付け焼き刃の覚え書き

 本や映画についての感想とかゲームの覚え書きとかあれこれ。(無記名コメントはご遠慮ください)

「機巧少女は傷つかない(1)」 海冬レイジ

2010-01-17 | ヒロイックファンタジー・ハイファンタジー
「人は理由を得て学ぶ」
 機巧物理学担当のキンバリー教授の言葉。入試の成績はたいした問題ではないと。

 機械文明と魔術が融合し、魔術回路を内蔵する自動人形と人形使いの組み合わせによって魔法陣も呪文の詠唱も不要となった20世紀初頭。市民生活においても、戦場でも、自動人形と人形使いの姿は普通に見られる光景となっている。
 遙か東洋の島国からリヴァプール市にあるヴァルプルギス王立機巧学院に留学してきた赤羽雷真と夜々は、転入早々にトップランカーの1人である<君臨せし暴虐>シャルにケンカを売り、1対10の戦いも余裕で切り抜け、そして風紀委員会にスカウトされた。他の自動人形を破壊して回る謎の人形使い<魔術喰い>を捕まえるのに協力してくれれば、トップランカーの頂点を決める夜会への参加権を与えようというのだが……。

 イメージCDがいきなり発売されるという、編集部一押しの新シリーズ開幕です。確かに面白いですね。科学と魔法の融合した世界、魔法学園でのボーイ・ミーツ・ガール劇。西欧世界にやってきた日本人男子と大和撫子(の自動人形)が、ツンデレお嬢さまやら毒舌風紀委員に遭遇したりしつつ、謎の連続襲撃犯を追うけれど、目的はあくまで復讐……という、お約束を上手く取り込んでいる、ある意味王道の物語。主従1組のバトルというのも、ポケモン以来定番だけれど、これまたきっちり消化してます。
 まあ、あれこれいうけど、基本的に良くできたスチームパンクって好きなんですよ。これ、スチームパンクだよね?(10/01/17)

 何回か読み直して気づいたのは、スチームパンクの要件を満たし、かつ20世紀初頭のイギリスを舞台にしていながら、ぜんぜんそれっぽくないんですよね。別に現代でも、ちょい先の未来でも通用するのは「学校」という閉鎖空間の物語だから。
 作品そのものの面白さとは関係ないけれど、ちと残念。(10/01/20)

【機巧少女は傷つかない】【海冬レイジ】【るろお】【禁忌人形】【復讐】【傀儡師】【風林火山】【夜伽】
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「ソロモン王の洞窟」 ヘンリー・ライダー・ハガード

2010-01-17 | トレジャーハンター・宝探し
「真の勇者は、泣くのを喜ばない。やつを天国にいかせてやりたいのなら、涙のかわりに、勇気をほめてやるんだ」
 黒人の誇りを持ったズールーの戦士、ウンボパの言葉。

 19世紀末のイギリスは文学の可能性の宝庫ともいえるカオス状態だったといいます。そんな中で張りあっていたのが、『ジキル博士とハイド氏』や『宝島』で知られるロバート・ルイス・スティーヴンスンと秘境冒険小説の大家であるヘンリー・ライダー・ハガード。そして彼らを目標としていたのが本当は歴史小説で名を上げたかったコナン・ドイル。
 そのハガードの代表作が『ソロモン王の洞窟』。

 アフリカの奥地の「知られざる国」に今も眠るというソロモン王の秘宝を求め、アラン・クォーターメン、ヘンリー卿、グッド大佐の3人が灼熱の砂漠と氷の山々を踏破していく……。

 主人公アラン・クォーターメンは、インディ・ジョーンズが登場するまでは「冒険家」の代名詞でした。初めて読んだのは、小学館の『ワイドカラー版少年少女世界の名作文学8~イギリス編6』。今、手元にないから断言できないけれど、これも武部画伯の挿絵ではなかったかな。
 これを横田順弥がリライトしたのが「痛快世界の冒険文学(10)」となる『ソロモン王の洞窟』でした。基本は抑えつつも、愉しんで書いているなあと思いましたが、表紙の真ん中はヘンリー卿。クォーターメンは語り手ですか、そうですか。

【ソロモン王の洞窟】【H・R・ハガード】【横田順弥】【日蝕】【武士道と騎士道】【ソロモン街道】【ジュール・ベルヌ】
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