付け焼き刃の覚え書き

 本や映画についての感想とかゲームの覚え書きとかあれこれ。(無記名コメントはご遠慮ください)

「玻璃の天」 北村薫

2009-09-30 | ミステリー・推理小説
 昭和8年の帝都東京を舞台に、花村家の令嬢・英子が、女性運転手の<ベッキーさん>と共に身の回りに起きる事件の謎を探るシリーズ第2巻。遙か昔の死亡広告をきっかけに犬猿の仲となった2つの家に生まれ育った若き男女の前に起きた絵画消失事件「幻の橋」、失踪した友人を捜して手紙の謎を解く「想夫恋」、扇動的右翼思想家が天窓から転落した事件の真相に気づいてしまう「玻璃の天」。それぞれが別の事件でありながら、すべてに共通しているのはやがて大きな戦争へと続くであろう時代の空気です。

「国家という単位、あるいはもう少し小さくとも、集団を作るということ自体が、すでに公正さからかけ離れる道なのかと思ってしまう」
 自由の国アメリカでさえハワイ王国を侵略してしまう。ましてや段倉荒雄のような思想家が大手を振ってまかり通る国ならば……。

 ベッキーさん自身は英子にほとんど何も語りません。あくまで花村家の使用人として英子の指示に従うだけですが、たまにひとことふたこと語る言葉が英子にインスピレーションを与えます。そう思って読み返すと、英子とベッキーさんの関係はホームズとワトソンというような関係ではなく、師弟関係に近いのかも知れません。どちらも師弟などとは思っていないでしょうが。
 
【玻璃の天】【北村薫】【ベッキーさん】【餓鬼草紙】【漢書】【早慶戦】【ジーン・ウェブスター】【ジグゾーパズル】【二銭銅貨】【コロッケ】【悪魔の美】
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「大宇宙の魔女」 C・L・ムーア

2009-09-30 | 宇宙・スペースオペラ
 熱線銃一丁を武器に太陽系の星々を渡り歩く無宿者のガンマン、ノースウェスト・スミスを主人公にした短編集の第1弾。これを訳し損なったと野田昌宏があとがきで悔しがっていました。あとがきの冒頭4頁を費やして、これがどんなに素晴らしい作品で、なぜ自分が訳せなかったのかと書き記しています。なんだかなー(笑)。
 毎回、怪しげな美女妖女にによって事件に巻き込まれ、いつも他人の助けか幸運によってかろうじて難を逃れるスミスは、とてもヒーローとはいえません。SF美女の代名詞ともなったシャンブロウ、ミンガの処女ヴォディール、名も無き異次元の乙女……。一応、勇気と残忍さと気力については評判高く、荒くれ者なんだけどなー。

「黒い粘液--光を喰う暗闇--万物がゆらめき--粘液--粘液とうねる海--かれはそこで生まれた。この地で文明が起こる前に--」

 あとがきで「シャンブロウ」へのHPLの賛辞が引用されているけれど、確かにSFとかファンタジーというよりコズミックホラーだよね。

【大宇宙の魔女】【ノースウェスト・スミス】【C・L・ムーア】【松本零士】【純粋美】【シャール】【異次元】【ラヴクラフト】
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