付け焼き刃の覚え書き

 本や映画についての感想とかゲームの覚え書きとかあれこれ。(無記名コメントはご遠慮ください)

「蠱猫~人工憑霊蠱猫01」 化野燐

2009-09-03 | 本屋・図書館・愛書家
 黒鬼コレクションとして届いた中の1冊。

 巨大な学園都市を構成する美袋学園では、常に幾つものプロジェクトが動いている。大きいものも小さいものも、重要なものもそうでないものも。図書館別館の土蔵に収納されている本草関係の蔵書整理や人類学研究室を中心とした鬼神データベース作りなどもその一環だ。
 だが、比較的オカルトや疑似科学を肯定的に扱う研究者の多い美袋学園では、妖怪を具現化する力を手に入れることで世界を根底から揺るがそうという有鬼派と、それを闇に葬ろうという無鬼派との攻防が密かに繰り広げられていたのだ……。

 1冊の妖怪図鑑をめぐり、2つの勢力が学園内で死闘を繰り広げる妖怪伝奇バイオレンスっぽい話。話としては、起承転結の承くらいまでで何の決着もついていないし、有鬼派は好き勝手に暴れ回り、対抗する主人公たちはまとまることのないまま翻弄されているだけです。
 面白かったけれど、すぐに続きが読みたくなるかというと、虚実入り混じった妖怪論、鬼神論が繰り広げられ、その図書館の様子を読むだけで満足というかお腹いっぱい。
 続きはまた落ちついてから探しましょう。

【蠱猫】【人工憑霊蠱猫01】【化野燐】【toi8】【京極夏彦】【鬼神】
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「煙突の上にハイヒール」 小川一水

2009-09-03 | その他SF(スコシフシギとかも)
 背負って使用する個人用ヘリコプターMewを衝動買いした女性の物語やメイドロボットが開発され普及していく世界の物語など「小説宝石」に掲載された5編の物語を収めた作品集です。
 「煙突の上にハイヒール」以下最初の4編が少しだけテクノロジーが今より発展した時代のボーイ・ミーツ・ガールとかガール・ミーツ・アレなどの物語なのですが、最後の作品「白鳥熱の朝に」だけはちょっと毛色が変わっています。最初はヤン・ウェンリーとユリアンなのか!?と思わないでもありませんでしたが、別種の、もっと重くてもっと身近な話でした。ちょうどインフルエンザの流行で高校野球の応援がどうのとか合唱コンクールがこんな形でとか報道されている時期でしたからなおさらそう思えたのでしょうか。確かにこれもテクノロジーの発展によるエピソードに違いありませんが、なにより客観的な報道を装ったマスコミのセンセーショナル優先の姿勢に怒りを覚えたのでした。
 少し先の未来の話ではあるけれどそんなに堅苦しいテクノロジーの話が出てくるわけでもない、SFよりは一般文芸にかなり寄っていった作品です。あいかわらず面白く、とりあえず周囲に薦めて回ります。

【煙突の上にハイヒール】【小川一水】【車載カメラ】【個人用ヘリコプター】【ロボット】【ウィルス】【不気味の谷】
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする