CLASS3103 三十三組

しがない個人ホームページ管理人の日記です。

【読書】地図と拳

2023-05-22 21:05:18 | 読書感想文とか読み物レビウー
地図と拳  作:小川哲

直木賞受賞作であります
すげぇ分厚い、レンガかてめぇ
とか思いつつ、通勤時間読書人にはつらい単行本でありましたが
大型連休を費やして無事読み切ることができました
大正から昭和にかけての物語で、地図というトピックスを描きつつも、
国や土地、建物といったものがどういう意味を持つのか、
人の生きる姿と、そこにある様々な物語とクロスオーバーさせて、
歴史を描く力強い作品でありました

主役というか、ずっと通して出てくる人物はいるんだが、
小説全体としては、主人公が入れ替わり立ち代わりしていくといった感じが面白くて、
それぞれの生き方、思想なんかと、そんな個人の悩みなど蹂躙してしまう国や時代が
酷いとも、なんともいえぬ描かれ方をしつつ、
その中で変遷していく人の心みたいなのも描いていて、
ある種の千里眼を追体験できる感じになってて面白かった

未来を見通すという、一種宗教じみたそれなんだが、
科学的というか、地政学なんかを駆使して、そういったことが可能かもと
思わせぶりに進み、実際そうであったりするさまを、
そうじゃない主人公たちから見せて、どうしても受け入れがたいというか、
決められているかのような、予測できてしまうかのような超然とした姿に
異議というか、どう反論するかを一大テーマとして扱っていた
そういう印象を持ったのでありました
人間というものの勝利というと仰仰しいわけだが、
机上論とか、推論だけで到達しえない、人間の妙みたいなのと、
もっと突き詰めて、最後に導き出した答えの在り方というのが
凄くしっくりときて、そういうことかもなぁと、
生きることへの意味みたいなのを考えさせられる面白い物語でありました

結構人の死があっさり描かれたりしている
ドライな部分も印象的だが、それはそれで人の人生が死によって報われたかのようにも見えるというのもまた
考え方として、許容する一つなのかもと思わされたり
地図に落とし込まれた想い、それらが、誰のため、あるいは、
人間全体のためともいえるような営みの結晶だという感じがして
凄くよかったと感動したのでありました


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