CLASS3103 三十三組

しがない個人ホームページ管理人の日記です。

【読書】男のリズム

2023-07-12 20:58:47 | 読書感想文とか読み物レビウー
男のリズム  著:池波正太郎

池波先生のエッセー集
先生が50歳くらいの頃に書いたものを集めた内容のようだが、
いくつか、話がかぶっているのもあったのだけども、
自分の来し方を語った内容で共通していて
タイトルほど、男はこうありなん、みたいな大上段ではなく、
先生がどう思って平生過ごしているかというお話で、
また、食道楽に通ずる話もいくつか転がったりしていて、
自由に、思うまま書いたといった感じで、楽しく読めたのでありました

池波先生と、拝んでしまっているけども
実際どんな小説家なのか、よくわかってないまま読んでいたので、
もともとは、劇作家の方だったというのが結構衝撃的で
以前に読んだ本では、幼い頃から、結構道楽をきわめていたというか、
いい感じで、平蔵みたいな過ごし方をしていた人だなと思っていたんだが
本作だと、それより前、いや、むしろ後なのか、
戦中から戦後の大変なときというのをどう過ごしたか、
別にそこで何があったということは語らないが、
そこを過ごしたことによって、人間の輪郭、外枠のようなものができたという感じで、
自分がどう作られているか、そして、これからどうしていくかということを
しみじみ書いているのがよかったと思うのである

またタイムリーというのもおかしな話だけども、
先日読んだ「剣客商売 新妻」に出てきた大治郎のセリフが
さらり、〆句に使われている一遍があったりして
思わずにやりとしてしまったのでありました
京都江戸の間を歩くことはあるまいが、なるほど、移動というものを体感して、
そして想像するのがまたよいのだなぁ

戦争を体験したことで、出征前に一通りの遊びはやってしまって、
いざ死んでも悔いのないようにと過ごした数年があったおかげか、
その後である、これを書いている時に、どうしていこうかの骨格となっている
いつ死ぬかということを念頭に、今はどうすべきか、
何が必要で、どれをやめておくか、
そんなことを能動的に選んですごしているというのが、リズムであり、男の生き方だなと
読み手が勝手になるほどと納得してしまうのであった

とはいえ、昭和の男だなというところもだいぶんにあって、
今じゃ、なかなかどうしてと思わなくもない思想というか、
在り方も持っているわけだが、これはでも、時代というものだろうなとも思うし
結局のところ、その範疇でどうであったかといえば、
先生の本に書かれているところでは、平和であったろうから
それでよいのであろうと思うのである

小説家としての日常も描かれていて、そのあたりも興味深いというか
いかにも、文士にありそうな生き方をしていたんだなというのがまた、
心地よく読めて、夢があるなと思ったのである
実際はどうであったか、それは誰にもわからんが、
おそらくは、これと相違ないのであろう

などと、節をまねてみるのである


最新の画像もっと見る

コメントを投稿