朝、顔を洗っていた時、ふと
「ああ、今日、『麒麟がくる』の最終回だな。」と思いました。するとなんだかドキドキとしました。
ワクワクと言うよりも、やっぱりドキドキ。
だって終わってしまうのですよ。
一緒に大変な時間を過ごしてきた、仲間のようなドラマが。
動悸もすると言うものでしょう。
内容がどうのとか言うよりも、もうその別れが寂しいのです。
これが噂の「ロス」と言うものなのかも知れませんね。
まるで「指輪物語」のホビット庄のような、なんだか美し過ぎて現実味の無かった明智の庄が、初回に映し出され、紛れ込んできた菊丸とそして京で助けた駒と三人で、じゃれたような会話をしていた、その昔。
未来には、それぞれの道があのようにあったとは。
短いようで人生は長いなと、思いました。
と言うわけで、最終回の感想です。
けっきょく、この物語は信長と光秀の愛の物語だったのだなと、私は思ってしまいました。
本能寺のあの場所で、傍にいるけれどその姿が見えない場所で、信長が滅んでいくのをじっと待っている光秀。いったいどんな気持ちでいたことでしょう。
信長は本能寺を見つめながら、自分と信長の過去をじっと反芻していました。
出会った時、桶狭間の戦いから勝って戻って来た時、「大きな国」の夢を二人で笑いながら語り合った時。
「どうしてそうなった。」とよく信長は言いましたが、私は本能寺でもこのセリフが出てしまうのではないかと予想などしていました。
ところがとんでもない事でした。
この信長はそんな男ではなかったのでしたね。
まったく恥ずかしい限りです。
「十兵衛か。十兵衛ならば、是非もなし。」
今までで、この「是非もなし」に一番説得力のようなものを感じました。
(いつもセリフは曖昧なのですが、今回は後で録画でセリフチェックしておきますね。)
この時の染谷信長、素晴らしかったですね。
このキャスティングに、私は拍手を送りたくなりました。
その後
「光秀は天下を取りました。」とナレが入った時、思わず私は夫殿に言いました。
「光秀の天海説あるじゃん。私、それを支持したい。これもそっちでやって貰いたい。」
「それは無理じゃん。」と、夫。
だけど、私、その時誰々はと言うナレが入った時、家康は次の何々の為に三河に戻ったと言ったじゃないですか。「何々」の部分は、「準備」だったか「行動」だったか何か。
光秀の想いを受け取った家康だったわけですから、もしかしたらみたいな気持ちになってしまったのです。それはまさしく願望と言うやつですね。
ナレで
「予想外に早く戻った秀吉と戦い、光秀は負けた。」と、凄くクールな言葉が続きました。
だけどそのクールさが、かえって凄く良かったのです。そうだ、ただ戦に負けただけなんだ。惨めに討たれたわけではないのだと思えたからです。
ところがテロップに、「三年後」と出た時、夫婦で思わず「あれっ?」ってなりました。
「あっ、もしかしたら、ママが言っていた説 ?」と夫。
都ではみんな起きた事など、何もなかったかのような、そしてかつてあった事は、みな他人事みたいな顔をして世間話をしていました。帝も東庵も。
駒は義昭の元を訪れて、光秀生存説を語ります。
「また会おうぞ。」と言って二人は別れますが、私はこの物語の前半を見ていた頃、最終回でこんな風に、光秀の事を語り合うのは、駒と菊丸とでなのかと思っていたのです。まさかまさかの展開です。
あの駒が将軍と光秀の話をするなんて。
駒はもう、大名たちのお茶会に顔を出す女実業家なのですものね。
菊丸だって、今頃は光秀の傍で仕えているかもしれません。って、私の中では光秀生存説が絶対と思いたい気持ちになっていました。
それから駒は街中で光秀を見かけ追いかけて行きます。必死になって追いかけて行き誰もいない街外れに来てしまいます。だけど駒は何かを確信したように、ひとり頷くのでした。
私もあの本能寺から帰る時に、伊呂波太夫を通して光秀が駒に約束した「麒麟を呼ぶ。」は、信長を倒し天下を取ったからではなかったのだと思いました。
だけどやっぱり、それは願望 ?
そうじゃないと私は思いました。なぜなら最後に馬に乗って駆け抜けていく光秀は、駒が見た服装だったから。そんな根拠かと言う所ですが、ラストはみんなの想いのイメージではなく、本当に生存説で、このドラマは締めくくったのだと思いたいです。
私たちが知っている光秀の最後のイメージって、雨の中、竹藪のような場所で、名もなき足軽に横腹を刺され、惨めに馬から落ち、無念の思いの中で絶命するみたいなものではなかったですか。でもそれだって、主君殺しの光秀に相応しい物語を誰かが作ったのではないかと思うのです。
確かにあまり無い終わり方かもしれませんが、私は「ああ、良かったナぁ。」と心からそう思いました。
2020年と2021年の今まで、スタッフの皆様とキャストの皆様、ありがとうございました。本当に、日曜日が来るのが楽しみでした。
そして、今までこのブログの感想を読み続けてくださった皆様、ありがとうございました。感謝いたします。
いつか思い出すのでしょうか。コロナで大変だった時、麒麟がいたねって。