本書はまだ出たばかり。
タイトルに偽りありという感じもするが、面白かった。
タイトルは、”ローマ帝国の東方交易とその興亡”がふさわしい?
著者は、古代ローマ史が専門で、本書は、古代ローマの、オリエントやインドとの交易の実態、それが及ぼす、ローマ帝国の政治・経済への影響という視点で、当時の姿をよみがえらせている。
いろいろ興味深い資料が、発見解読されているそうで、ローマ帝国の東方との交易が、その政治、経済を支える上で、重要であったことが分かってきたという。
ローマで産出されない香辛料や、絹などを、産出されるもの(わかりやすい例でいえば金貨)と交換し、ローマ帝国(関税)、ローマ商人とも、多大な利益を上げていたという。
インドで、ローマ時代の金貨がたくさん発見されるのは、そのためだ。
ところが、東方の政情が不安定になり、交易が難しくなると、ローマ帝国では低い身分であった、商人達は、交易をやめてしまい、経済が衰退、その結果、ローマ帝国の軍事費増大、財政悪化を招き、東西分裂、西ローマ帝国は、早くに滅亡した。
シルクロードというと、陸の道、中国でいえば、唐時代を連想してしまうのだが、本書は、主に、海のシルクロード、そして、ローマ帝国、漢時代をテーマにしており、タイトルからいうと肩透かしに感じる。
漢も、ローマ帝国と同じタイミングで、衰退し、結果シルクロードを利用した交易も一旦途絶えてしまう。
その後のシルクロードは、我々がよく知るシルクロードになるのだが、実際、経済的には、海のシルクロードの重要性が高く、その本格的な復活は、東インド会社の時代まで、待たななければならなかった。
交易には、安定した取引当事者と、安全が一定レベルで確保されたルートが必要であることを、本書は教えてくれる。
それにしても、ローマ帝国の歴史に久しぶりに触れた気がする。
塩野七生さんのシリーズを読んでいたことが懐かしい。
リアリティあふれる筆致に、どきどきしながら読んでいたものだ。