付け焼き刃の覚え書き

 本や映画についての感想とかゲームの覚え書きとかあれこれ。(無記名コメントはご遠慮ください)

「キング・コング」 田中芳樹

2010-01-08 | 怪獣小説・怪獣映画
「弱肉強食の論理がまかりとおり、貧富の差が開いて、不公平感がつもりつもると、犯罪やテロという形で敗者の復讐がはじまる。貧しい人たちをサポートするのは、ただ人道上の措置というだけでなくて、社会全体の平和と安定にとって必要なことなんだ」
 ジャック・ドリスコルの言葉。田中芳樹作品だけあって名言・警句はけっこうありますし、政治家やマスコミへのあてこすりもそれなりに。このあたりは好き嫌いが多いでしょうね。

 友人が「これ、置いていく」とハードカバーをポンっと置いていきました。特徴のあるチョコレート色のボックス……あ、「キング・コング」だと気づく。
 話のあらすじは誰でもたいてい知っているんじゃないかと思います。

 南海の孤島に上陸した探検隊が原住民に崇められている巨大サルを捕獲。アメリカまで連れて帰って「キングコング」として見せ物にするが、美女をさらって逃げ出して……
と、その先のオチまで書いてももはやネタバレにはならないだろう有名作品。それをピーター・ジャクソンの映画化に合わせて集英社がノベライズを企画。まだフィルムも完成していないどころかシナリオも決定稿が届かない状態で田中芳樹に好き放題脚色させたという異色作。映画が無視している髑髏島の植生や謎の航海記録の出所まで設定するなど田中芳樹の力の入れ方も片手間じゃあありません。
 前半4/5は秘境探検もの、後半1/5は怪獣パニックもの。そして田中芳樹との対談を兼ねたメイキングが同じくらい。田中芳樹のアレンジは、蘊蓄とか同時代ネタをばんばん加え、ヒロインは映画よりも目一杯「女」にしてみたりとノベライズの枠を超えて面白くなっています。

【キング・コング】【田中芳樹】【寺田克也】【1933】【ボーナス・アーミー事件】【地底世界】【チャーリー・チャン】【鄭和】
コメント
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