「中央区を、子育て日本一の区へ」こども元気クリニック・病児保育室  小児科医 小坂和輝のblog

感染を制御しつつ、子ども達の学び・育ちの環境づくりをして行きましょう!病児保育も鋭意実施中。子ども達に健康への気づきを。

近代貿易システムと格差をゲームで学ぶ(アナール学派)

2008-01-26 12:07:21 | 教育
一昨日は、科学の学び方(ブログ2008-01-25 01:05:15)であったが、
昨日は、歴史や社会の学び方のすばらしい手法に出会った。
この手法の紹介は、塾世界史講師青山雄一氏。

近代貿易システムと格差をゲームで学ぶことができる。

準備するものは、
①はさみ、
②定規(直角三角形、二等辺三角形、長方形)や分度器(半円)、
型をとるものということであり、別に型がとれれば、なんでもよい。
③厚紙、
④筆記用具。以上。
なんと単純。
ゲームは、単純の方が、おもしろく、奥が深い。
「鬼ごっこ」なんて、その典型。
それは、さておき、


どう遊ぶか。

①グループを、いくつかつくる。人数は、同じでなくても良い。
 筆記用具は、配布済み。
②そこに、“不平等に”はさみ、定規や分度器、厚紙を配る。
③リーダーの合図で、定規や分度器でその型を厚紙に描き、
 はさみで、型を切る。
(基本的に、重ね切りはなし。)
④リーダーは、定規から作られた型、長方形、直角三角形、二等辺三角形。分度器から作られた型、半円。それぞれに、価格をつける。
⑤制限時間内に、作った型につけられた価格の額を、すべて合計し、合計の多いチームが勝ち。

ルールとして、
①グループ間の様々な交渉可とする。
もともと、不平等に配っているわけで、
厚紙とはさみを交換してもよいし、
厚紙と分度器、定規を交換してもよい。
他にも、交渉はありうる。

②リーダーは、価格を、その型の供給量などにより変動することができる。

③じゃんけんタイムがあり、リーダーとグループ代表がじゃいけんをして、
勝つと厚紙などがもらえる。

*ちなみに、ゲームとしておもしろく成り立たせるには、
人数、グループにあわせた、
はさみ、定規や分度器、厚紙の配布の数の調整が、
鍵を握っている。


さて、このゲームで、わかることは、
①不平等に配られた構造は、変わらない。
②人が少ないグループは、勝てない。
③交渉において、人の感情が大いに交渉の成否を左右する。
ということ。


このゲームは、近代貿易システムそのものである。
はさみ、定規や分度器は、
機械、工業であり、
それをもつグループは、先進国を表す。
厚紙は、
資源であり、
厚紙をのみ持つグループは、発展途上国を表す。
人は、いつでも資源である。

そして、
厚紙のみしか配られなかったチームは、
はさみ、定規や分度器をもともとたくさん配られたチームに勝てない結論になる。

また、交渉において、感情が左右される。
論理より、感情をうまくいい方向に持っていくか、
その成否が、交渉成立を左右し、
ひいては、ゲームの勝ち負けを
左右することになる。



バリエーションは様々つけられる。
途中で、グループ間の話し合いの場をもち、
グループ間のもののやりとりに制限を加えたりすることもありうるであろう。
あるグループを排除して、排除したグループをより不利にする取り決めもできる。
(WTO)

余裕がでてきた、グループは、
例えば、はさみのないグループにはさみを貸す代わり、
できた型の何割かを、そのグループの納めるようにする方法もありうる。
(アウトソーシング)

昨日、勉強会の中で、大人同士でやってみたが、
大変おもしろかった。
現在の世界の構造の一つを理解できたと感じる。
自分の政治の理解において、新たな視点を気づくことができた。

社会や歴史の理解の体験型の教材として、
十分耐えられるゲームである。

一度、中央区の子ども達にも、
体験する場をつくってみても、
良いかもしれない。

可能性のある、教材であったため、
ご紹介した。
この教材を深めて行きたい。きっと使える!!

****おまけ****
(歴史学の専門家ではないので、浅はかな知識で、かつフリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』を参考にしながら書きます。)

歴史研究は、
基本は、実証主義的な史料解釈中心であろう。
すなわち、事件を追っていく歴史認識。

それに対し、
歴史の構造分析を重視する歴史認識がある。
アナール学派。
社会学や心理学などの他の学問の方法を応用し、
歴史というシステムの中で、
感情を持った人間が、どのように行動するかという観点で分析した
歴史認識。

このゲームは、アナール学派の実験モデルのように、考えられる。


コメント
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