付け焼き刃の覚え書き

 本や映画についての感想とかゲームの覚え書きとかあれこれ。(無記名コメントはご遠慮ください)

「テレビ番外地~東京12チャンネルの奇跡」 石光勝

2010-01-15 | 伝記・ノンフィクション
「視聴率をとれ。だが、くだらん番組は作るな」
 東京12チャンネルの社長となる中川順の言葉。
 制作サイドとしては、せめてどっちかにしてくれと泣いたらしい。

 予算もなく、人もなく、視聴率は取れず、番組を放映できない時間帯さえあった東京12チャンネル(現・テレビ東京)の創設期から編制や制作に関わってきた著者が回顧する、小さなテレビ局の奮闘記。こういう黎明期のごちゃごちゃした雰囲気の話は好きなのです。きれいごとでは生きていけない、なりふり構わない世界です。
 新興の何もない局だけに、タモリをコメンテイターにして『モンティ・パイソン』を放送しちゃうし、映画でヒットした永井豪原作の『ハレンチ学園』をテレビ化できちゃう。大河ドラマだってエイヤッと12時間連続で放送するという暴挙も企画が通ってしまって、しっかり視聴率を稼いだりする。大きな局だと保守的でなくても怖くてできないことも、なんだかんだと意見をぶつけ合ったあげく通ってしまうのが面白いところ。
 ただ、金もないし視聴率も取れないので、人気が出たタレントは他局へ移っていってしまうし、番組だってヒットすれば幾らでも真似される。きちんと報道できなかったこともあるし、失敗だって少なくない。そんなあれこれを語っている本です。
 いちばん面白かったのは、永遠に交わりそうにない平行線のイスラエルとアラブに絡む外交レベルのクレームを、日本的な「まあまあ」「そこはおいといて」の精神で乗り切ろうとしたくだりでしょうか。それから、松本清張と視聴率調査の話。

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「十三番目のアリス」 伏見つかさ

2010-01-15 | 超能力・超人・サイボーグ
「私は三番目よ。貴女が眠らせている力を暴き出してあげるために来たの」
 それは平穏な日々の終りを告げる言葉。

 新古書店の店頭で見かけ、「ふうん。伏見つかさのデビュー作なんだ」と思って買おうかどうか迷い、結局また今度と諦めて帰ったら、自宅の書庫の奥に既刊がそろってましたよ。これはいつ誰から譲り受けたのだろう……?

 傲岸不遜で知られる九条院アリスには鬼百合三月という許嫁がいる。なよなよしていて女のようではあるけれど、アリスは三月のことを気に入っている。本人には言わないけれど。
 アリスが三月に告げていないことはまだ他にもある。
 実はアリスは一度死にかけたときに、母親のラミアによってロストテクノロジー・スフィアの移植手術を受けていたのだ……。

 将来の戦略を考えて子供同士を許嫁にするような裕福な家庭が、どちらも子供に自分のことは自分で片づけるよう育てているってあたりが面白いですね。放置されているというより、本格的な貴族教育のような気がします。特にアリスの方は前後の事情から考えると、母親が放置しているというより生き残り戦略というのは確実です。
 シリーズ開始としてのつかみは上々ですが、さてどうなっていくのか愉しみに追っていきたいと思います。

【十三番目のアリス】【伏見つかさ】【シコルスキー】【ゴシックロリータ】【冷嬢の心得】【ジャバウォック】【LTスフィア】
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