一公の将棋雑記

将棋に関する雑記です。

プロはそんな手を考えない

2019-05-29 00:06:22 | 将棋雑考
渡部愛女流王位に里見香奈女流四冠が挑戦している第30期女流王位戦五番勝負。第2局は8日、渡部女流王位の出身地・北海道帯広市で行われた。結果は渡部女流王位が勝ち、1勝1敗のタイに持ち込んだ。
その第2局で私が注目したのは、第1図である。里見女流四冠が△5七歩と叩き、▲同金に△4六歩▲同歩と突き捨てた局面だ。

ここで私が気になったのは△5六歩である。これに▲同金と▲4七金は△6七歩成だから、先手は▲6六金と逃げるしかない。しかしそこで△5七桂が痛打である。
これに▲同飛は△同歩成だから先手は▲5九玉と寄るが、さらに△4九桂成▲同玉△4七金(参考A図)でどうか。

参考A図で▲5六飛なら、△6六馬▲同歩△4八金打で詰み……というのはいくらなんでもココセで、手順中▲6六同歩で▲7四桂△9三玉▲6六角として先手勝勢。
とはいえ△5七桂までの手順は、アマ同士では相当先手が気持ち悪いはずで、実際ツイッター解説の長沼洋七段も、▲5七同金の局面で「△5六歩とか△5六香が嫌ですね」と述べていたのだ。
しかし△4六歩▲同歩の時に、「後手は桂も香も渡しにくいんですね」と見解を修正した。
本譜は第1図以下△8九成香▲6八銀△8八馬▲2二歩と進んだのだが、これは先手陣が厚くなった形だ。
里見女流四冠はそこで△5六歩と叩いたが証文の出し遅れっぽく、▲同金△8七馬▲5九玉△4七歩に▲2一歩成(第2図)が大きな手で、以下は渡部女流王位が華麗にまとめた。

それにしても分からないのが、第1図で本当に△5六歩がなかったのか、ということだ。
解説はあのあと△5六歩に一度も触れなかったし、感想戦でもこの周辺の感想はなかったっぽい。
ということは、プロレベルでは▲4六同歩の局面で△5六歩は「ない手」なのだ。もう、解説するまでもないのだろう。ここに私は、プロとアマのレベルの差を見たのである。
(6月1日追記:△5六歩▲6六金△5七桂には、▲同飛△同歩成▲7四桂で、後手玉に詰みあり、の指摘が読者からあった)

さて、今日29日は女流王位戦第3局である。実は両局の間にも清麗戦で2人の対局が組まれ、それは負けた方が予選敗退という大一番だったが、里見女流四冠が制した。
渡部女流王位は残念だったが、女流王位防衛のために、一局助かったと思えばいい。
第3局も、双方力一杯戦ってください。
コメント (2)
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