「この世の中で、いちばん大きな力は、人間の頭のはたらきだ。考える力だよ。人間の精神は、どんな物質をも支配する」
バン・ドゥーセン教授の言葉。
小学館がもう30年以上前に刊行していたワイドカラー版『少年少女世界の名作』ですが、今読んでも面白い作品ばかりですし、むしろ今読んだ方がそのラインナップのとんでもなさが分かって面白いというものです。
うちには全55巻そろっていましたが、あるとき「友だちの子供にあげるから」と母親によって里子に出されてそれっきりです。結局、古書店を訪ねて買い直していますが、最初にブックオフで見かけたときは1冊150円の投げ売りでしたが、10数冊しか集まらず、ネット販売やオークションでは500円からというのが相場なようです。どうしよう……?
表題作の『秘密の花園』はいわずもがなのバーネットの名作。ミルクが本当に美味しそうなんだよね。同じくマーク・トウェインの『王子とこじき』も説明不要。そして『ペリー日本遠征記』はベリー自身の記録ではなく、上田健次郎によるもの。『ワシントン』の伝記も、まあ、オーソドックスにまとめられています。
問題は残る収録2作品でしょうか。
エドガー・アラン・ポーの『モルグ街の殺人事件』は史上初の推理小説であり、当然世界最初の密室殺人テーマ作品であり、世界初の名探偵C・オーギュスト・デュパンの登場作品です。
柳柊二のイラストがインパクトあって最高ですが、現代的な視点で解釈すれば、「史上初のバカミステリ」ともいえます。
もう1本の『ねずみの穴』はジャック・フットレルによる思考機械(The Thinking Machine)もので、一般には『13号独房の問題』とか『完全脱獄』というタイトルで知られている作品。登場するオーガスタス・S・F・X・ヴァン・ドゥーゼン教授(本作ではバン・ドゥーゼン)は、
ホームズのライヴァルたちと呼ばれる探偵群の中でも筆頭格。ボストンの大学教授であるバン・ドゥーゼン教授は、友人のランサム博士らと賭をする。思考の力だけで1週間以内にセントルイスのチッザム刑務所から脱出できるというのだ。独房に持ち込むものは、歯磨き粉、10ドル紙幣2枚、5ドル紙幣1枚だけであった……というもの。
まったくこの全集というやつは、怪奇小説や幻想小説でも立派に「名作文学」と呼ばれる資格があるものは存在すると言い切ってますし、こうした古典ミステリについても科学的想像力を養うとして積極的に取り入れているのでした。
『王子とこじき』原作:マーク・トウェイン/絵:古賀亜十夫・中山正美
『ねずみの穴』原作:フットレル/絵:武笠信英
『秘密の花園』原作:バーネット/絵:伊勢田邦貴
『ワシントン』文:近藤健/絵:坂茂
『モルグ街の殺人事件』原作:ポー/絵:柳柊二
『ペリー日本遠征記』文:及川甚喜/絵:依光隆
【ワイドカラー版少年少女世界の名作】【アメリカ編4】