CLASS3103 三十三組

しがない個人ホームページ管理人の日記です。

【読書】死にゆく者の祈り

2019-11-11 21:16:57 | 読書感想文とか読み物レビウー
死にゆく者の祈り  作:中山 七里

教誨師を主人公にした、冤罪かもしれない事件の
お話でありました
以前に、教誨師そのものの本を読んだこともあって、
このテーマは面白いなと思いつつ読んだのだけども
お坊さんという立場で、事件を解決していくというのが
思いのほか面白くてよかった
説得手段が、説法というあたりが斬新だと感じたけども、
まぁ、そればっかりクローズアップされたわけでなく、
作中でも揶揄されたとおり、
坊主が探偵のまねごとをしているというそれなんだが
なかなか楽しかったのでありました

自分が教誨する相手が死刑囚なのはわかっていたけども、
そこに、命の恩人とも呼ぶべき同級生がいた

このあたりが残酷な物語なのでありますけども、
死刑と確定したそれに不審をもち、
その真相をと踏み込んでいく様が、
坊主や、教誨という目的からは逸脱し、
それは破戒ですらあるというのが、
非常に重たく響いてよかったのでありました
主人公本人にも、仏門に入りたいと願うだけの何かがあって
そことの乖離というか、未だ俗世から離れていない
その辛さみたいなのが、実にいい塩梅で伝わってきて
非常によかったのでありました

オチはちょっと、やりすぎというか、出来すぎというか、
ドラマチックすぎるんじゃないかと思ってしまったんだけども、
それはおいといて、説法なんかから滲み出てくる
世の中普遍の何かが面白くて
悪い奴といいきれない、でも、そうなってしまった、
その原因がなんなのか、そこに対しての犠牲という懺悔は
必要かどうかとか、
いや、なかなか考えさせられて面白かったのでありました

ある種、独りよがりを正すといってもよかったような
その絶妙な触れ幅が妙味でありました
楽しく読めてよかった一冊であります