付け焼き刃の覚え書き

 本や映画についての感想とかゲームの覚え書きとかあれこれ。(無記名コメントはご遠慮ください)

「高砂コンビニ奮闘記」 森雅裕

2010-01-22 | エッセー・人文・科学
「強盗来ないかなー」
 トラブル対処法は指導しないのに、客に愛想だけは振りまけという本部。本部はオーナーを見下し、オーナーはバイトを見下し、バイトは夜間シフトと昼間シフトで悪口を言い合い、質の悪い客とはケンカする。
 出版界を乾された乱歩賞作家が体験したコンビニバイトの13ヶ月の記録ですが、読んでいると心がどんどん荒んでいく気がします。自分もコンビニでバイトした経験はあるけれど、よくぞ同じ店で5年も続いたなと思います。今でも夢に見るくらい。
 この高砂コンビニは特に客筋も悪かったのかも知れませんが、こういうフランチャイズというのはコンビニに限らず、どこも「鵜匠が鵜を集めている」ようなものです。本部が損しないようにできているんです。ギャンブルだって、客になるより胴元になった方が儲かる理屈です。だいたいこういう契約書の基本は「オーナーは本部の指示を守る義務がある。本部はオーナーが損しないよう努力する」というラインですからね。
 私が務めていた店のオーナーは契約いっぱい営業した後、さっさと店じまいしてベテラン店員ごと別の店を開きましたね。もちろん契約書にはフランチャイズ解約後も類似業種への参入を禁じる一項があったはずだから、うまくかいくぐつたなとその新商売を見て思ったものです。
 さて、この本の後半1/4は、出版業界で干された経緯から、その後の人間模様まで。日本でも孤独死や餓死なんて話が報道されると、コメンテイターが「なぜ助けを求めなかったんでしょうか」などとしたり顔で言うけれど、著者の経験からは「みんな落ち目の人間とは関わり合いになりたくないだけ」だそうです。偉そうに講釈たれる金持ちに限って会話すら避け始めるし、「贅沢だ」「甘えるな」と意味のない言葉だけで追い込もうとする人ばかり。玉子かけごはんしか食べていないと告白して「贅沢だ」と言われたら、もう何も言えませんよね。
 ただ、これからコンビニに限らずフランチャイズ事業に手を出そうとしている人は、始める前に読んでおいた方が大事な貯金を失わずに済むかも知れません。それからもう1つ。さまざまな新商品の開発で、社長や役員が選考するところはよくテレビで放映されたりするけれど、従業員やバイトに訊いたことないねという話は面白かったですね。所詮は上から目線かと。

【高砂コンビニ奮闘記】【悪衣悪食を恥じず】【森雅裕】【不倫】【トイレ】【リストラ】【面接】【ハローワーク】【噂】
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「女王の復活」 ヘンリー・ライダー・ハガード

2010-01-22 | 冒険小説・旅行記・秘境探検
 『洞窟の女王』の続編である『女王の復活』ですが、わが家にも創元文庫版があるかと思っていたらロマン全集版しかありませんでした。こんなイラストで女王といわれたら、どこのメディチ家かと思ってしまいますね。イラストって大事だなあ。

 若返るはずの生命の焔をあび、逆に醜く老いさらばえた残骸と化してしまった洞窟の女王アッシャだったが、女王の恋人であったレオは生きかえると誓った女王のことばを信じ、彼の後見人である醜いホリーと共にアフリカの奥地から神秘の国チベットへと旅を続ける。
 その前に姿を現す謎の女性ヘスの正体は……。

【女王の復活】【ヘンリー・ライダー・ハガード】【輪廻転生】【精霊の力】【カルーン】
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