本書は、ちょっとというか、かなり難しかった。著者の早島さんは、中村元博士の弟子だそうだが、講談社学術文庫というだけあって、超学術的。
最初の思想の概要や、生涯についての章までは、普通だったが、教説のところからが超難しい。
例えば、仏教の教えでよく出て来る”苦”の説明は、こうなる。
「苦」とは身体の苦である。苦は身体の逼悩を特相とし、智慧のない者たちに憂を起こさせるのを作用とし、身体の病気を現状とする。さらに苦は、苦苦であり、かつこころの苦をもたらすから、苦である。
何か難しいではないか。
著者は、仏教の難しさの理由を、仏教的人生観の欠如と、仏智に照らされている自己という見方の欠如であるとおっしゃるが、それ以前に、哲学的な説明を、現実に即した形でかみくだいていただかないと、庶民には、ちょっと。
ジャータカの話の部分は、始めて聞く物語も多く面白い。また、ブッダ入滅後の仏教についての概説もためになる。
仏教に関する骨格の全てが、この一冊の文庫本に、圧縮されており、学生みたいに、じっくり、何度も読みたいと思う人向けの本。大学の授業の教材として考えるべき本。
一回読んだだけでは、絶対わからない(と思う)。