一公の将棋雑記

将棋に関する雑記です。

3度目の愛(前編)

2019-05-09 00:06:38 | 女流棋士の指導対局会
先月27日(土)は、埼玉県川口市の大野教室にて、飯野愛女流初段の指導対局会があった。
その前は昨年9月30日の山根ことみ女流初段まで遡る。生活にハリがないと外出も億劫になるもので、その後はまったく受ける気がしなかった。今回は「女流棋士ファンランキング」第1位の登板ということで、申し込んだわけだった。
今回は14時の回。川口駅で降りた後、「池田書店の大山本」を探すべくブックオフに行くも、該当場所に店舗はなかった。何だか更地になっていて、移転か閉店してしまったらしい。
スマホを繰ると線路の反対側、すなわち大野教室の先にブックオフがあり向かったのだが、道に迷って断念。時間も迫っているので。教室に向かった。
入室すると、大野八一雄七段、スタッフのW氏が私にチラシを見せた。6月16日(日)に行われる「女流棋士発足45周年記念パーティー」である。
これは5年前にも行われた大々的なもので、女流棋士ファンにはたまらない企画である。
ただ参加費は20,000円と高額で、相当ハードルが高い。今さら女流棋士との交流を望まない私はあまり興味がないが、大野七段らは私が申し込むものと決めてかかっていた。
でも申し込みは留保しておく。
飯野女流初段がいた。今日は赤紫のカーディガンを羽織り、紺系のロングスカート。凄まじいかわいらしさで、見とれてしまう。
まず、飯野女流初段から色紙をいただく。これは任意で、事前に申請すれば、為書き入りの色紙がいただけるのだ(2,000円)。私は「棋愛」を所望していた。
次に、飯野女流初段とのツーショット撮影である。しかし私は写真に写るのが嫌いなので、これは遠慮した。
午後1時58分、いよいよ対局開始である。
「平手でよろしいでしょうか」
「はい」
「先生も飛車振りたいでしょ?」
といういつもの会話のあと、私は▲7六歩と突いた。

△女流初段 飯野愛
▲一公
初手からの指し手。▲7六歩△3四歩▲2六歩△4四歩▲4八銀△3二飛▲2五歩△3三角▲5六歩△4二銀▲6八玉△6二玉▲7八玉△7二銀▲5八金右△7一玉(第1図)

この回の対局者は5人で、左から二枚落ち、私、香落ち、飛車香落ち、飛車落ちという手合い。なお、後から1人遅れて来る予定である。
私の右の人は常連で、最初は八枚落ちを所望していたが、熟慮の末、香落ちになった。
飛車香落ちの手合いは小さな女の子。こうした出会いが、将来の女流棋士を生んだりするのだ。
私の飯野女流初段との指導対局は3度目。過去2回は私が幸いしたが、1局目は、私が▲6三香(参考A図)とした手に飯野女流初段が△7一玉と引いた手が悪手で、ここは△6二歩としておけば、▲9三歩成以下の殺到も上手玉は寄らず、飯野女流初段が勝っていた。

また2局目は飯野女流初段の投了が悪手(参考B図)で、ここで△8四歩とすれば上手玉は寄らず、むしろ上手を持ちたい形勢だった。

つまり私としては2局とも勝負に勝って将棋に負けた感じで、消化不良なのである。今回は勝っても負けても、それを払拭したかった。
将棋は飯野女流初段の三間飛車。過去2局と同じなのだが、今回はなぜか四間飛車を予想していて、それなりに準備はしてきたのでアテが外れた。

第1図以下の指し手。▲3六歩△5二金左▲4六歩△5四歩▲6八銀△8二玉▲5七銀左△9四歩▲9六歩△6四歩▲3七桂△2二飛▲5五歩△同歩▲4五歩△5三銀▲4六銀(第2図)

私は▲3六歩とし急戦を明示した。もちろん持久戦もあるが、対局時間が1時間半では、じっくりした戦いは不向きだ。
飯野女流初段は△5四歩と突き、首を振った。いつもの将棋にしちゃったか、という感じか。
私は▲3七桂と跳ね、飯野女流初段は△2二飛。後の飛車の走りを防ぎ、手堅い一着だ。
私は▲5五歩と、習いある仕掛け。△同歩に▲4五歩。これを△同歩は▲同桂△4四角▲5四歩で駒得が約束され、下手有利。よって△5三銀は当然である。
▲4六銀にはいくつか応手があるが……。

第2図以下の指し手。△5四銀▲5五銀△同銀▲同角△4三金(第3図)

右の男性は相振り飛車になっていたが、形勢が思わしくないのか、大仰に溜息を吐く。いつものパターンで、私もつられて苦笑した。
また飛車香落ちの女の子は、早くも端を破り、指しやすい。あとは成香をどう活用するかだ。
第2図で△5六歩は、▲4四歩△同銀▲4五歩△5三銀▲3三角成△同桂▲8八角△4二金▲3五歩△同歩▲4七銀△3九角▲2六飛△8四角成▲5六銀△7四馬▲3五銀(参考1図)という感じになるが、上手には△9五歩の端攻めがあり、振り飛車も十分指せる。

しかし飯野女流初段は△5四銀。もちろんこれもあり、以下も相当難しい。
私は定跡通り銀交換をするが、第3図の次の手を誤った。

第3図以下の指し手。▲4四歩△同角▲同角△同金▲5三角△5四金▲3一角成△5二飛▲2一馬△4七歩▲同金△6五金▲5四歩△5五角(第4図)

第3図では▲8八角と引くのが定跡だと思う。以下△4五歩▲5五銀△4四銀▲同銀△同金▲2四歩△同歩▲2三歩△同飛▲3二銀△2二飛▲2一銀成△2三飛▲1五桂△2一飛▲4五桂(参考2図)が進行の一例だ。

だが私はうっかり▲4四歩と取り込んでしまった。2月の支部対抗戦ではふつうに▲8八角と引いたのに、何をやっているのか。
本譜、飯野女流初段は一瞬動きを止めたあと、△4四同角と取った。これには私も▲同角と取り、▲5三角が継続の一手。ここ▲3一角は、△5二飛▲5三銀△3二飛▲4二角成△同飛▲同銀成となるが、上手に捌かれていると思った。「▲5三角」は中原誠名人が大山康晴十五世名人との第44期名人戦第1局で指した手で、それを拝借した(参考3図)。

本譜、私は手順に桂得を果たしたが、中央がいかにも薄い。そこで飯野女流初段は△4七歩。ここで、6人目の客が現れた。今日はゴールデンウィークの初日だが、もちろん仕事の人もいるのだ。
6人目の男性は、平手を所望した。時々見かける方で、かなりの手練れである。
盤面。私は▲4七同金の一手だが、さらに中央が手薄になってしまった。そして上手は△6五金と、手順に金を活用する。なんだか本当に大山十五世名人みたいだ。
△5五角にはどう受けるか。

第4図以下の指し手。▲7七桂打△4二飛▲4三歩△5二飛▲6五桂△同歩▲8八銀△6六歩▲同歩△6五歩(第5図)

私は手堅く▲7七桂打とした。得した桂だし、これでいいと思う。
飯野女流初段は△4二飛と寄ったが、▲4三歩△5二飛となっては一手パスだと思う。ただ、私の馬も二重に止まり、活用しにくくなった面はある。
ともあれ▲6五桂と金を取り、これで金得。悪いはずがないと思った。
△6五同歩には角成りを受けなければならないが、▲7七銀は△8五桂が気になったので、じっと▲8八銀と受けた。一瞬カベ銀なので気が利かないが、ほかに手が思いつかなかった。
飯野女流初段は△6六歩。玉のコビンを突いてイヤな手だが、私は何はともあれ、△4六歩がイヤだった。以下▲5七金なら△4五桂▲同桂△4七歩成でどうか。優勢を意識している下手にとっては、こうやって勝負勝負と来られると、相当気持ちが悪かった。
本譜△6五歩に、次の手が私流である。

(つづく)
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