今回用意されたアルコールは、ビール、チューハイなどのほかに日本酒がある。ノースリーブの女性ら、会員からの提供のようだ。つまみはスナック類が主だが、手作りの惣菜もある。これは湯川恵子さんの手によるものかもしれない。将棋ペンクラブは会員の協力で成り立っているのだ。
立食形式は移動が自由なので、私も多くの人と話ができる。
幹事のKan氏に、社団戦に誘われる。今年は6月30日が第1日だ。人間、ヒトから必要とされているうちが花だが、もう私は要らないんじゃ……とは思う。
佐藤紳哉七段が控室からカツラを持ってきた。それを私たちの前でかぶる。
「オオーッ……!!」
周りから歓声が沸いた。この歓声は何だと思うが、仮面ライダーの変身を間近で見た感動に近いものがあるかもしれない。
井道千尋女流二段、堀彩乃女流2級は誰かと話していて、まずまず。
窪田義行七段は静かにおつまみをつまんでいる。棋士を退屈させてはいけないが、私ごときに窪田七段の相手は務まらないので、私は黙ってドリンクを飲むのみである。
大盤では会員氏が新たな詰将棋を出題している。もちろん双玉なのだが、これは即興で創っているのか、作図を思い出しているのか……。
バトルロイヤル風間氏の似顔絵コーナーが始まった。これが隠れた名物で、女性は原則的に、全員描いてもらえる。私は自身の似顔を頼んだことはないが、バトル氏が勝手に描いてくれたことがある。ブスッと不機嫌な顔がそっくりで、やはりプロは違うと感心したものだ。
バトル氏は今回も華麗に描いてゆく。部分的な特徴を誇張気味に描いて、さすがによく似させるものだ。出来栄えを見せてもらうが、やはりポイントは目だ。これが全体の7割を占める気がする。
なお昨年は藤井聡太七段などの「おまけ似顔絵」が付いたが、今年はモデル単独のようだ。
そしてここまで、将棋会、軽食、棋士の色紙、懇親会、棋士との撮影、似顔絵……とこれだけついて4,000円とは、本当に安い。
御徒町将棋センター席主にして東京アマチュア将棋連盟理事長・今西修氏の挨拶があった。今西氏の厚意があったからこそ、私たちは関東交流会を継続できた。今西氏には感謝あるのみである。
やがて、男性の新会員も、バトル氏に似顔絵を描いてもらいはじめた。バトル氏はもちろん、手抜きなしである。
そのうちの一組は父子での参加だ。その男性氏が「大沢さんは強い!」と言うから何事かと思った。以前ペンクラブの将棋会で私と対局したことがあるそうで、たまたま私が勝ったらしい。「ほら私が石田流に組んで、大沢さんに粉砕されたやつ」
粉砕した覚えはないが、内容は思い出した。しかし数ヶ月前の将棋を持ち出すとは、男性氏もかなりの将棋バカだ。将棋ペンクラブは個性派の集まりと改めて思う。
会場の隅では、来場の女性だけで記念写真を撮っていた。恵子さん、ミス荒川放水路・MISAKOさん、デザイナーの小川敦子さん、幹事のAkuさんを除いても、純粋会員が6人くらいいた。これは大変な人数といってよい。
午後7時30分ごろ、中締めになった。湯川博士幹事の挨拶。
「今年から御徒町になって、あれほど告知したのに、千駄ヶ谷に行った人がいたみたいね。
やっぱり将棋会館で指したい人もいるだろうから、入場は50人を予想していました。でも最終的には70人まで行ったのかな、ありがたいことです。
じゃあ一丁締めで」
よーお、ポン!!
私は一本締めとの判別がつかず、2つめを叩く用意もしていた。一丁締めは1回叩くだけでよい。
今年は御徒町第1回で、飛び入り棋士は常連の窪田七段しかいなかった。昨年は森内俊之九段(専務)、中村太地王座(当時)が飛び入りして、中村王座などはプチ撮影会になったものだ。
来年以降もゲストの登場はないと思われるが、いなきゃいないで、場を盛り上げる方法はいくらでもある。将棋には、それだけの魅力があるのだ。
私は二次会も吝かでないが、いっしょに行く会員がいない。ここは味良く失礼することにした。
が、駅の改札を通る手前で、名札を返却していないことに気付いた。
慌てて戻ったが、さっきからあまりヒトが減ってない。誰かに聞くと、会場は10時まで使えるという。それならみんな帰らないわけだ。
黄信号氏が来て、私に渡したいものがあるという。
「大山名人の『将棋の攻め方』です」
「池田書店の? 快勝シリーズの第2弾ですね」
袋から出すと、表紙は大山名人の写真が載っているヤツだった。旧版だが、本の状態から見て昭和40年代後半の増刷で、450円と思われる。
「ああ、確かに450円ですね。すごい。これ、大沢さんに差し上げます」
「ええ!?」
「私が持っているより、大沢さんの許にあったほうがいい。いつもブログを読ませてもらっている御礼です」
「いやいやこれは貴重ですよ。なら買わせてください」
「売るくらいなら差し上げない。受け取ってください」
黄信号氏は、私が退室したのを知らないようだった。なら私がここに戻ってきたのは、神様のお導きだったか。「ブログを今後も続けてください」
「……」
持つべきものは棋友である。ありがたくいただいた。
今回就職が決まって、いいタイミングでブログを休止するつもりでいたのだが、これではもう少し続けざるを得なくなった。
騙し騙し、続けてみようか。
(おわり)
立食形式は移動が自由なので、私も多くの人と話ができる。
幹事のKan氏に、社団戦に誘われる。今年は6月30日が第1日だ。人間、ヒトから必要とされているうちが花だが、もう私は要らないんじゃ……とは思う。
佐藤紳哉七段が控室からカツラを持ってきた。それを私たちの前でかぶる。
「オオーッ……!!」
周りから歓声が沸いた。この歓声は何だと思うが、仮面ライダーの変身を間近で見た感動に近いものがあるかもしれない。
井道千尋女流二段、堀彩乃女流2級は誰かと話していて、まずまず。
窪田義行七段は静かにおつまみをつまんでいる。棋士を退屈させてはいけないが、私ごときに窪田七段の相手は務まらないので、私は黙ってドリンクを飲むのみである。
大盤では会員氏が新たな詰将棋を出題している。もちろん双玉なのだが、これは即興で創っているのか、作図を思い出しているのか……。
バトルロイヤル風間氏の似顔絵コーナーが始まった。これが隠れた名物で、女性は原則的に、全員描いてもらえる。私は自身の似顔を頼んだことはないが、バトル氏が勝手に描いてくれたことがある。ブスッと不機嫌な顔がそっくりで、やはりプロは違うと感心したものだ。
バトル氏は今回も華麗に描いてゆく。部分的な特徴を誇張気味に描いて、さすがによく似させるものだ。出来栄えを見せてもらうが、やはりポイントは目だ。これが全体の7割を占める気がする。
なお昨年は藤井聡太七段などの「おまけ似顔絵」が付いたが、今年はモデル単独のようだ。
そしてここまで、将棋会、軽食、棋士の色紙、懇親会、棋士との撮影、似顔絵……とこれだけついて4,000円とは、本当に安い。
御徒町将棋センター席主にして東京アマチュア将棋連盟理事長・今西修氏の挨拶があった。今西氏の厚意があったからこそ、私たちは関東交流会を継続できた。今西氏には感謝あるのみである。
やがて、男性の新会員も、バトル氏に似顔絵を描いてもらいはじめた。バトル氏はもちろん、手抜きなしである。
そのうちの一組は父子での参加だ。その男性氏が「大沢さんは強い!」と言うから何事かと思った。以前ペンクラブの将棋会で私と対局したことがあるそうで、たまたま私が勝ったらしい。「ほら私が石田流に組んで、大沢さんに粉砕されたやつ」
粉砕した覚えはないが、内容は思い出した。しかし数ヶ月前の将棋を持ち出すとは、男性氏もかなりの将棋バカだ。将棋ペンクラブは個性派の集まりと改めて思う。
会場の隅では、来場の女性だけで記念写真を撮っていた。恵子さん、ミス荒川放水路・MISAKOさん、デザイナーの小川敦子さん、幹事のAkuさんを除いても、純粋会員が6人くらいいた。これは大変な人数といってよい。
午後7時30分ごろ、中締めになった。湯川博士幹事の挨拶。
「今年から御徒町になって、あれほど告知したのに、千駄ヶ谷に行った人がいたみたいね。
やっぱり将棋会館で指したい人もいるだろうから、入場は50人を予想していました。でも最終的には70人まで行ったのかな、ありがたいことです。
じゃあ一丁締めで」
よーお、ポン!!
私は一本締めとの判別がつかず、2つめを叩く用意もしていた。一丁締めは1回叩くだけでよい。
今年は御徒町第1回で、飛び入り棋士は常連の窪田七段しかいなかった。昨年は森内俊之九段(専務)、中村太地王座(当時)が飛び入りして、中村王座などはプチ撮影会になったものだ。
来年以降もゲストの登場はないと思われるが、いなきゃいないで、場を盛り上げる方法はいくらでもある。将棋には、それだけの魅力があるのだ。
私は二次会も吝かでないが、いっしょに行く会員がいない。ここは味良く失礼することにした。
が、駅の改札を通る手前で、名札を返却していないことに気付いた。
慌てて戻ったが、さっきからあまりヒトが減ってない。誰かに聞くと、会場は10時まで使えるという。それならみんな帰らないわけだ。
黄信号氏が来て、私に渡したいものがあるという。
「大山名人の『将棋の攻め方』です」
「池田書店の? 快勝シリーズの第2弾ですね」
袋から出すと、表紙は大山名人の写真が載っているヤツだった。旧版だが、本の状態から見て昭和40年代後半の増刷で、450円と思われる。
「ああ、確かに450円ですね。すごい。これ、大沢さんに差し上げます」
「ええ!?」
「私が持っているより、大沢さんの許にあったほうがいい。いつもブログを読ませてもらっている御礼です」
「いやいやこれは貴重ですよ。なら買わせてください」
「売るくらいなら差し上げない。受け取ってください」
黄信号氏は、私が退室したのを知らないようだった。なら私がここに戻ってきたのは、神様のお導きだったか。「ブログを今後も続けてください」
「……」
持つべきものは棋友である。ありがたくいただいた。
今回就職が決まって、いいタイミングでブログを休止するつもりでいたのだが、これではもう少し続けざるを得なくなった。
騙し騙し、続けてみようか。
(おわり)