CLASS3103 三十三組

しがない個人ホームページ管理人の日記です。

【読書】利休の茶杓

2024-10-02 21:05:37 | 読書感想文とか読み物レビウー
利休の茶杓  作:山本兼一

幕末頃の古道具屋さんを舞台にした人情話し
落語の演目にでもありそうなやりとりと筋なんだけども、
様々な骨董や道具が出てきて面白かった

ただの骨董話しなら、それだけで済むのだけど
剣呑な時代の京都を舞台にしているので、お客で新選組が出てきたり
勤皇浪士がでてきたりとあやしからんところもあるんだが
政治向きの話しはまるでなく、さりとて、京都の市中では
実際こんな感じで、普通の人が志士とすれ違ってたのかしらんと
思ったりもしながら読めるのでありました

鉄細工やら、茶碗やらもでてくるのだが、
楽家代々の茶碗を展示していたら、どんどんと筋のよい客が寄ってくるようになったと
まぁ、当たり前といえばそうなんだが、道具が人を呼ぶという話しそのものが
丁寧に書かれていて、なんとなし、そういう世界が見えるようでよかった
実際よいものがあると見に行きたくなるし、それで商売の幅がでてくるというのは
骨董ではポピュラーな手法なんだろうが、その茶碗の豪華さというか、
物としての強さというのが軸に語られているので
古道具好きとしてはよい小説だなとにやにやしながら読むのであった

表題作が〆の一本になっていて、
道具箪笥の中に大量の茶杓が入っていて、
そのうちの一本だけが利休のそれなんだが、その行方を追いかけると
そんなお話で、芹沢鴨が出てきたり、なんだかんだと
ばたばたしながら面白く物語が進んで、
なるほどというオチがまた、とても座りがよくて楽しかったのでありました
結局、気に入らないと物を壊すということをする人がいて
そういう人が本当の物をわかるものかというでもないのだが、
その順位への反感と打算というものが、
人によって、物への価値、品というものに転嫁、算段されるものだなと
改めて思うのである

随分高価なという話しもあるが、
結局それを買いたいという人がいてこその相場だし、
その値段には意味がないともいえるなと、不思議な業界だよなと思いつつ
まぁ、そんなことはさておいて、よいものを愛でるということが
気持ちよいという感覚だけ教えてくれるような、やさしい物語にほっとしたのである