付け焼き刃の覚え書き

 本や映画についての感想とかゲームの覚え書きとかあれこれ。(無記名コメントはご遠慮ください)

「戦艦大和 海魔砲撃篇」 田中文雄

2010-01-02 | 怪獣小説・怪獣映画
 太平洋戦争末期の1945年4月、菊水作戦の発令に伴い沖縄に向けて発進した戦艦大和。しかし、それまでに大和に施された改装の多くはアメリカ海軍への対応を想定したものではなかった。搭載された電探も砲弾も、すべては天空より降下してくる“やつら”を想定したものだった。
 ヒトラーも知らないカナーリス提督よりの情報は、連合艦隊司令長官の申し送り事項となっていた。宇宙から飛来して、東シナ海に潜伏して日本支配を狙っている異星人の増援をこれ以上許すことはできなかったのだ……。

 作者自ら仮想戦記ではなく妄想戦記と言い切ったのは、クトゥルーっぽいというか人間が食べても食べられても同化してしまうというB級テイスト満載の異星人と戦う日本軍の話です。山本長官や古賀大将の死も、栗田艦隊の反転も、すべて“やつら”との戦いの中で起こったことであり、異星人とアメリカという強大な敵を相手に両面作戦を繰り広げる連合艦隊司令部の苦悩……みたいな話ですが、書き込めばもっと盛り上がりそうなところをさらっと流してしまい、最後は夢か現かわからない状態での沖縄決戦というあたりがもったいない気もします。
 変色した1通の書簡から始まり、二段構えのオチに終わるという構成が、既にホラー映画や幻想奇譚のフォーマットみたいなものなので、当然の帰結ではありますけれども。 

【戦艦大和 海魔砲撃篇】【田中文雄】【Uボート】【ツングース】【ガダルカナル島】【カナリス提督】【ミッドウェー作戦】
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「僕は友達が少ない(2)」 平坂読

2010-01-02 | 学園小説(不思議や超科学なし)
「神自体が捏造の産物なのだから、私が神の言葉を捏造してもいいだろう。むしろ私が神でもいい」
 ミッションスクールの生徒にあるまじき三日月夜空の言葉。

 友達のいない少年少女が友達を作ろうと「隣人部」を作って奔走するけれど、基本的に痛い人ばかりなので、誰にも友達ができないまま残念な部員ばかりが増えていくお話の第2弾。

 美少女だけれど残念な夜空や星奈、美少女メイドの幸村、そして見た目ヤンキーの小鷹の隣人部に、残念な幼女シスターや残念な天才少女やらが加わり、それに小鷹の妹でとっても残念な小鳩も乱入して、実りはないけれどにぎやかな日々が続きます。ここでいう“残念”というのは、「美少女だけど性格悪すぎて残念!」とか「美少女だけど腐女子バリバリで残念!」あるいは「美少女だけど男なので残念!」という諸々をひとくちで表す言葉です。
 けれども、このサークルこそ、小鷹が「正しくなくても、当たり前でないもののために優しい救いがあってもいいじゃないか」と思うところの救いの場なのですね。隣人部という場所は。残念な人たちのための箱船なのです。まったく良い感じに残念な人たちばかり集まりました。

 ところで、作品内で言及されている「縦川闇鈍の『三国志』」ですが、なぜ素直に「横山光輝の『三国志』」と書けないのでしょうか。中身を引用しているわけじゃないんですが、こういうときにアニメとか映画とか、元のタイトルや作者名をそのまま出す作家、出版社と、仮名にしてしまうところと、その判断基準が気になります。余分な些末事には違いありませんけれど、最近はけっこう実名を出すところが増えているのでちょっと気になりました。

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