(25日のつづき)
先ほどまでペア将棋が行われていた同じステージに、羽生善治九段が立った。これから羽生九段との撮影会が始まるのだ。さっきから会場内を縦断するように長い列ができていたが、それはこの撮影会に参加する人たちだった。もちろん有料で、1枚1,000円である。
私は自分が写真に写るのが嫌いなので、たとえ無料でも女流棋士とのツーショット写真はほとんど撮ったことがないが、史上最強の棋士・羽生九段とツーショットを撮りたい将棋ファンの気持ちはよく分かる。
とはいえ今回のイベントは「女流棋士発足45周年記念パーティー」である。そこに羽生九段を担ぎ出す意味がどのくらいあるのかと思う。
たとえば5年前は、「ポラロイドカメラ女流棋士隊」(1枚1,000円)が、花売り娘のように会場内を営業していたものだ。今回は5年前以上にスター女流棋士が成長しているはずで、彼女らで十分副収入を得られたのではないか。
ただし「収益」という意味では、誰も羽生九段に敵わないが――。
羽生九段の右隣のステージには、西尾明七段と中澤沙耶女流初段が立った。一日限りのユニット「あきらfeatさや」によるミニライブで、あきらはエレキギター、さやはピアノである。今回は米津玄師(よねづ・けんし)の「orion」を弾く。
ライブが始まった。日本将棋連盟新役員・あきらのギターは有名だが、さやのピアノは初耳である。だがこれが、玄人はだしでうまい。ステージ前は、たちまち黒山の人だかりとなった。
私は上で、男性棋士が目立ってはいけない、と書いたが、これは別。あきらはさやの引き立て役、という図だからいいのだ。
もうちょっと聴きたい、というところでライブは終了。こういう小気味いい演出はよい。
羽生九段はツーショット写真で忙しい。テーブルの右手に羽生九段が座り、その対面にファンが座り、カメラに向かってハイ1枚、というわけだ。
この列はまったく短くならず、それが羽生九段の人気を表している。まさに「無冠の帝王」である。
14時04分、正面ステージでは「女流棋士検定」が始まった。予定より24分遅れている。その何分かは私がステージに立っていれば短縮できたはずが、例の名人戦の2問目で敗退していては、何をか言わんやだ。
検定の出題者兼コメンテーターは、渡辺明二冠と本田小百合女流三段。ここで渡辺二冠を投入してくるのだから、贅沢な起用だ。
解答者は飯野健二八段・飯野愛女流初段の父娘ペア、片上大輔七段・カロリーナ・ステチェンスカ女流1級の師弟ペア、斎田晴子女流五段・中村真梨花女流三段の佐伯昌優九段門下ペア、岩根忍女流三段・村田智穂女流二段の「お気楽コンビ」ペアである。
飯野女流初段は「私が勝手に選ぶ女流棋士ファンランキング」の第1位である。今日は朱色のきものが素敵で、いちだんと輝いている。
もう、飯野女流初段の身長があと5cm高かったら私はさらにのめり込んでいるのだが、もっとも飯野女流初段の背後にはつねにご尊父の影があり、それが私の暴走を制御させる。
このコーナーには私たちの参加はなく、ただ愉しむだけのようらしい。
注目の問題は、「山田久美女流四段の愛犬の名前は?」だった。4択だが、選択肢の中に「ジュリー」がある。確か山田女流四段は沢田研二の大ファンだったはずで、私はこれが正解と思うのだが、女流棋士らは別の答えを書いている。
飯野八段は「ジュリー」と解答し、「私の青春時代は沢田研二が大人気でしたからね」と話した。結局飯野八段は外したが、カンニングをせずおのが信念に殉じる姿勢は尊いものがあった。
また、「竹部さゆり女流四段が最も驚いた新戦法は?」という問題もあった。これは「藤井システム」や「ゴキゲン中飛車」など選択肢があったが、「驚いたことはない」もある。まさかこれはないだろうと思いきや、何と正解はこれだった。竹部女流四段らしい答えといえよう。
女流棋士検定が終わり、14時32分、「女流棋士メモリアル」の上映となる。定刻より27分の遅れである。
羽生九段のツーショット撮影は、渡辺二冠にバトンタッチである。羽生九段の後では、渡辺二冠もやりにくいのではないか。
女流棋士メモリアルは、発足当時のスナップから始まり、懐かしい女流棋士の顔が並ぶ。
しかし、女流棋士草創期から第1期?黄金時代に活躍した、蛸島彰子女流六段、山下カズ子女流五段、林葉直子さん、中井広恵女流六段の存在が黙殺されているのは哀しいことである。
現在活躍する女流棋士の若い頃の写真が流れ、今度は佐藤康光会長の祝辞になった。
コメントが終わると、私はつい拍手をしそうになってしまった。
つるの剛士も出演した。今回は地方ロケがあって参加できないとかで、現地からのビデオ出演である。5年前も、こんな形での出演でよかったと思う。
さらに豊島将之名人、佐藤天彦九段の出演と続く。私たちはしみじみと聞き入るのである。
上映が終わって、今度は西尾七段と武富礼衣女流初段のユニット「イビシャーズ」のライブである。武富女流初段は可憐なドレス姿で、このユニットもなかなかよい。今度はBUMP OF CHICKEN「アンサー」、RADWIMPS「前前前世」と2曲の演奏である。
これも期待に違わぬ出来だが、注目すべきは女流棋士のほうで、ピアノの手練れが2人もいるとは驚きである。女流棋士の才能は多彩だとあらためて思う。
会場を見渡すと、ドアの付近に山田朱未女流二段の姿があった。所在なさげで、昔の私だったら話しかけているところだが、ハゲ散らかした中年オヤジに近づかれても、山田女流二段は不愉快だろう。
そのうち彼女はどこかへ行ってしまった。
14時51分、定刻より11分遅れで、「お楽しみ抽選会」が始まった。これは入場の時にいただいたパンフレットの右下に3桁のナンバリングが捺してあり、これが抽選番号となる。先ほどの「次の一手名人戦」といい、このパンフレットは大車輪の活躍だ。
この司会進行は千葉涼子女流四段、香川愛生女流三段、山口恵梨子女流二段。早速抽選会が始まった。
(つづく)
先ほどまでペア将棋が行われていた同じステージに、羽生善治九段が立った。これから羽生九段との撮影会が始まるのだ。さっきから会場内を縦断するように長い列ができていたが、それはこの撮影会に参加する人たちだった。もちろん有料で、1枚1,000円である。
私は自分が写真に写るのが嫌いなので、たとえ無料でも女流棋士とのツーショット写真はほとんど撮ったことがないが、史上最強の棋士・羽生九段とツーショットを撮りたい将棋ファンの気持ちはよく分かる。
とはいえ今回のイベントは「女流棋士発足45周年記念パーティー」である。そこに羽生九段を担ぎ出す意味がどのくらいあるのかと思う。
たとえば5年前は、「ポラロイドカメラ女流棋士隊」(1枚1,000円)が、花売り娘のように会場内を営業していたものだ。今回は5年前以上にスター女流棋士が成長しているはずで、彼女らで十分副収入を得られたのではないか。
ただし「収益」という意味では、誰も羽生九段に敵わないが――。
羽生九段の右隣のステージには、西尾明七段と中澤沙耶女流初段が立った。一日限りのユニット「あきらfeatさや」によるミニライブで、あきらはエレキギター、さやはピアノである。今回は米津玄師(よねづ・けんし)の「orion」を弾く。
ライブが始まった。日本将棋連盟新役員・あきらのギターは有名だが、さやのピアノは初耳である。だがこれが、玄人はだしでうまい。ステージ前は、たちまち黒山の人だかりとなった。
私は上で、男性棋士が目立ってはいけない、と書いたが、これは別。あきらはさやの引き立て役、という図だからいいのだ。
もうちょっと聴きたい、というところでライブは終了。こういう小気味いい演出はよい。
羽生九段はツーショット写真で忙しい。テーブルの右手に羽生九段が座り、その対面にファンが座り、カメラに向かってハイ1枚、というわけだ。
この列はまったく短くならず、それが羽生九段の人気を表している。まさに「無冠の帝王」である。
14時04分、正面ステージでは「女流棋士検定」が始まった。予定より24分遅れている。その何分かは私がステージに立っていれば短縮できたはずが、例の名人戦の2問目で敗退していては、何をか言わんやだ。
検定の出題者兼コメンテーターは、渡辺明二冠と本田小百合女流三段。ここで渡辺二冠を投入してくるのだから、贅沢な起用だ。
解答者は飯野健二八段・飯野愛女流初段の父娘ペア、片上大輔七段・カロリーナ・ステチェンスカ女流1級の師弟ペア、斎田晴子女流五段・中村真梨花女流三段の佐伯昌優九段門下ペア、岩根忍女流三段・村田智穂女流二段の「お気楽コンビ」ペアである。
飯野女流初段は「私が勝手に選ぶ女流棋士ファンランキング」の第1位である。今日は朱色のきものが素敵で、いちだんと輝いている。
もう、飯野女流初段の身長があと5cm高かったら私はさらにのめり込んでいるのだが、もっとも飯野女流初段の背後にはつねにご尊父の影があり、それが私の暴走を制御させる。
このコーナーには私たちの参加はなく、ただ愉しむだけのようらしい。
注目の問題は、「山田久美女流四段の愛犬の名前は?」だった。4択だが、選択肢の中に「ジュリー」がある。確か山田女流四段は沢田研二の大ファンだったはずで、私はこれが正解と思うのだが、女流棋士らは別の答えを書いている。
飯野八段は「ジュリー」と解答し、「私の青春時代は沢田研二が大人気でしたからね」と話した。結局飯野八段は外したが、カンニングをせずおのが信念に殉じる姿勢は尊いものがあった。
また、「竹部さゆり女流四段が最も驚いた新戦法は?」という問題もあった。これは「藤井システム」や「ゴキゲン中飛車」など選択肢があったが、「驚いたことはない」もある。まさかこれはないだろうと思いきや、何と正解はこれだった。竹部女流四段らしい答えといえよう。
女流棋士検定が終わり、14時32分、「女流棋士メモリアル」の上映となる。定刻より27分の遅れである。
羽生九段のツーショット撮影は、渡辺二冠にバトンタッチである。羽生九段の後では、渡辺二冠もやりにくいのではないか。
女流棋士メモリアルは、発足当時のスナップから始まり、懐かしい女流棋士の顔が並ぶ。
しかし、女流棋士草創期から第1期?黄金時代に活躍した、蛸島彰子女流六段、山下カズ子女流五段、林葉直子さん、中井広恵女流六段の存在が黙殺されているのは哀しいことである。
現在活躍する女流棋士の若い頃の写真が流れ、今度は佐藤康光会長の祝辞になった。
コメントが終わると、私はつい拍手をしそうになってしまった。
つるの剛士も出演した。今回は地方ロケがあって参加できないとかで、現地からのビデオ出演である。5年前も、こんな形での出演でよかったと思う。
さらに豊島将之名人、佐藤天彦九段の出演と続く。私たちはしみじみと聞き入るのである。
上映が終わって、今度は西尾七段と武富礼衣女流初段のユニット「イビシャーズ」のライブである。武富女流初段は可憐なドレス姿で、このユニットもなかなかよい。今度はBUMP OF CHICKEN「アンサー」、RADWIMPS「前前前世」と2曲の演奏である。
これも期待に違わぬ出来だが、注目すべきは女流棋士のほうで、ピアノの手練れが2人もいるとは驚きである。女流棋士の才能は多彩だとあらためて思う。
会場を見渡すと、ドアの付近に山田朱未女流二段の姿があった。所在なさげで、昔の私だったら話しかけているところだが、ハゲ散らかした中年オヤジに近づかれても、山田女流二段は不愉快だろう。
そのうち彼女はどこかへ行ってしまった。
14時51分、定刻より11分遅れで、「お楽しみ抽選会」が始まった。これは入場の時にいただいたパンフレットの右下に3桁のナンバリングが捺してあり、これが抽選番号となる。先ほどの「次の一手名人戦」といい、このパンフレットは大車輪の活躍だ。
この司会進行は千葉涼子女流四段、香川愛生女流三段、山口恵梨子女流二段。早速抽選会が始まった。
(つづく)