付け焼き刃の覚え書き

 本や映画についての感想とかゲームの覚え書きとかあれこれ。(無記名コメントはご遠慮ください)

「魔法の材料ございます」 葵東

2009-09-08 | ヒロイックファンタジー・ハイファンタジー
「名声なんて、賞賛と引き換えに羨望と嫉妬、そして憎悪を向けられるだけだ」
 昼行灯の三代目シャルト=ドニートの想い。

 ドーク魔法材店の三代目は、商売の才能もなければやる気もない若者。店が潰れずに済んでいるのは仕入れと在庫管理を店番のサシャが一手に引き受けて切り盛りしているからなのだが、それも焼け石に水。
 今回も三代目のシャルトが予約済みのドラゴンの鱗を横流ししてしまったことから大騒ぎに……。

 正体不明の金持ち娘リア=メイと伝説の魔導師の孫シャルトの旅を中心に話が進みます。説話類型でいうところの「貴種流離譚」という物語の王道パターンを踏襲していますので、今ひとつこなれていない気がするところはありますが安心して愉しめます。これ、これお約束ですよね!?というワクワク感です。
 ただし、表紙にもなっているサシャはお留守番。物語的には要でも、ストーリー的には出番無しも同然。留守中の店番でも良いところが無くて残念。続きを出す気マンマンの構成なので、次の機会に期待しましょう。
 イラストもかなり良い感じですが、モノクロイラストでは網掛けとか点描とかこういうイラストでは普通に使うトーン処理もしておらず、柔らかな感じのカラーイラストに対してモノトーン画面がちょっと固くなっています。そのアンバランスが残念。最後の処理に一手間かけるだけでイメージががらりと変わると思うので、CGでカラーイラストを描く手間の何分の一かだけでもモノクロイラストにもかけて欲しいですね。

【魔法の材料ございます】【ドーク魔法材店三代目仕入れ苦労譚】【葵東】【蔓木鋼音】【税金】【スフィンクス】【伝説の虚構】【食物連鎖】
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「スヌーピーたちのアメリカ」 廣淵升彦

2009-09-08 | エッセー・人文・科学
「ライナスとルーシーがどうなるかが分からないうちはおちおち仕事にも出られません」
 ライナスとルーシーの一家が引っ越しするということななったとき、このままでは自分の家庭が崩壊するとシュルツに訴えてきた少女の手紙。

 約50年間、チャールズ・M・シュルツによって描き続けられてきた新聞マンガである『ピーナッツ』からアメリカの文化や国民性といったものを読み取ろうと著者は主張します。たかがマンガとバカにすることなかれ。逆に『源氏物語』など古典ばかり研究していて『サザエさん』も知らない欧米の日本研究者が、日本文化を語るとしたらどう思うのか? 確かに、朝日新聞なども『サザエさん』から当時の風俗や世相を読み取ろうという記事を連載しています。長く国民に支持され愛されてきたマンガは常にその時代の世相や国民性を映し出しているのです。
 NASAが宇宙船アポロ10号の司令船と着陸船に「チャーリー・ブラウン」と「スヌーピー」と命名したメッセージの意味は? 凧になって飛ばされたライナスの毛布はどうやって戻ってきたのか? ずれているようでいて実は本道から一歩もずれていないチャーリー・ブラウンが見る父親の姿は? どういう経緯でシュルツが『チャーリー・ブラウン なぜなんだい?』という絵本を描き、その序文をポール・ニューマンが書いたのか? 
 『スヌーピー』がアメリカ人に愛されてきたのは、ただ愛くるしいキャラクターが登場するというだけが理由ではないということをきちんと認識させてくれる本でした。

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「櫻の園」 吉田秋生

2009-09-08 | 学園小説(不思議や超科学なし)
「なんでもいいほうにものを考えることにしたの。
 みんながあたしを大事にしてくれないって思うの、やめたの。
 そんなら、あたしが自分を大事にすればいいんだって」

 気の持ち方を変えてみた杉山紀子。

【櫻の園】【吉田秋生】【演劇部】
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