一公の将棋雑記

将棋に関する雑記です。

世田谷花みず木将棋オープン戦を見に行く(その3)・眼福

2013-05-05 01:35:52 | 観戦記
きのう4日は、「博多どんたく港まつり」を楽しんだ。博多はよかねぇー。

(きのうのつづき)
山口恵梨子女流初段は▲8八金。▲8八銀とハッチを閉めたいところだが、△8六歩があるからやむを得ない。ここが矢倉穴熊の神経を遣うところだ。このあたりも、山口女流初段の将棋ではない気がする。
鈴木環那女流二段は△3三桂。これで▲3五歩とは仕掛けづらくなった。
山口女流初段、▲7五歩△同角と呼びこんで▲7六銀だが、これがどうだったか。鈴木女流二段にすかさず△8六歩と突かれ、▲7五銀は△8七歩成で壊滅だから▲8六同歩だが、△同角と手順に逃げられては、大きく目算が狂ってしまった。
私なら半分戦意喪失だが、山口女流初段はしかし頑張る。解説の森下卓九段は、山口女流初段が指すたびに「なるほどー!」を連発して、まるで中倉彰子女流初段のようだ。しかし辛口の解説で知られる森下九段、どこまで感心しているのか分からない。
聞き手の中村真梨花女流二段も、無言で指し手を掲示する。第1局のときもそうだったが、中村女流二段は手がよく見える。「私に指させなさいッ」と主張しているかのようだ。
局面は鈴木女流二段優勢。△8六歩と垂らし、▲7九桂と受けさせたところで勝負あった。最後は△8七桂と直撃し、鈴木女流二段の快勝となった。やはり、相居飛車では鈴木女流二段に一日の長があった。山口女流初段は残念だったが、居飛車の芸域を拡げようとする意欲は大いに買いたい。
仮に実戦で指さないにしても、指導対局でお客さんから、「矢倉の定跡を教えてください」といわれとき、「私は居飛車は指しません」ではプロとはいえない。基本的な定跡をスラスラ並べてこそ、女流棋士として尊敬されるのである。
このあとは、小学生竜王戦と中学生竜王戦の決勝戦があるらしい。女流棋士の決勝戦は午後2時40分からというから、相当時間がある。もう室谷由紀女流初段も山口女流初段も鑑賞したし、よほど帰ろうかと思った。きょうのうちに、録りだめしたテレビ番組を見たかったからだ。
でも室谷女流初段のナマ対局である。すんでのところで思いとどまり、私は昼食に出た。
高島屋で摂らないで、近所をぶらぶらするのが私流。不案内な地で摂る食事は楽しい。しかし安くて量のありそうな定食屋がない。牛丼屋があればそれでもいいのだが、ニコタマには無縁であろう。
結局、最初に見つけた和定食の店に入った。メニューを見ると、日替わり定食が850円とあり、イヤな予感がした。表に掲出されているメニュー表には、800円とあったからだ。
こういう「見積もり」があやふやなところは、信用できない。
食事は焼魚定食で、まあまあだったが、ちょっと…という感じもあった。ただ、食後のコーヒーが絶品で、これだけで500円の価値はあった。
とするならば、及第点ではないのかの意見もあろうが、食事処でコーヒーが美味くても、意味はない。
玉川高島屋の6階に戻ると、小学生竜王戦(正確には小学生高学年)の決勝戦をやっていた。手厚く▲5四金と打ったところで、▲2八に竜がいた。私はそれを、椅子席の後ろから観戦する。観客席は、対局者の関係者でいっぱいのようだ。
解説は森下九段と上田初美女王(当時)。すでに後手クンが敗勢なのだが、森下九段は例によって「なるほど~」を連発し、私たちに観戦の興味をつなげる。
しかし中盤の不利は大きすぎたようで、先手クンの優勝となった。
続いて中学生竜王戦の決勝戦。解説は島朗九段、聞き手は山口女流初段である。
本局は相振り飛車となった。しかしその手順に若干違和感があったようで、山口女流初段が異を唱える。これには島九段も「私は振り飛車を指さないんで…」と、山口女流初段の博識ぶりに、いたく感心した様子だった…というのは島九段一流の謙虚さで、九段は約10年前に振り飛車の斬新な指し方を網羅した「島ノート」を上梓、将棋ペンクラブ大賞・特別賞も受賞している。ここは山口女流初段の顔を立てたというところ。
将棋は後手クンが手厚く指している。世間話になって、島九段が、
「私は世田谷の将棋大会に長く携わっていまして、小学生大会は150人くらい参加してくれてありがたいです。ところでその対局日が毎年4月29日で、前日その準備をするわけですけども、あの、その、ホントにどうでもいいことなんですけども、この4月28日が妻との特別な記念日でして、いつも私は家にいなくて、その、ホントにどうでもいい話なんですけども…」
と、苦しい胸の内?を明かしてくれる。
さらに
「(山口さんは、性格は)穏やかだけど将棋は乱暴なところがありますよねえ」
と口をすべらし、場内から微苦笑が起こった。
局面は後手優勢。先手は序盤で▲2八銀と上がったが、これが不急の一手で、結果的に玉の逃げ道を塞ぐ悪手になってしまった。
島九段は「これ(▲2八銀)がねえ…」と何度も口にした。プロから見れば、これが敗着だったのだろう。
以下も後手クンが正確に指し、勝ち名乗り。彼は2連覇だそうで、なるほど場馴れしている感じだった。
表彰式もしっかり行われた。ここでもらった金メダルと銀メダルは、彼らの一生の宝物になるに違いない。
ここで観客が若干入れ替わる。私はそこにそのまま居残った。ここからなら両対局者も大盤も見える。立ち見はダメと追い出されることもあるまい。
いよいよ「第6回世田谷花みず木将棋オープン戦」の決勝戦である。
決勝のふたりが現れるが、私は目を見張った。鈴木女流二段と室谷女流初段が、艶やかな着物と袴で登場したからだ。
(つづく)
コメント (4)
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