一公の将棋雑記

将棋に関する雑記です。

第9期女流王座戦一次予選一斉対局の瞠目の手

2019-05-23 00:06:30 | 将棋雑記
11日(土)に、第9期女流王座戦一次予選の一斉予選が行われた。
これはマイナビ女子オープン一斉予選と並び華やかな対局だが、マイナビと違って一般の観戦サービスはない。
今回は新宿の「AP西新宿」で行われたが、観戦スペースは作れそうなだけに、惜しい。関係者は観戦サービスを検討してほしいところである(といってそれが実現しても、私が行くかどうかは不明だが)。
今期も無料中継があったので、私も時々戦況を見た。今年の外国人招待選手は、トゥルムンフ・ムンフゾルさんだった。モンゴル出身の17歳とのこと。
相手は渡辺弥生女流初段で、こちらは将棋界を代表する才女である。これは面白いカードになった。
といっても、ムフンゾルさんはやはり外国人。数年前のカロリーナ・ステチェンスカさんは別にして、さすがに女流棋士相手には勝負にならないと見ていた。
ところが――。
序盤から乱戦になって、ムフンゾルさんはここからボロ負けするんだろうなと思ったら、意外に善戦している。
私が感心したのは第1図の▲4九歩で、要するに、△同飛成に▲5九金打と先手を取る意味だ。これは本か誰かに教わらないと指せない手で、ムンフゾルさん、相当将棋を勉強していると思った。


さらに進んで第2図。この▲9八角もよさそうな手だ。なんだか羽生善治九段が指しそうな手で、これもプロの実戦譜を並べないと浮かばない手だと思う。
それでプロフィールを確認すると、ムフンゾルさん、何とチェスの強豪らしい。しかもネット将棋でも、アマ四段で指しているらしい。
道理で……。いや、これは大変な強豪がいたものである。
勝負は渡辺女流初段が勝ったが、ムフンゾルさん、実に堂々とした戦いだった。
ムンフゾルさんが本気で女流棋士を志望したら、叶えられそうなのがすごい。世界の将棋事情はこんなにも進歩しているのだと、ショックを受けた一局でもあった。

続いて注目したのは、村田智穂女流二段と谷口由紀女流二段の一戦である。先番谷口女流二段の中飛車に、村田女流二段は居飛車穴熊。中盤で捌きあって、第1図になった。

この局面、解説の井出隼平四段は「結着はまだ先かもしれませんね」と語っていた。それは、ここから10手以内に終わることを示唆していない。ところが実際は、ここから9手で終ってしまった。

第1図以下の指し手。▲5三成銀△5七歩▲2一馬△同玉▲4四桂△1一玉▲3二銀△8七角▲5四歩(投了図)
まで、谷口女流二段の勝ち。

谷口女流二段は▲5三成銀。狙いが分からない悠長な手で、終盤の忙しい時に何をやってるんだろうと思った。
村田女流二段は当然△5七歩。これが厳しく、井出四段は「▲5三成銀では▲2九金がよかったと思います」と解説している。
ところがそこで狙いの手が出た。
▲2一馬!

一閃、という感じの手で、みながあっと驚いた。
井出四段「……これはすごい寄せです。こんなに谷口さん強いのか」
これに△2一同金は▲4一竜が詰めろなので△同玉だが、そこでじっと▲4四桂がうまい。次に▲3二銀以下の詰めろだ。しかも後手は5筋に歩を打ってしまったので、適当な受けがないのだ。
村田女流二段は△1一玉と早逃げしたが、▲3二銀がまた詰めろ。
△8七角には▲5四歩と繋げて、受けなしである。村田女流二段も潔く投了した。

いやはや、久しぶりに鋭い寄せを見た。▲2一馬は今年度ピカ一の手で、全盛時の福崎文吾九段を思わせる。男性プロの見解を凌駕したのだから、大したものだ。
谷口女流二段は次の対局でも、休場明けの山田朱未女流二段に勝って、二次予選進出を決めた。
これは谷口女流二段、今期の台風の目になりそうである。
コメント
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