かねやんの亜細亜探訪

さすらうサラリーマンが、亜細亜のこと、ロックのこと、その他いろいろ書いてみたいと思ってますが、どうなることやら。

ザ・コールデスト・ウインター

2010年08月12日 | Books



翻訳本が続くが、本書の凄さは、格別かもしれない。
著者のハルバースタムさんは、本書を書きあげた直後、交通事故で亡くなられた。2007年のことだ。
シカゴ駐在時代に読んだ、日米自動車戦争を描いた”覇者の驕り”も、彼の作品と知った。
徹底的に調べ上げて、書く。本書も10年がかりで著わしたそうだ。

朝鮮戦争は、日本にとっては、戦後の復興の機動力になった。しかし、本書を読むと、アメリカにとっては、ベトナム戦争並の泥沼戦争であったことがわかる。
特に、38度線を奪回してからが滅茶苦茶だ。
最初から、相手をなめてかかって、都合の悪い情報には、目をつぶる。特に中国の参戦は、完全に読み違えだ。
でもそれは、アメリカだけではなく、ソ連にとっても、中国にとっても誤算続きだった。

あの仁川上陸作戦(今は国際空港があるところだが)でさえ、一か八かの勝負だったいう。
それから先は、ほとんど無茶苦茶。情報も、補給線もあったものではない。最も奇怪なのは、マッカーサーがほとんど前線に行かず、日本で、優雅にどっしり構え、本国にも間違った情報を送り続け、恫喝もし、結局更迭された。

ちょっと長くなるが、本書のまとめの部分を。

すべての戦争はなんらかの意味で誤算の産物かもしれない。だが朝鮮では戦争当事者双方の重要な決定のほとんどが誤算に基づいていた。まずアメリカが防衛範囲から朝鮮半島を外し、これがさまざまな共産側当事者の行動を誘発した。ついでソ連が金日成の南への侵攻に青信号を出した。アメリカの参戦はないと確信したのである。アメリカは参戦した。そのときアメリカは、立ち向かう相手の北朝鮮軍の能力をひどく過小評価する一方、初めて戦闘に赴くアメリカ軍部隊の準備態勢を法外なまでに過大評価していた。アメリカ軍は後に、中国の度重なる警告に注意を払わず、三十八度線の北に進撃する決定を下した。
それからこの戦闘における単一では最大のアメリカの誤算があった。マッカーサーが中国軍は参戦しないと確信したがゆえに、はるか鴨緑江まで進撃することに決め、自らの部隊をこのうえなく無防備にな状態にさらしたのである。そして最後は毛沢東だった。かれは兵士の政治的純粋さと革命精神がアメリカ軍の兵器の優位(そしてその腐敗した資本主義精神)よりもずっと重要であると信じ、そのために朝鮮最北部での緒戦の大勝利の後、舞台をあまりにも南下させすぎ、その過程で恐るべき損害を出した。

マッカーサーは、朝鮮半島で、原子爆弾さえ使う可能性があったという。

戦争は、狂気というが、論理づくでは戦争はできないから(朝鮮戦争や、ベトナム戦争や、イラク戦争や、アフガン戦争や、すべての戦争がそれを証明している)、結果的に狂気になってしまうということかもしれない。ということは、正義のための戦争は、ありえないということになる。

コメント
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