CLASS3103 三十三組

しがない個人ホームページ管理人の日記です。

【読書】ハリガネムシ

2021-06-15 20:54:38 | 読書感想文とか読み物レビウー
ハリガネムシ  作:吉村萬壱

芥川賞受賞作品であります
タイトルについて、なるほどと思わされる内容だったが、
いかにも芥川賞といった感じの、うらぶれたといえばいいか、
エログロナンセンス的な話が、ずりずり、はいずりまわる感じで展開する
読んでいて、決して気持ちのよいものではないけど、
なぜか読みやすく、描写がありあり、実像を結ぶように浮かんでくるので
なんというか、大変な小説だと思ったのでありました

倫理の教師が、なんかわからんうちに、怪しいデリヘル嬢と
情を取り交わすようになりはじめ、
そのまま、自分の中に眠っていた衝動や、欲望のままにふるまい始めると
まぁ、そのあたりが、いかにも、ハリガネムシに取りつかれたカマキリのようだと
そういうお話だったわけだけども、
この衝動というものと、それに取り込まれていく虚無感のような、
ずるい諦観みたいなのが見て取れて、非常に面白かった
今の年齢だからわかるのかもしれないが、
こういうこと、あるのかもなぁという、妙な連帯、共感を覚える内容でありました
願わくば自分には、このようなハリガネムシがつかぬように

物語としては、もう一匹、いや、一人、ハリガネムシにとりつかれているのかもしれない
そういう少女が、少しだけ出てくるのも興味深い
彼女については、重要なようなそうでもないような、
不可思議な存在だったんだけども、これがまた、芥川賞っぽいなと思わされたのでありました
脇役の影が濃い、この濃さがすごいと思ったのである