本書は、maniac な、specificなテーマの本だ。私も、カピラ城(跡と言われている遺跡)に行ってなかったら、絶対買わなかっただろう。
読んだら、やはりその通り。ということで、ブッダが育った、釈迦族のお城だったと言われるカピラ城はどこかというテーマに興味を持った人だけにお勧めできる、Specialな本といえる。
前に触れたように、カピラ城跡と呼ばれるところは、2ヵ所候補があるが、本書は、その内、ネパール側のティラウラコットの発掘についての本だ。
カピラ城については、法顕や、玄奘が訪れた記録があるが、場所が全くわからず、19世紀後半に、欧米の研究者が、様々な説(この2ヵ所以外にも候補地あり)を出した。著者である、立正大学仏跡調査団は、ティラウラコットこそが、カピラ城であると考え、1960年代より、8回も発掘調査を行った。たいへんな苦難の発掘だった様子がわかる。
その発掘記録が本書にまとめられているのだが、残念ながら決定的な証拠は発見できていない。状況証拠だけだ。
一方、インド側の候補地であるピプラワーでは、仏舎利容器が発掘され、一時は、決定的証拠となりかけたが、今は、必ずしも決定的証拠とは言えないという見解が主流だ。
私の印象でも、ティラウラコットの方が、カピラ城にふさわしい規模の遺跡に見えた。
ティラウラコットで見た発掘も、本発掘の延長線上のものであったのだろうか。結構荒っぽいように見えたが。
ティラウラコット遺跡のはずれで見た仏塔跡は、本発掘調査で、発見されたものだということも本書を読んで知った。
そういった意味で、どちらの遺跡の発掘も、まだ始まったばかりと言えるが、訪れた感じでは、これ以上発掘しても、なかなか成果があがりそうもないという諦め感もあるように思った。
邪馬台国論争ほど大きな盛り上がりは見せていないが、このカピラ城跡論争も、決定的な証拠が見つかるまで、終わりそうもないし、決定的証拠を見つけるのも、ほとんど難しそう?
ルンビニーの、アショカ王の石柱みたいなものが見つかったら凄い。