続けてエドワード・ゴーリーの本の紹介と感想です。
「横須賀美術館にて「エドワード・ゴーリーを巡る旅」展」と言う記事の中で、「不幸な子供」の事を書きました。
その本のアマゾンの紹介文に「一人の少女の不幸を悪趣味すれすれまでに描いた傑作!」とあることも書きました。
この「金箔のコウモリ」も一人の少女の一生を描いた物語です。
「「ずぶぬれの木曜日」と「音叉」」と言う記事の中で「ずぶぬれの木曜日」の感想に、『読後感』と言う言葉を使いました。
それをここでも使うとすると、「金箔のコウモリ」は静かな何とも言えないような感動が残ります。
この本は絵本。言葉も多くはないし、途中でヒロインの気持ちを綴った言葉も一言もありません。淡々とあった事だけが語られていきます。
だけどもしも映画好きの人ならば、読後にはまるでフランス映画やハリウッド映画か何かを見終わったような気持ちになるかもしれません。
エドワード・ゴーリーは、相当なバレエ好きな人だったらしいです。だから描くことが出来た物語だったのかも知れません。
ある日死んだ鳥を道端でじっと見ていたモードは、マダムにスカウトされます。
マダムの用意した部屋に住み、明けても暮れてもバレエの練習。
わびしい生活です。
そのマダムは、モードへの異常な関心に精神病院に入れられ、バレエ団は解散してしまいます。他の団に入れても2年間のドサ回り。だけどドンドン才能のを花開いていくのです。裕福なバレエ団からもスカウトされ、彼女に恋をしてくれる人も現れます。
しかし・・・・・
その後も紆余曲折。
ただ彼女のバレエ生活は華やかになっていきます。そしてシックでミステリアスで時代の寵児になっていく彼女の毎日の生活は、実はずっと変わらず侘しく退屈なものだったのです。
だけどとうとうさる国の王族の前で踊ることになって、彼女は飛行機に意気揚々と乗り込みます。
これは彼女の一生の物語。
サクセスストーリーなのか、それとも悲劇の物語なのか・・・。
タイトルの「金箔のコウモリ」は作中に出てくるバレエのオリジナル演目のタイトルなのですが、何かそこに意味があるようにも感じてしまうのでした。
そして次に感想を書くのは「失敬な召喚」です。
美術展ではこの本の絵は3枚しか(確か?)掲示されてませんでしたが、その3枚目の絵を見て、どうしてもその続きが気になって、いつか必ず読むと思ったわけです。それが今の私のゴーリーブームに繋がったと言えるでしょう。
「悪魔来りて 宙に舞い スクィル嬢を蹴り見舞い」で始まる物語。
悪魔はブンブンと彼女を振り回し舞います。その夜、彼女の胸には悪魔のしるしが・・・・。
その後に彼女は不思議な力を身につけてしまうのです。
その3枚目は、彼女が蛇を引き裂いているという絵だったのです。
恐ろしい絵なのですが、「凄いな。この人どうなっちゃうの。」と私は思ったのです。実はルート君も同じ気持ち。
だけどこの本を手に持ってみると、やはりその蛇のシーンはありません。「音叉」にも同じことがあったので、やはり編集の段階で止めた絵だったのかも知れませんね。
ゴーリーと言う人の本を読んでいると、あまり道徳的なことを言っているような雰囲気はないのですが、もしかしたら、これは「惡の誘惑」について、かなり真面目にメッセージを出しているのかも知れないなと思いました。
読めて満足しました。
本の紹介の下に、ネタバレの雑なあらすじを置いておきます。
彼の本は、確かに癖になってしまいます(;^_^A
その後彼女はどんどん魔女化していき、気持ちの悪いクッキーを作ったり、「九十と二のまったき悪徳」と言う本を熟読したり、とうとう近隣の人達を・・・・
まあ伊周(光る君)のやっていることをやりだすわけですが、彼女の場合は効き目が頗るありました。そこに戻ってきた悪魔が「やりすぎなんだよ!!!」と言ったか言わなかったか、容赦なく彼女の髪を掴み、彼女を地獄の業火の中に突き落とすのでした。
雨の一日。素敵な時間をお過ごしください。