植山悦行七段に平手で教えていただくのは、何回か前の将棋合宿以来、２度目。棋士との手合い割をどうするかはむずかしいが、個人的には、アマが男性棋士に平手で教わるのはおこがましいと思っている。実際、アマと平手は指さないとする棋士も大勢いるし、それが当然でもあろう。つまり、アマとの平手戦を厭わない植山七段が不可解なのだ。しかしそのご厚意はありがたく、涙が出る。
右ではKun氏がやはり平手で教わっていたが、考え方は私と同じだろう。
というわけで、指導対局開始。私は四間飛車に構えた。
「大沢君は居飛車を指しなさい」
が植山七段のアドバイスだが、私はヒトのいうことは聞かないのである。植山七段は居飛車から、予定の△５三銀左。アマ相手に玉を固くして圧倒しようなどとは眼中になく、好きなだけ攻めさせていなすのが植山七段の姿勢だ。
私は大山康晴十五世名人を気取って、▲３八飛と袖飛車にする。しかし△７二飛に▲７八飛、数手後にまた▲３八飛と、ハッキリしない。形だけマネても私なんぞには指しこなせないから、右往左往するだけで、無様な姿を晒すだけになってしまった。
しかし戦わずして模様がよくなった植山七段にも緩手が出る。△８六歩と突き捨てた手がそうで、当然の▲８六同歩が、次に▲８七金～▲７六金の盛り上がりを見せて、絶好になった。今度は植山七段が忙しい。
ところが私にも疑問手が出る。△６六歩▲同銀△６五銀とブツケてきた手に▲同銀と取った手がそれで、ここは先に▲８五歩と突くべきだった。
本譜△６五同桂に、▲６六歩がまた悪手。植山七段に軽く△５七桂成と捨てられ、やむない▲同金に△４八銀と飛車金両取り（▲３九に飛車がいる）に打たれては、一遍に形勢を損ねてしまった。
もう投了してもいいのだが、せっかくの平手戦の機会である。そう簡単には投げられない。
果たして、勝負は分からないものだ。必勝形になった植山七段が温泉に入ってしまい、厳しく寄せに来ない。反対に私は死んだフリをしたまま、一発を狙っていた。それが功を奏し、気が付いたらいい勝負になっていた。では終盤の局面を記す。
上手・植山七段：１三歩、１五香、１八竜、１九成桂、２二玉、２三歩、３三桂、４二金、４三歩、５三銀、６三金、７五歩、８六竜、９一香、９三歩 持駒：金、銀、歩４
下手・一公：１二歩、３八香、３九歩、４六歩、４七銀、５六歩、５七角、５九金、６六歩、６七玉、７七桂、７八銀、８五歩、９六歩、９九香 持駒：角、桂、歩２
（△６三同金まで）
以下の指し手。▲３六角△５二金▲１一歩成△３二玉▲１八角△同成桂▲２一と△４四銀▲３四桂△６四角▲６五歩△５三角▲６一飛△５一歩▲２二と△４一玉▲９一飛成△６六歩▲５八玉△８八竜▲７九歩△３七歩▲４二香△同金▲同桂成△同玉▲６一竜 まで、閉館時間により、無勝負。
▲６三歩成と桂を取り、△同金とした局面。ここで私は▲３六角と打ったが、△５二金と王手金取りを避けながら寄られてみると、よくなかった。ここはすぐに▲３四桂を利かすべきだった。
私は▲１一歩成だが、またも△３二玉と寄られて、少しずつ先逃げされている感じだ。
私は及ばずながらも▲２一と。△同玉とされても足らないと見ていた。
しかし△４四銀がどうだったか。▲３四桂が当然とはいえ好手だった。次の▲３一飛が妙に受けにくい。事ここに至って植山七段は熟考する。この将棋を負けてはシャレにならん、というところだ。実際ここでは、私は勝ったと思った。
ところが植山七段は△６四角。なるほど！ という手で、私は全然読めなかった。とはいえこれではやっぱり、ヨリが戻った感じである。
最後は私が▲６一竜と寄ったところで、教室の閉館時間になり、無勝負となった。
しかし…どうも話がうますぎる。私の必敗だったのに、ヨリが戻るわけがない。そこで私は思う。女流棋士と違い男性棋士になると、相手に気取られないよう、好手風の疑問手を指して緩めてくれるのではあるまいか。そう考えると、思い当たる手がいくつもある。
植山七段の懐の深さに、改めて感服したのであった。
帰りは、植山七段、Ｗ氏、Wa氏、私の４人で、西川口駅近くにある「大味（タイミー）」で食事。
このメンバーで食事は初めて。Wa氏は食事会のレギュラーになりつつある。大味の料理は相変わらず大盛りで、私はやっと平らげる有様だった。
食後はファミレスでおしゃべり。こうやって将棋の雑談をしているときがいちばん楽しいはずだが、ここ数年は、時が経つごとに、心の底から楽しめなくなってきた。もう、１か月先のことを考えるのもコワい。
前述のとおり、きょうは植山七段の誕生日だったので、食事代ぐらい私が出そうと思ったが、固辞された。一生徒が差し出がましいことをしてしまったようである。
右ではKun氏がやはり平手で教わっていたが、考え方は私と同じだろう。
というわけで、指導対局開始。私は四間飛車に構えた。
「大沢君は居飛車を指しなさい」
が植山七段のアドバイスだが、私はヒトのいうことは聞かないのである。植山七段は居飛車から、予定の△５三銀左。アマ相手に玉を固くして圧倒しようなどとは眼中になく、好きなだけ攻めさせていなすのが植山七段の姿勢だ。
私は大山康晴十五世名人を気取って、▲３八飛と袖飛車にする。しかし△７二飛に▲７八飛、数手後にまた▲３八飛と、ハッキリしない。形だけマネても私なんぞには指しこなせないから、右往左往するだけで、無様な姿を晒すだけになってしまった。
しかし戦わずして模様がよくなった植山七段にも緩手が出る。△８六歩と突き捨てた手がそうで、当然の▲８六同歩が、次に▲８七金～▲７六金の盛り上がりを見せて、絶好になった。今度は植山七段が忙しい。
ところが私にも疑問手が出る。△６六歩▲同銀△６五銀とブツケてきた手に▲同銀と取った手がそれで、ここは先に▲８五歩と突くべきだった。
本譜△６五同桂に、▲６六歩がまた悪手。植山七段に軽く△５七桂成と捨てられ、やむない▲同金に△４八銀と飛車金両取り（▲３九に飛車がいる）に打たれては、一遍に形勢を損ねてしまった。
もう投了してもいいのだが、せっかくの平手戦の機会である。そう簡単には投げられない。
果たして、勝負は分からないものだ。必勝形になった植山七段が温泉に入ってしまい、厳しく寄せに来ない。反対に私は死んだフリをしたまま、一発を狙っていた。それが功を奏し、気が付いたらいい勝負になっていた。では終盤の局面を記す。
上手・植山七段：１三歩、１五香、１八竜、１九成桂、２二玉、２三歩、３三桂、４二金、４三歩、５三銀、６三金、７五歩、８六竜、９一香、９三歩 持駒：金、銀、歩４
下手・一公：１二歩、３八香、３九歩、４六歩、４七銀、５六歩、５七角、５九金、６六歩、６七玉、７七桂、７八銀、８五歩、９六歩、９九香 持駒：角、桂、歩２
（△６三同金まで）
以下の指し手。▲３六角△５二金▲１一歩成△３二玉▲１八角△同成桂▲２一と△４四銀▲３四桂△６四角▲６五歩△５三角▲６一飛△５一歩▲２二と△４一玉▲９一飛成△６六歩▲５八玉△８八竜▲７九歩△３七歩▲４二香△同金▲同桂成△同玉▲６一竜 まで、閉館時間により、無勝負。
▲６三歩成と桂を取り、△同金とした局面。ここで私は▲３六角と打ったが、△５二金と王手金取りを避けながら寄られてみると、よくなかった。ここはすぐに▲３四桂を利かすべきだった。
私は▲１一歩成だが、またも△３二玉と寄られて、少しずつ先逃げされている感じだ。
私は及ばずながらも▲２一と。△同玉とされても足らないと見ていた。
しかし△４四銀がどうだったか。▲３四桂が当然とはいえ好手だった。次の▲３一飛が妙に受けにくい。事ここに至って植山七段は熟考する。この将棋を負けてはシャレにならん、というところだ。実際ここでは、私は勝ったと思った。
ところが植山七段は△６四角。なるほど！ という手で、私は全然読めなかった。とはいえこれではやっぱり、ヨリが戻った感じである。
最後は私が▲６一竜と寄ったところで、教室の閉館時間になり、無勝負となった。
しかし…どうも話がうますぎる。私の必敗だったのに、ヨリが戻るわけがない。そこで私は思う。女流棋士と違い男性棋士になると、相手に気取られないよう、好手風の疑問手を指して緩めてくれるのではあるまいか。そう考えると、思い当たる手がいくつもある。
植山七段の懐の深さに、改めて感服したのであった。
帰りは、植山七段、Ｗ氏、Wa氏、私の４人で、西川口駅近くにある「大味（タイミー）」で食事。
このメンバーで食事は初めて。Wa氏は食事会のレギュラーになりつつある。大味の料理は相変わらず大盛りで、私はやっと平らげる有様だった。
食後はファミレスでおしゃべり。こうやって将棋の雑談をしているときがいちばん楽しいはずだが、ここ数年は、時が経つごとに、心の底から楽しめなくなってきた。もう、１か月先のことを考えるのもコワい。
前述のとおり、きょうは植山七段の誕生日だったので、食事代ぐらい私が出そうと思ったが、固辞された。一生徒が差し出がましいことをしてしまったようである。
