付け焼き刃の覚え書き

 本や映画についての感想とかゲームの覚え書きとかあれこれ。(無記名コメントはご遠慮ください)

「海底の魔術師」 江戸川乱歩

2009-09-26 | ミステリー・推理小説
 江戸川乱歩の小説も大人向けの猟奇作品なら表紙絵や挿絵が天野喜孝でも高橋葉介でもいいのだけれど、少年探偵シリーズといったら、まず柳瀬茂ですね。少年探偵の顔アップに奇怪な怪人が背景に立つという構図は少年探偵シリーズの定番。
 とはいえ、ポプラ社版の少年探偵シリーズも実は挿絵画家が途中で交代しているので、前半は柳瀬茂オンリイだけれど後半には武部本一郎や柳柊二など当時の一線級の挿絵画家が加わって、ちょっと目には気がつかないけれどなかなか豪華。この『海底の魔術師』も挿絵は柳瀬茂ではなく、吉田郁也でした。このオレンジシャツの好青年は小林少年かしら。ポプラ文庫クラシックにはがんばって続けて欲しいものです。

 海底の沈没船に鉄のうろこにワニの尾を持った人魚が出現。この奇怪な鉄の人魚の出没が日本各地で話題になっていた頃、ひょんなことから賢吉少年に託された鉄の小箱を狙い、この怪物がマンホールから地上にまではいあがってきた……。

 今回は明智探偵と少年探偵団による海洋冒険編です。とはいえ、クライマックスは少年探偵より屈強な裸の男たちが組んずほぐれつする肉弾戦となるわけですが、やはり映画向けですねえ。松竹あたりで活劇シリーズ化してくれれば良いのに……なんて思ってしまいます。そうすると、明智小五郎は渥美清で文代夫人は倍賞千恵子……ちがいます。

【海底の魔術師】【少年探偵】【江戸川乱歩】【おばけ蟹】【鉄の小箱】【潜水艇】【明智小五郎】
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「15×24~せめて明日まで、と彼女は言った」 新城カズマ

2009-09-26 | ミステリー・推理小説
「わたしは、わたしだ。
 運命がわたしを思考させる。わたしの思考が運命を選択していく。
 動かないわたしの脚が、活発で行動的なわたしをつくり、今のわたしを突き動かしている」

 自殺しようなんて考えるバカ者は、2回や3回轢いてやろうと西満里衣。

 大晦日の朝、インターネットの自殺志願者の掲示板で知り合った2人が、心中をするために落ち合おうと移動を開始する。だが、1人の少年の携帯電話がスラれたことから、遺言めいたメールが発信されてしまい、それはカーボンコピーされて瞬く間に広がっていく。
 それを受け取った者たちは、それぞれの立場で動いたり動かなかったり。本気で止めようと奔走したり、止める気がないまま騒ぎを煽り立てたり。15人の17歳たちが死に直面する24時間の物語。

 不十分な情報だけが拡散し、恣意的な嘘やサボタージュも加わって混沌としていくだけに見える情報を、交通整理し組織化していく者、ネットの奥深くに侵入してさらなる情報を掘り出す者、当たるを幸いなぎ倒していく者。ほぼ携帯電話とメールだけが情報源という混沌の中から秩序を構築し、矛盾を発見していく手法はまさに安楽椅子探偵型のミステリー。ただし本当にミステリーとなるか、青春小説になるのか、もしかしたらSFやパニック小説になるかはまだまだ予断を許しません。あの何も考えていないけれど勘だけは良いという三橋翔太あたりが台風の目になりそうですが、とにかく続きを期待して……って、もう出てるの? まさか同時発売? 本屋ではまだ商品出しの最中なところから買ってきたけれど、もしかしたらあの箱にlink2も入ってた……?
 
【15×24】【link1】【せめて明日まで、と彼女は言った】【新城カズマ】【箸井地図】【ネット心中】【17歳】【自警団】【自殺予告】
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