付け焼き刃の覚え書き

 本や映画についての感想とかゲームの覚え書きとかあれこれ。(無記名コメントはご遠慮ください)

「KGBの世界都市ガイド」 訳:小川政邦

2010-01-26 | 冒険小説・旅行記・秘境探検
「止まれ! ばか者、止まれ! 敵に信号を送っていると思われるぞ!」
 海辺で走り出した妻に向かって叫んだイギリスの作家D・H・ロレンスの悲鳴。コーンウォールに移り住んだロレンスだが、ドイツ人女性と結婚したこと、彼が作家であるということから、夫婦は常に周辺住人すべてから監視され、洗濯物を干すことさえままならなかった。

 KGBといえばソ連の国家保安委員会であり、冷戦時代には共産陣営のスパイ網の中核としてさまざまな工作活動をおこなってきた巨大な権力機構です。かつてはスパイ映画や小説における敵の親玉の代名詞でもありました。
 それがソビエト社会主義共和国連邦が解体され、KGBも改組され、核戦争で人類絶滅もありうるといわれていた東西冷戦も今は昔。戦争の危険性としては東西対立で構図がはっきりしていた当時より混沌としてしまった今の方が危ないともいわれていますが、それはともかくとしてKGBのエージェントがどのように採用され、世界各国に派遣されてはどのような活動をしていたかとか、彼らから見た世界の主要国の姿はどうなのかとか、気軽に読める時代が来てしまいました。
 60年代に日本に赴任した新米エージェントの回顧やらリオのシュラスカリアで24種類の肉を堪能した話、ボリショイのバレリーナを連れてティファニーを訪れたときのことなど、11人の退役した諜報部員たちが語るKGBとしての日々。

【KGBの世界都市ガイド】【小川政邦】【ユーリイ・センケヴィチ】【娼婦】【愛国者】【イギリス人】【ランデヴー】【切手収集家】【ジャーナリスト】【動物園】【情報提供者】
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「少年テングサのしょっぱい呪文」 牧野修

2010-01-26 | 日常の不思議・エブリデイ・マジック
 可愛く巧いイラストに乗せられ手に取り、いかにもおバカっぽい学園ストーリーのような帯に騙され購入し、途中まで読んで思ったのは「この作者の牧野修って『黎明コンビニ血祭り実話SP』の牧野修? 『三人のゴーストハンター』の牧野修!?」という絶望感。だから、ホラーミステリーとか、人間のどす黒い部分をひねくりだしてこね回す話って基本的に苦手なんだってば……。

 学校をさぼって喫茶店『不眠症』でバカ話に興じている高校生三人組の前に姿を現したのは、幽霊では無かろうかという怪しげな中年女性。彼女は三人組のリーダー格にして熱血漢のテングサに向かって「人を殺してほしい」と依頼してきた……。

 邪神というものが存在している世界。実在が判明して右往左往したあげく人類は、その邪神を憑依させた人間に法人格を与えて認知することにしてしまった。これまでの宗教法人よりはちょいと確率の高い神頼みである。邪神は気まぐれで邪悪なのが本質だからあまり頼りにしてはいけないけれど、無視してしまうには強大な力を持ちすぎている。だから呪殺だなんだというお願いに対しては、厳密に書類審査を審議会で行った上で許可するようにしているし、許可を得てお願いしたところで本当に願いが叶うかわからない。
 そんな世界で、邪神を宿らせてしまったテングサと仲間たちが大好きな先輩を守ってドタバタじたばたする話です。
 面白いけれど、けっこうグロいし、救いがないところには救いはないし、人死にが出てしまえば何もなかったことにはできないわけで、すっきりさわやかな話ではありません。表紙に騙された……。

【少年テングサのしょっぱい呪文】【牧野修】【すめらぎ琥珀】【バカ三人組】【コスプレ姐さん】【美少女殺し屋】【時間】【邪神】
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする