付け焼き刃の覚え書き

 本や映画についての感想とかゲームの覚え書きとかあれこれ。(無記名コメントはご遠慮ください)

「鬼がつくった国・日本」 小松和彦&内藤正敏

2010-01-27 | エッセー・人文・科学
 この本を誰にいつ薦められたかは定かじゃありません。手元にあるのは91年刊行の文庫だけれど、ハードカバーは85年だから88のときかもしれませんね。ちょうど夢枕獏や笠井潔が売れ始め、栗本薫が『魔界水滸伝』、西村寿行が『鬼』を発表していた頃の話です。とにかく「日本の伝奇について語るというのであれば、これは最初に抑えておけ」という薦められ方をしたのだと思います。

「いつの時代の権力者も、権力・権威を支えるために最先端の技術を欲しがるわけですよ」
 九鬼水軍もそうであったと小松和彦の言葉。

 「鬼」とは単に悪を象徴する伝説の妖怪ではありません。
 定住者である支配者に敗北した者、排斥された者であり、山に逃げた一部の宗教者であるというのが著者らの意見です。そして権力者たちにしてみれば、こうした反権力集団、非定住グループというのは滅ぼさなければならない集団であると同時に、その技術を利用しなければならない存在だったのです。
 八岐大蛇が製鉄技術者たちの暗喩だという説もあります。式神を紙で作るといっても、当時は紙そのものが貴重品でした。そこに定住者=農耕民+支配者と製鉄、製紙、製塩といった技術を有する非定住者との対立なり依存関係があるわけです。
 いちばん興味深かったのは、徳川家康は寛永寺や日光東照宮とセットで東海道五十三次を整備しましたが、53人の普賢菩薩の十大願を聞いて阿弥陀浄土に移りたいと願ったという善財童子の故事に習うことで、終点である京を阿弥陀浄土=この世ではない世界とし、それによって天皇と政治を呪的にも切り離したのだという説です。

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「オオカミさんとおかしな家の住人たち」 沖田雅

2010-01-27 | 学園小説(不思議や超科学なし)
「その人のキャラクターなんて、包装紙みたいなもので、なにをかぶってようが、中身は変わらない……」
 魔女先輩の言葉。

 今回はオオカミさんたちの下宿の住人を中心にした物語。親に捨てられたも同然で兄妹の絆が固くなりすぎてしまったグレーテルさんが魔女を追いかけ回す話とか、男性不信の白鳥さんと阿比留さんの話とか、テーマは重い話が多いけれど無理やりにでもハッピーエンドにしているので読後感は良いのです。亮士くんとオオカミさんの恋も匍匐前進しているようなので、よかった、よかった……。
 TVアニメ化も決定らしいけど、深夜枠だろうなあ。

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