付け焼き刃の覚え書き

 本や映画についての感想とかゲームの覚え書きとかあれこれ。(無記名コメントはご遠慮ください)

「オペレーション・アーク2」 デイヴィッド・ウェーバー

2010-01-19 | ミリタリーSF・未来戦記
 本屋の妻から電話があって「セーフホールドセンシってやつの新刊が出てるけど買っとく?」と訊かれ、「買ってない。いらない」と返答をしたのに、実はしっかり買っているシリーズでした。いや、「××戦史」とか電話でいわれると、なんか大河ファンタジーみたいじゃないですか。今回は表紙もいまいちだし、初めてのシリーズなら手に取らないだろうけど、前巻がそれなりに面白かったから仕方がないじゃないか。

 停滞させられていた文明を活性化させようというマーリンの介入は順調に進むが、一方でマーリンによって技術革新していくチャリス王国を叩き潰したい教会勢力は諸国に呼びかけ戦争準備を進めていく。

 以上。
 マーリンの介入が静かに始まりました。目立たないように、少しずつ文明に介入していくのですが、このあたりパイパーの『異世界の帝王』やパーネルの『デイヴィッド王の宇宙船』を思い出してニヤリとします。中世レベルの世界にいきなりオーバーテクノロジーを導入しようとしてもうまく行くはずがないのです(失敗の典型はマーク・トゥエインの『アーサー王宮廷のヤンキー』です)。発想の転換で、今あるものに改良を加えて一気に水準を跳ね上げるにはアイデアだけで十分面白くなります。火薬の配合割合、大砲の砲耳、帆走船の帆の張り方あたりは基本です。
 確かに面白いし、文明介入モノが好きな人にはたまりませんが……それにしたって展開が遅すぎ。いや、確かに色々キャラの動きや各国の動向をしっかり描写してあって、それはそれで面白いけれど……話が全然進んでませんよ?

【オペレーション・アーク】【セーフホールド戦史】【デイヴィッド・ウェーバー】【ウスダヒロ】【義体】【植民惑星】【数字】【防諜】
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「聞かせてよ、ファインマンさん」 R・P・ファインマン

2010-01-19 | エッセー・人文・科学
「この世界に大事なものは実用だけじゃない」

 縛られることが嫌いで、権威が嫌いで、やりたいことを自由にやろうというファインマン。自分にとっての称賛は、自分の考えた数式や理論を他の学者が使ってくれることだけで十分であり、ノーベル物理学賞だって本当はいらなかったし学会なんか参加する意味がないと語るファインマン。
 1988年に亡くなったアメリカの物理学者リチャード・ファインマンは、その独特の言動で物理化学が苦手な人にもファンが多い不思議な人で、そのユーモラスな逸話集はロングセラーとして今も店頭に並んでいます。『聞かせてよ、ファインマンさん』は著者がファインマンになっているけれど、他の作品と同様、彼が講演やインタビューなど50年間に語った内容をまとめたもの。
 父親の与えてくれた科学的思考のための教育について、電子計算機やナノテクノロジーの未来について、本物の科学とエセ科学について、科学と宗教について、そして握りつぶされそうになった『スペースシャトル「チャレンジャー号」事故少数派調査報告』などなど。

 「経験から事実を学ぶ」ということがいかに難しいかファインマンは指摘し、科学の名を借りたエセ科学がいかに蔓延しているかを指摘します。それは単に詐欺目的のイカサマに限りません。
 「科学」というものは、実験か経験によって真偽を決するという原則と、原則に矛盾しない普遍的な知識の集大成だと定義します。そして、その定義においては、教育も社会学も刑法学もカーゴカルト同様の疑似科学に過ぎないと一蹴します。どんな条件で再現しても同じ結果が出るというなら、教育は常に正しく、犯罪者は減っているはずではないかというのです。
 その上で、科学がすべてとは断言しないし、非科学的な方法で正しい結論に到達するケースもあるかもしれないというあたりが心と知性の謙虚さというものかもしれません。

【聞かせてよ、ファインマンさん】【R.P.ファインマン】【知的専横】【マンハッタン計画】【教育】【宗教】
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