付け焼き刃の覚え書き

 本や映画についての感想とかゲームの覚え書きとかあれこれ。(無記名コメントはご遠慮ください)

「海底二万里」 ジュール・ヴェルヌ

2009-09-17 | 水の世界・海洋冒険SF
 学生時代は「あんたに薦められた本を読んでみたけれど、そんなに面白くなかったぞ」と良く言われたもんです。いや、どんな本にでも誉めるところ見るべき点はあるわけだし、つまらない点だけを大声でまくし立てても野暮ってもんでしょ?
 自分の好きな本が「良書」とか「名作」とは限らないし(逆も真なり)、「好きな本」と「人に勧めたい本」も同じとは限りません。書かれた時代や目的も考えないといけませんよね。
 個人的な記録としては★で評価するのも良いと思うのだけれど、ブログとして公開するのであれば、時代性とか歴史上の意義まで含めて「作品」として評価するのか、あくまで自分の「好み」として評価するのか、スタンスが定まらないのならやらない方が良いですね。

 さて、そこでジュール・ヴェルヌの『海底二万里』です。

 1866年。次々と海難事故を引き起こす「動く暗礁」を調査するため、パリ科学博物館のアロナックス教授らは太平洋に向かうが、その船もまた謎の怪物によって沈められてしまう。
 だが、漂流する教授らを救ったのは潜水艦<ノーチラス号>だった。怪物とは海中を走る船だったのだ!

 この作品も今のラノベ感覚で読むと、ちっとも面白くないと思います。キャラクター性は弱いし、期待に反してメカはあまり活躍しないし、海底の描写ばかり延々と続くし、しかもやたらと長い。じっくりと神秘と驚異の海底の旅を仮想体験するのが目的のような本だから当然。
 もう21世紀として科学知識はそれなりに普及しているので「未知の世界に触れる興奮」というのはかなり薄まっていますし、ラノベ的に「想像の余地がないわかりやすさ」を求めてもいけません。個人的には後日譚的な『神秘の島』の方が面白い気がします。

【海底二万里】【ジュール・ヴェルヌ】【ネモ船長】【ノーチラス】
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「ゾティーク幻妖怪異譚」 クラーク・アシュトン・スミス

2009-09-17 | ヒロイックファンタジー・ハイファンタジー
 遙かなる未来。魔術や降霊術が横行する地球最後の大陸ゾティークを舞台に繰り広げられる美と頽廃の終末世界の物語17篇。

 ラヴクラフトの盟友スミスによる幻想怪奇小説集。ゾティークものを全篇収録だそうです。短い作品ばかりなので、枕元において毎晩1編という読み方ができる本ですが、最近、夢見が悪いのはこの本のせいかもしれません。
 ただただ、町が滅び、人が死に、砂漠には白骨死体が埋もれ、海岸には腐乱死体が流れ着き、死者は甦生し、拷問人は考えつく限りの技を駆使し、鳥や獣や虫はひたすら人の身体を貪り、魑魅魍魎が跋扈するという話が続きます。本の内容紹介では「滑稽譚」と紹介されている『エウウォラン王の航海』にしても、ラストの1シーンだけ見れば滑稽かも知れませんが、そこに辿り着くまでが死屍累々。そりゃ、単なる「酷刑譚」ですってばよ。
 逆に言えば、これだけ同じ素材で同じトーンの話が続きながら、似たような話がほとんど無いというのはスゴイです。

【ゾティーク幻妖怪異譚】【クラーク・アシュトン・スミス】【大瀧啓裕】【東逸子】【降霊術師】【死体蘇生】【拷問】【銀死病】
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