第32期竜王戦第3局は9日、10日に行われた。ここまで豊島将之名人の2勝0敗で、広瀬章人竜王は実質的に後がなかった。
豊島名人の先手で、戦型は角換わり。最近はこればっかりだ。お互い右金を立ち飛車を引き、豊島名人は銀矢倉に組み替える。そうして47手目、▲4五歩と仕掛けた。
以下、私とは次元が違う指し手が続き、広瀬竜王は88手目、△4四桂と馬取りに打った(第1図)。
第1図以下の指し手。▲3四香△5六桂▲4三飛成△3三桂(第2図)
第1図では誰だって▲4六馬や▲4五馬と逃げるはずで、控室もそれで検討していた。
ところが豊島名人は▲3四香!! 大事な馬をくれてやるというのだ。
何というか、ここで馬を逃げない発想がすごい。プロは利かされを嫌うが、第1図で▲4六馬は利かされでも何でもない。とにかくレベルが違うのだ。
広瀬竜王は当然△5六桂。そこで豊島名人は▲4三飛成! なるほどこの形なら飛車を成れる。だが飛車を成るためだけに馬を捨てたのか!?
広瀬竜王は△3三桂と跳ねたがこれが冷静で、この取引は名人、さすがに無理だったのではあるまいか。
しかし名人ともあろう者がここまでの展開を読めないはずがない。私はこの後、豊島名人がみなの読みにない手を披露すると思った。
第2図以下の指し手。▲5三竜△5二歩▲6二竜△同飛▲同桂成△7六歩(第3図)
ところが豊島名人は、馬損してまで作った竜を、広瀬竜王の飛車と交換してしまった。いやこれなら、広瀬竜王も歓迎の手順だったのではないか。
▲6二同桂成に控室の予想は△2七角成で、私もそう指すと思ったが、広瀬竜王は△7六歩! 何と、ここで攻めに転じた。
第3図以下の指し手。▲7六同銀右△3六角▲7一飛△2二玉▲7三飛成△6九銀(第4図)
第3図で▲7六同銀直は△7七歩が厳しいらしく、豊島名人は▲同銀右。そこで広瀬竜王はふわっと△3六角と飛びだした。攻め勝とうの意で、△2七角成などというぬるい手は指さないのである。
豊島名人は▲7一飛から金を取ったが、広瀬玉を2二に逃し、一長一短である。
広瀬竜王は△6九銀。守りの金を剥がしにいく手で、私は前期竜王戦第3局の△6九銀を思い出した(参考図)。
スコアも形勢の流れも、この2局はよく似ている。とするならば本局、広瀬竜王が勝つと思った。
事実、以下も広瀬竜王がリードを広げたが128手目、金取りを躱しつつ△4五金と詰めろに出たのが、どうも悪かったらしい(第5図)。
第5図以下▲3四桂打△1二玉に▲1三歩が意外に厳しく、気が付いたら豊島名人の勝ちになっていた。ええっ? ええーっ!? という感じである。
19時35分、広瀬竜王投了。いやはや何とも、テレビ番組の見出しではないが、衝撃の結末になってしまった。
局後の談話によると、豊島名人の「▲3四香~▲4三飛成」は、いい攻め方ではなかったらしい。また、最後の寄せは、読み切ってはいなかった、とも。そうは言っても、いつもの見事な寄せだった。
いっぽうの広瀬竜王は第1局に続いての逆転負けで、その心中を察するに余りある。1勝2敗と0勝3敗じゃ大違いで、ここからの逆転は至難の業だ。
ちなみに過去の竜王戦七番勝負で3-0になったシリーズは11回あり、第4局の勝敗は、3勝側の6勝、0勝側の5勝になっている。なお0勝側には、2008年の第21期で、渡辺明竜王が羽生善治名人に4連勝して初代永世竜王になった星が含まれている。広瀬竜王は「一局でも長くシリーズが続くように」とのコメントだった。
「3連敗4連勝」は、最初に3連敗しなければ達成できない。そう広瀬竜王は気持ちを切り替えて、第4局以降を頑張るしかない。
豊島名人の先手で、戦型は角換わり。最近はこればっかりだ。お互い右金を立ち飛車を引き、豊島名人は銀矢倉に組み替える。そうして47手目、▲4五歩と仕掛けた。
以下、私とは次元が違う指し手が続き、広瀬竜王は88手目、△4四桂と馬取りに打った(第1図)。
第1図以下の指し手。▲3四香△5六桂▲4三飛成△3三桂(第2図)
第1図では誰だって▲4六馬や▲4五馬と逃げるはずで、控室もそれで検討していた。
ところが豊島名人は▲3四香!! 大事な馬をくれてやるというのだ。
何というか、ここで馬を逃げない発想がすごい。プロは利かされを嫌うが、第1図で▲4六馬は利かされでも何でもない。とにかくレベルが違うのだ。
広瀬竜王は当然△5六桂。そこで豊島名人は▲4三飛成! なるほどこの形なら飛車を成れる。だが飛車を成るためだけに馬を捨てたのか!?
広瀬竜王は△3三桂と跳ねたがこれが冷静で、この取引は名人、さすがに無理だったのではあるまいか。
しかし名人ともあろう者がここまでの展開を読めないはずがない。私はこの後、豊島名人がみなの読みにない手を披露すると思った。
第2図以下の指し手。▲5三竜△5二歩▲6二竜△同飛▲同桂成△7六歩(第3図)
ところが豊島名人は、馬損してまで作った竜を、広瀬竜王の飛車と交換してしまった。いやこれなら、広瀬竜王も歓迎の手順だったのではないか。
▲6二同桂成に控室の予想は△2七角成で、私もそう指すと思ったが、広瀬竜王は△7六歩! 何と、ここで攻めに転じた。
第3図以下の指し手。▲7六同銀右△3六角▲7一飛△2二玉▲7三飛成△6九銀(第4図)
第3図で▲7六同銀直は△7七歩が厳しいらしく、豊島名人は▲同銀右。そこで広瀬竜王はふわっと△3六角と飛びだした。攻め勝とうの意で、△2七角成などというぬるい手は指さないのである。
豊島名人は▲7一飛から金を取ったが、広瀬玉を2二に逃し、一長一短である。
広瀬竜王は△6九銀。守りの金を剥がしにいく手で、私は前期竜王戦第3局の△6九銀を思い出した(参考図)。
スコアも形勢の流れも、この2局はよく似ている。とするならば本局、広瀬竜王が勝つと思った。
事実、以下も広瀬竜王がリードを広げたが128手目、金取りを躱しつつ△4五金と詰めろに出たのが、どうも悪かったらしい(第5図)。
第5図以下▲3四桂打△1二玉に▲1三歩が意外に厳しく、気が付いたら豊島名人の勝ちになっていた。ええっ? ええーっ!? という感じである。
19時35分、広瀬竜王投了。いやはや何とも、テレビ番組の見出しではないが、衝撃の結末になってしまった。
局後の談話によると、豊島名人の「▲3四香~▲4三飛成」は、いい攻め方ではなかったらしい。また、最後の寄せは、読み切ってはいなかった、とも。そうは言っても、いつもの見事な寄せだった。
いっぽうの広瀬竜王は第1局に続いての逆転負けで、その心中を察するに余りある。1勝2敗と0勝3敗じゃ大違いで、ここからの逆転は至難の業だ。
ちなみに過去の竜王戦七番勝負で3-0になったシリーズは11回あり、第4局の勝敗は、3勝側の6勝、0勝側の5勝になっている。なお0勝側には、2008年の第21期で、渡辺明竜王が羽生善治名人に4連勝して初代永世竜王になった星が含まれている。広瀬竜王は「一局でも長くシリーズが続くように」とのコメントだった。
「3連敗4連勝」は、最初に3連敗しなければ達成できない。そう広瀬竜王は気持ちを切り替えて、第4局以降を頑張るしかない。