「中央区を、子育て日本一の区へ」こども元気クリニック・病児保育室  小児科医 小坂和輝のblog

感染を制御しつつ、子ども達の学び・育ちの環境づくりをして行きましょう!病児保育も鋭意実施中。子ども達に健康への気づきを。

平成22年度予算審議のまとめ、その考え方

2010-03-25 23:00:00 | 財務分析(予算・決算)
 バブル経済が破綻した1990年代以降の長期の経済の低迷に加え、2008年新自由主義経済が破綻して世界規模での金融・経済危機が世界を襲い、たいへんきびしい経済状況下に日本は現在あります。人口減少、高齢社会の到来とともに、戦後60年以上にわたり進展してきた高度経済成長と大量消費が行き詰まり、これまでの拡大・右肩上がり路線を軌道修正し、いかに「縮小」に対応していくか、低成長社会の中で持続可能性をいかに見出すかが、今の日本経済の喫緊の課題となっています。
 
 幸いにして、本区は、長年の目標であった人口10万を平成18年に達成、30代を中心とした若年世帯の転入が、人口増加をささえており、また、江戸開府以来の文化、商業、情報の中心地として今なお発展し、4万4千あまりの事業所を抱え、一時期よりは減少しましたが、昼間人口は約65万人にのぼり、まちのにぎわいが続いています。
 
 しかし、急激な人口増加とあいまって、区民の多様なニーズや価値観の広がりが加速されるとともに、新旧住民の接点の不足、住民同士の連帯感の希薄化、地域をささえる担い手の高齢化やなり手不足など地域力の低下が叫ばれています。

 地域諸課題解決に向けたなお一層の取り組み方が求められている中、来年度平成22年度予算案が、まちづくり基本条例案とともに提案されました。同時に「あらたな形の公共」としての中間支援拠点整備を含めた協働の仕組みの提案する「中央区協働推進会議報告書」や10年後の教育目標の達成を描く「中央区教育振興基本計画検討委員会報告書」等も議会報告を受けているところです。両報告書の今後の着実な運用に期待しています。

 私たちは、来年度予算を、行政運営の大切な4つの視点を持ちながら、すなわち「情報公開・情報開示」「市民参加」「連携」そして「人材育成」の視点から分析を加え討論して参りました。

 歳入面では、本区独自の人口増加よる特別区民税の伸びはあるものの、日本経済の低迷・縮小に伴う歳入不足にいかに対応していくことが求められますが、「個別監査」や国の「事業仕分け」に劣らぬ手法として「行政評価・事務事業評価」を利用して歳出削減や予算執行の効率化の姿勢をもつことと、広告収入をはじめ財源獲得のさらなる努力を期待いたします。
 
 歳出面では、区長の所信表明において人類繁栄の礎である「平和」と「環境」をすべての施策の根幹に据えることを明言されておりましたが、「平和」、「環境」にあわせて「福祉」の三つを施策の根幹と位置づけ、区政運営を行っていくことが、今後求められることを私たち友愛中央は考えています。

 「平和」では、平和のモニュメントを作成する中での区民の意識の啓発を行うと共に、国際都市東京、その中心である中央区の位置づけを再認識し、国際交流をさらに発展させていく中で、国際理解を深め、小さいながらも着実な人と人のつながりの上に世界平和を構築していくべきであります。

 「環境」では、エコスクール・エコタウン構想の策定と実施に期待すると共に、ひとりひとりの区民が実感して取り組むことができる「クールアースデイ」などの企画や、アダプト制度や協働の仕組みを活用しながら緑化・芝生化への積極的な区民参加が広がっていくことが期待されます。都心中央区が環境施策の先進的取り組みを行うことの、全国への情報発信力や波及効果も念頭に、果敢に取り組まれることを要望いたします。

 「福祉」では、健康で24時間365日安心して生活すること、どこへでも誰もが安心して出かけられること、安心して生み育てられることを実現するための、さらなる「安心福祉のための都心居住のモデル」を構築していかねばなりません。折りしも提案されている「まちづくり基本条例」が、開発業者に子育て支援施設、高齢者福祉施設、障がい者福祉施設などを地域特性に応じて開発計画に反映することを求めており、都市整備部と連携したさらなる福祉のまちづくりに期待するところです。

 平成10年(1998年)策定の「基本構想」でいう都心居住10万人を達成し、今後、「では、定住人口をどこまでの増加を目指すのか?」の長期的な見通しをはじめ、あらたな諸課題解決に向け、「基本構想」の見直しが求められるところでありますが、本区が抱える緊急課題と中・長期課題を見てまいります。

 緊急課題としては、
①昨年8月に子育て支援対策本部を立ち上げ検討が続けられている待機児童解消や幼保一元化、周産期医療体制をはじめ子育て支援策のさらなる充実、

②在宅療養支援や認知症対策など取り組みが複雑化してきている高齢者福祉の充実、

③個々の商店街のビジョン明らかにしながらの商店街活性化、そして、

④来年度策定を行う人材育成基本方針の実効性ある立案やボランティアをはじめ教育を支える人材の育成、就労に向けた人材の育成などさまざまな形での人材育成

の4つが上げられ、それぞれ積極的な取り組み方が求められます。

 
 中・長期課題としては、①新しい施設の整備、②施設の更新・まちの更新、③築地市場の移転問題、そして④地方分権の確立があります。


①「新しい施設の整備」では、労働スクウェア跡地を活用した京橋図書館の移転、その充実による生涯学習拠点の整備や、京橋地区の再開発に伴った「環境館」や「観光館」の整備が行われるところですが、幅広く意見を入れた施設整備と、その運営においての「協働の仕組み」も取り入れた区民参加の拡充を期待いたします。

②「施設の更新・街の更新」としては、復興小学校の改築・改修、歌舞伎座の建て替えなどの文化・教育施設の更新や、防災上課題の多い地域の街の更新があります。
 さらに、マンション居住が86%となった現状において、世代交代にどう対応するのか、千里ニュータウンでは、“オールドタウン化”、すなわち「短期間に建設された同質の住宅に、ほぼ同世代のファミリー層が多量に流入し、親世代が定住を志向する中で、子世代は進学・就業・結婚とともに域外に流出し、結果として夫婦・単身の高齢世帯が多量に発生し、もう一方で住宅・施設が老朽化・陳腐化する現象」が言われており、本区でも、世代交代に備えた対策を、開発の当初から盛り込む必要性があり、「まちづくり基本条例」がうまく機能することを待ち望みます。
 超高層住宅の100年後の建て替え等の更新においては、現段階で近未来に責任のある施策を実施することは困難でありますが、少なくとも、現在どのような考え方で、街づくりを行ってきたかのその考え方を整理し、後世に伝えていくことが私たちのとるべき最低限の責務であると考えます。「公文書館」の設置や「地域資料室」の充実を京橋図書館の移転にあわせもとめていきたいところです。
 その他、まちづくりについて、従来からの課題である「まちづくり協議会改革」や、中央区の立体模型ジオラマを設置したまちづくり課題の議論の場の整備も求められるところです。

 ③「築地市場の移転問題」では、中央区及び議会が一丸となって、「移転断固反対、現在地再整備」の姿勢を貫いています。3月26日現在、都議会でその論議が進められているところですが、是非とも築地市場を現在地で再整備を実現し、都民の台所としての機能とともに、築地ー銀座ー歌舞伎座を一体とした一大観光・商業の拠点整備を求めていきたいものです。将来的には、ゆりかもめの豊洲から新橋への延伸・周回化及び羽田国際空港のハブ機能の進展に連携して広域的な臨海部一体による発展が期待されます。
 一方、豊洲東京ガス工場跡地の土壌汚染問題では、改正土壌汚染対策法の四月からの施行に伴い、移転候補地は、土壌汚染対策の必要な「要措置区域」に指定されることになると思われます。技術会議の提案した新技術の適応実証実験の中間報告が提出されましたが、初期値も示さぬ一部技術のみの不十分な結果報告であり、この報告書をもってして新技術を信頼することは到底できません。「豊洲土壌汚染処理問題」と「築地市場移転問題」は切り離して考える必要性が東京都に求められます。

④「地方分権の確立」では、「特区制度改革」の取り組みの進展と、協働という新たな形の公共の広がりによる「住民自治」の確立がなされた結果、到達することを期待します。


 以上、来年度予算の執行で注目すべき課題を述べてまいりましたが、最後に、現在の区の行政運営における住民の皆様との合意形成のあり方について、復興小学校改築の例を中心に、指摘させていただきます。

 大切なものは、失ってから気づくものです。残念ながら気づいた時には、すでに遅く二度と手に入れることはできなくなっていることが往々にしてございます。

 健康・衛生環境、防災、学習環境の整備の英知を最大限に結集して関東大震災後に建てられた復興小学校に通う子どもたちは、アーチや曲面を多用した表現主義といわれる歴史と伝統、風格あるその学び舎において日々情緒豊かに学んでいます。
 明石小学校に長年勤務したある教師は、「居留地ー震災ー戦災をくぐり抜けてきたその校舎で学ぶことで自然に歴史を学ぶことができている」と高く評価されておりますし、実際に学校に通う小学生は、今の学校が取り壊されると聞いたときに、涙を浮かべ、「お父さん、今の学校はとても楽しいよ。」と訴えていたということです。
 実際、報道によると、卒業生ら「中央区立明石小学校の保存を望む会」署名298筆、保護者や地域住民の「明石小学校改築を考える会」署名1742筆など保存を求める署名や、「日本建築学会関東支部」から復興小学校の保存を求める要望書が出されている段階です。
 中央区は、改築に向け「手続き」を踏んでいるということですが、では、なぜ、今これだけの保存を求める声があがるのでしょうか。「手続き」とは、本来、決定プロセスを明らかにし、区民の権利・利益を守るためにあるはずです。その「手続き」を逆手にとって、「手続き」を経たからという理由で、これだけ多数ある区民の声を無視して本当によいのでしょうか。

 さらに、「手続き」自体に問題はなかったのでしょうか。
①平成19年度の「学校施設整備基本調査」報告書が非開示であること、

②建築学の専門家や学識経験者なしに策定された「小学校改築計画策定報告書」自体の内容の疑義、

③具体的議論がない中で、改築対象校三校の選定がされたこと、

④幅広い事前公告がなされずに開催された「改築準備協議会」の密室性と同協議会の審議過程の問題点、

⑤改築に関連した地元への説明会の開催の遅れ、

⑥「危険建物」の改築に適用すべき「安全安心な学校づくり交付金事業」の制度を利用して国からの交付金をうる事の是非、

などその「手続き」において多くの問題点があげられます。

 また、過去には気づかれなかった復興小学校の文化財的価値などの事実が、今多くの区民が知るところとなって保存を求める声が上がったのであれば、今一度立ち止まって、住民の声や提案を、真摯に受け止めることが行政のあるべき姿であると考えます。

 現在、全国各地で行政の方針に対し合意形成を得る段階で、問題意識をもつ住民の様々な声があがっています。
 築地市場の移転問題においても、不透水層の存在など土壌汚染調査の信憑性を証明するコアサンプル廃棄を差し止める裁判、いわゆるコアサンプルという「証拠隠滅」の差し止めを求める裁判が進められています。
 また、東京都が豊洲の土地を、汚染があると知りながら、瑕疵担保責任を定めることなく、当時の通常の価格で購入したことに対し住民監査請求がなされるということです。
 いずれも、そもそも東京都の都民や市場関係者への十分な説明責任を果たさないことから起因しています。

 都市法や都市計画行政のあり方に対し、住民から問題提起されたことが、司法の場で判断が下される事例も出始めています。
 広島県福山市の「鞆の浦訴訟」では、歴史的景観の保護を理由に埋め立て架橋事業に免許差し止め判決が下されました。
 近隣の新宿区では、建設中のマンションをめぐる建築確認取消訴訟で、最高裁により建築確認を取消す判決を下されました。

 復興小学校改築と似た例では、「愛知県立旭丘高校の校舎建て替え」に対して、取り壊しの仮処分申請が出されましたが、名古屋地裁から、仮処分申請を退ける判決がなされました。しかし、決定文章の末尾において、仮処分申請を退けることが愛知県に対して校舎の取り壊しの適法性と相当性を与えるものではなく、愛知県が校舎の文化財としての価値を考慮せずに取り壊しを行うことについて苦言を呈し、愛知県と「旭丘高校校舎の再生を考える会」ならびに関係者が話し合うことを強く希望する旨の付言が記されました。

 今後、明石小学校・中央小学校・明正小学校など復興小学校の建て替え問題に関しまして、地域住民、保護者、卒業生、日本建築学界ら関係者と十分な合意形成を持つべきであると考えます。

 合意形成を得ることの重要性は、区内他地域の再開発問題や歩行環境整備に関してなど区の諸課題すべてにあてはまります。

 住民の合意形成を得ながら、「環境」「平和」そして「福祉」を根幹に据えた街づくりが進められることを強く要望し、平成22年度各会計予算案及び同時補正予算案に賛成をいたします。
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