一公の将棋雑記

将棋に関する雑記です。

九州旅行9・花魁道中に酔う

2013-05-22 00:13:35 | 旅行記・G.W.編
(19日のつづき)
ああ、あ、あれが「坪井川園遊会」なのか!? おいらんの前には即席アマチュアカメラマンが群がり、彼女らをバシャバシャ撮っている。無料で撮影可らしい。チッ、私もそちらに行きたいが、手近なところに橋がない。
市電を降りたとき、向かいにあった橋を渡ればよかったのだが、これは結果論であろう。
私は約100メートル先にある橋を渡るが、長塀前に着いたときは、もうおいらんは帰りかけていた。つまり撮影会終了である。なんてこった!!
私は橋の袂に戻り、立て看板を確認する。これはやはり「熊本城・坪井川大園遊会」といった。ゴールデンウイーク中に行われるようで、回を重ねて9回目。目の前のお濠が坪井川で、先ほどのおいらんは「くまもと花魁道中」といい、この会の目玉イベントであった。
道中は午後3時半から行われていた。私が今朝7時21分発の鹿児島本線に乗っていれば、熊本に1時間早く着いた計算になるが、そのシワ寄せがここに来た。やっぱり、嫌な予感が当たった…。
しかし、と思う。この花魁道中、5月3日に行われることが多かったようだが、私は同日に熊本を訪れたことはなかったろうか。まあ、なかったのであろう。
それをいま嘆いても詮無いが、要するにこの8年間、私は花魁道中と、縁がなかったのだ。
しかし不幸中の幸いにして、きょうは午後6時半から「城彩苑」にて、2度目の花魁道中が行われる。これは必見である。きょうは午後10時までに博多に入り、「TAKE FIVE」を観る予定だったが、そうもいってられなくなってきた。
気が付くと、同じ長塀前で、20代と思しき和服の男女が、むかし懐かしい童謡を唄っていた。たぶん、プロの歌手であろう。しかし先ほどと違って、観客は数名しかいない。
こういうとき、私は積極的に客になる。そしてこの童謡がなかなか聴かせるもので、私はしばし、穏やかなひとときを過ごした。
私はすこぶる満足して、近くの熊本交通センターに向かう。ここはターミナルビルが隣接されているので、ここで軽食を摂る。
かなり迷って、パスタの店に入る。「パスタセット」はサラダとドリンク、デザート(洋梨)が付いて650円。まずまずのお値打ち価格である。
熱々のペペロンチーノをパクつく。美味い!
食後のアイスコーヒーを飲んでいると、斜め向かいの女性がガクッと頭を垂れ、顔を覆っていた。彼女に何があったのか。
店を出て、坪井川付近に戻る。そろそろ花魁道中の時間だが、辺りはひっそりしている。そうか、ここは坪井川。「城彩苑」は別のところだ。
城内を少し登ったところに、城彩苑はあった。入場するが、そこは土産物屋や食べ物屋がズラッと並んでおり、道の駅の趣だ。熊本城にこんなところがあったなんて、知らなかった。
入った左手に、黒山の人だかりがある。覗いてみると、先ほどの花魁一行が勢揃いし、いましも道中をせん、というところだった。3時半の会もこんな感じでスタートしたのかと思うとまた悔しさが募ってくるが、いまはこれから始まる花魁道中を精いっぱい楽しむしかない。
道中開始。まず、振袖新造と呼ばれる若手の遊女が練り歩く。その数20人以上か。皆さんさすがに器量よし。身に着けている振袖も艶やかで、目を奪われる。バックの三味線の音が、いい雰囲気を醸し出している。
禿(かむろ)と呼ばれる花魁のお世話係の少女が続く。その後方にはお待ちかね、4人の太夫が、黒塗りの三枚歯下駄をゆるゆると8の字にくねらせ、一歩一歩、歩を進める。太夫はかなり齢を重ねていそうだが、それをいうのは野暮である。
その横には男衆がおり、太夫はその男衆の肩に手をかけている。なにぶんにも下駄の歯が高いので、太夫はこれでようやっと歩くことができるのだ。背後の男衆は長柄傘をさし、この3人が一幅の絵になっている。
私が江戸時代に生きていたならば、せいぜい長屋住まいの百姓だったろう。太夫と一夜をともにできるのは大金持ちだったというから、私には別世界の話。こうして花魁一行にお目にかかれるのは、幸せなことである。
苑内の観光客も、自分が江戸時代にタイムスリップした錯覚に陥っているようで、太夫や振袖新造の美しさに、ため息をもらすばかりだ。そうだ、と思う。室谷由紀ちゃんが太夫になったら、どんなに艶やかだろう。























一行は苑内を一周すると、苑の中央にある演舞台に上がった。最後に太夫が上がると、「太夫!」の掛け声が飛んだ。なんて華やかな世界。ここが2013年の熊本県であることを忘れてしまう。ここは確かに、数百年前の遊郭だった。私は感動して、涙が出てきた。
「来年から、5月3日は熊本城か…」
私はそうひとりごちると、大いに満足して、電停に向かった。
(つづく)
コメント (4)
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