私たちは対局に戻る。Kun氏、Kaz氏は諸先生方と指導対局。私はFuj氏とリーグ戦である。私の石田流三間飛車に、Fuj氏は角を換えて持久戦に進路を取る。
私は7九の銀を5八まで持っていったが、これがどのくらい有効だったか。さらに私は▲6八金と寄ったが、これが疑問。すかさず△8八角と打たれて不利になった。
この辺りFuj氏は、私が投了するのではないかと期待?していたらしい。バカヤロ。いくら諦めのいい私でも、さすがにここでは投了しない。ちなみにFuj氏は諦めが悪く、勝ち目のない局面でもなかなか投了しない。今回の合宿でも大野八一雄七段との指導対局がそうで、やはり延々と指していた。いま、勝ち目のない将棋を無意味に粘ることを私たちは、「Fuj(名字)」と呼んでいる。
将棋に戻る。Fuj氏に玉頭を手厚くされたら手も足も出なかったが、Fuj氏は△5五歩。私は▲5九飛と寄って、局面がほぐれてきた。
それでもFuj氏の優勢だったが、徐々に差が詰まり、最後は私の逆転勝ち。1日に5時間将棋の勉強をしているFuj氏、勉強時間ゼロの私に負けたことはショックだったろう。
高群-カロリーナ戦に戻る。カロリーナさんの▲8四歩~▲8三歩成を先受けして、高群女流三段△7二金から△8三金!! 「受けの高群」らしい力強い手だが、これで後手がいいとは思えない。
しかしカロリーナさんの攻め急ぎがあったか、局面は紛糾、むずかしい戦いになった。こちらは中井女流六段、植山悦行七段、大野七段のリアルタイム解説つき。あらゆる変化が並べられる。
107手目▲3五銀捨てに△4五玉と桂を外したのが失着。△3五同玉なら後手が残していた。しかし1分の秒読みではやむを得ない。
カロリーナさん、▲1八玉と歩を取って詰めろを外す。冷静だ。次に▲3二竜△同銀▲4六金があるから高群女流三段は△3五玉だが、カロリーナさんは▲7八角の詰めろ飛車取り! これにてカロリーナさん勝ち、と植山七段のご宣託があり、植山七段は対局に戻った。
残った中井女流六段と大野七段、私たちは、なおも進行を見守る。しかしここからが本当の見所だった。
数手後▲8九角が実現したが、高群女流三段は△5六桂と粘る。これですぐに寄りがないのは驚いた。繰り返すが、さすがに「受けの高群」である。
ここから両者ほぼ最善手が続く。と思われるのは、中井女流六段の検討どおりに局面が進行したからだ。
ちょっと、この将棋があまりにも面白すぎて、リーグ戦を指すどころではない。「急造控室」ではカロリーナさんが寄せきるか否かで、熱気を帯びていた。
高群女流三段、△3九銀の詰めろ! ここで受けに回ってはカロリーナさん、勝てない。
どうするのかと見ていると、▲6一銀の捨て駒が飛び出した。これは「控室」でも出なかった手だ。以下▲7一竜までカロリーナさんの勝ち!
これは大変なことになった。外国籍女性が公式戦で、ついに女流棋士に勝ったのだ。カロリーナさん、終始落ち着いた指し回しで、実に堂々とした戦いぶりだった。今期のベストバウトだったと思う。
植山七段が検討を打ち切ってから、30分以上も時が経っていた。惜しむらくは、この将棋が公開対局でなかったこと。生で見られたら、どんなにエキサイトしたことか。これは女流王座戦も来期は、一次予選の公開対局を考えるべきだろう。
(つづく)
コメント (2)
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