2008/07/20
専門家会議報告書(案)に対する意見書
中央区議会議員 小児科医師
小坂 和輝 (41歳・男)
連絡先:104-0052東京都中央区月島3-30-3
ベルウッドビル2F
TEL:03-5547-1191
FAX:03-5547-1166
Eメール:kazuki.kosaka@e-kosaka.jp
**************
豊洲移転には、農水省の認可がいるという観点から
<農水省の認可の必要性>
豊洲移転には、農水省の認可が必要であると考えるが、それで正しいか?
すなわち、中央卸売市場は、「中央卸売市場整備計画」に基づいて設置されると「卸売市場法」に定められている。そしてその「中央卸売市場整備計画」は農林水産大臣が定める。
築地の豊洲移転計画は、平成17年(2005年)3月に第8次中央卸売市場整備計画の中で書かれている。その整備計画を定める際には、「食料・農業・農村政策審議会」の意見を聞くことになっていた。
第166回国会の環境委員会で明らかになったことだが、豊洲移転については、平成17年(2005年)3月17日の一日だけ開催された同審議会の分科会である「総合食料分科会」で議論された。その「総合食料分科会」では、「汚染土壌と食の安心、安全」という議論は一切なされなかったと佐藤政府参考人は認めている。そもそも分科会には、土壌汚染の関係の専門家は入っていなかった。
よって、審議会で議論の欠けていた土壌汚染については、「東京都の動きを踏まえ、また環境省とも連携して取り組むと」農水省が断言してる。よって、土壌汚染のことがきちんと審議され、「卸売市場整備基本方針」に謳われている「食の安全・安心」が担保されて「築地市場の豊洲移転」は初めて“認可”されることになるわけである。
東京都は、認可手続きを、どのような日程、行程で進めるかをあきらかにしていただきたい。
****************
「土壌汚染調査」の観点から
<学際的でない専門家会議>
専門家会議メンバーには、有楽町層に詳しい地質学者、地震の専門家、有害化学物質の医学専門家がかけていたと考えるがいかがか?
<RBCAの手法の妥当性>
RBCAの手法は、日本では、まだ一般化されていない。日本の学界や、学者の評価で、その妥当性は証明されているのか。
ベンゼンの慢性毒性、シアンの急性毒性の両方を評価しているが、本当に急性毒性を評価することも可能なのか?
<RBCAの手法を用いて地下水面AP+2m以上の評価を>
地下水面は、上がる可能性はあると考えるため、RBCAの手法を用いて地下水面AP+2mの評価のみしているところを、+3m、+4m、+5m、+6mの場合の毒性の健康への影響がどれだけ上昇するかも合わせて出していただきたい。
<周辺河川の汚染状況>
土壌汚染がこれだけ深刻であれば、周辺河川及びその河川底の土壌も汚染されていると考えられる。周辺河川および河川土壌の汚染状況をご報告いただきたい。
<有楽町層への汚染の進行の可能性>
有楽町層を不透水層であるという根拠データを出していただきたい。
特に、中央区議会が6/27に主催した東京都中央卸売市場関係部署との全員協議会の場で、「ある学者(2名程度)が有楽町層は不透水層と述べた」ということであるが、その引用文献(学者名、肩書き、出典図書)をあきらかにしていただきたい。
有楽町層を土壌調査で貫通させないという方針であるが、それなら、少なくとも貫通させない程度のほんの上部だけでも、土壌汚染調査をしていただきたい。
有楽町層は、すでに「ゆりかもめ」の橋脚工事で破壊が起こっており、化学物質汚染は、より深部まで進行しているのではないか?
<シアン化合物による広範囲汚染の原因分析>
なぜ、いまだにこんなに土壌が汚染されているのか?
この土地は一度、東京ガスが土壌改良を行っている。それであるのに、驚くべき数値のベンゼンやシアンが見つかった?東京ガスの土壌改良はどの点で不備があったのか?その原因を明らかにしていただきたい。
また、シアン化合物は科学的に不安定と聞く。シアンは検出されてはならないわけであるが、そのシアンが、地下水で約4分の1の調査地点、すなわち約10ヘクタールで検出された事実は、どういう原因によるものなのか?原因を明らかに述べていただきたい。
汚染源となる「廃タール」が、そこらかしこに埋められているのではないか?
<シアン化合物の毒性>
シアン化合物は、食べても安全であると、第6回専門者会議の質疑応答で内山巖雄
京都大学大学院工学研究科 教授は答えられているが、毒性のデータを明らかにしていただきたい。
<シアン化合物汚染のリスク>
シアン化合物汚染地下水が上昇し、地表の土壌を汚染。汚染土壌が、粉塵として舞い上がり、食べ物に付着するリスクは否定できないと考えるが、本当に大丈夫か?
******************
「土壌汚染対策及び将来の検証」についての観点から
<鉄製止水矢板の耐久性>
鉄製止水矢板は、腐食しないのか?地震で亀裂が入ったりしないのか?亀裂が入っていないことをどうやってモニターするのか?
<建物下のシアンによる地下水汚染対策>
建物下の地下水のシアンによる汚染は、シアンは検出されてはならないという環境基準であるが故に、地下水のシアンを検出されない状態に土壌改良をする方針ということで理解してよいか。
将来的にではなく、環境基準でいう地下水に検出されないことを達成してから、移転にとりかかるということで解釈してよいか。
同様に、ベンゼン他、他の化学物質も建物の下は、環境基準を満たすようにするという解釈でよいか。
遮水壁で建物下を囲うわけであり、遮水壁に囲まれた空間内にある汚染化学物質は、永遠にそこに存在し続けることになるから、当然その解釈でよいとは思うが、確認のために教えていただきたい。
<有楽町層の温存>
市場の基礎工事では、有楽町層を温存し、破壊しないと認識してよいか?
<5街区の液状化対策及び建物建築>
5街区は有楽町層がAP-0.5mから-3.5m、特に大部分は-1.0m前後で存在する。建物の計画地盤面は、AP+6.5mに立つということであるが、計画地盤面から有楽町層までの深さは7~10mということになる。
有楽町層を温存する方針であるということだと、そのような深度で、地震に耐えうる建物を建設したり、液状化対策が本当に可能であるか、技術的な証明をお願いしたい。
<土壌改良後の汚染物質処理の検証法>
土壌汚染対策を施したのち、汚染化学物質が浄化されたことを確かめる必要があると考えるが、検証する計画があるのか?検証するのであれば、どのような方法で検証する計画か?
一度、東京ガスは、土壌改良をした経緯がある。しかし、いまだに驚くべき数値のベンゼンやシアンの土壌汚染が見つかった。よって、必ず、土壌改良後の検証は必要だと考えるがいかがか。
<専門家会議の存続>
専門者会議は、土壌汚染対策が完了するまでは、存続していただきたい。東京都がきちんと専門家会議の提案した土壌汚染対策をきちんと完了したことを見届けて後に、解散していただきたい。
<海水利用ができなくなるのではなか>
現在市場では、周辺から引き上げた海水を用いていると聞くが、豊洲に移った場合、汚染地下水をそのまま川に流すことになる以上、周辺の海水、河川水は用いることができないと考えるが、どう対応するのか?
<搬入土壌の入手先>
どこから、多量の土壌を運びこむのか?その土壌は、汚染はないと言い切れるのか?
<汚染土壌の処理>
汚染土壌をどう処理するか、技術的な証明を明らかにしていただきたい。
生物学的にベンゼンを処理できるものなのか?
汚染土壌を外に運ぶ場合、受け入れ先はどこなのか?受け入れ先情報は、きちんと開示するのか?
汚染土壌が海上投棄されないことを、どのような方法でチェックできるのか?
<都の土壌汚染対策の技術や工法の実現可能性>
都の計画した土壌汚染対策の技術、工法が、果たして、この専門家会議が目標とする処理のレベルを達成できると言う証明を、この専門家会議のメンバーで出していただいたのち、都の土壌汚染対策を開始していただきたい。
第8回の平田座長と質問者Gとのやりとりでは、専門家会議とは別に、東京都の出した技術を評価する「技術委員会」なるものの言及があったが、是非設置をお願いしたいが、いかがか?
<地下水位の変動リスク>
専門家会議の結論では、地下水位がAP+2mで管理できた場合、健康被害リスクを安全域に保てるとあり、地下水位をAP+2mに保つことが、必須の条件になっている。地下水位が上がるということは、汚染された地下水で、折角入れ替えた土壌を再汚染させることを意味する。
現在、地下水位は、5街区AP+5~+6m、6街区と7街区は、AP+3~+4mにあり、如何にAP+2mに下げていくか、技術的な証明をお願いしたい。
また、台風、洪水、高潮など特殊な状況において、果たして地下水位がAP+2mで管理できるかたいへん危惧される。その点からすると、昨年2007年9月7日に台風9号が関東を直撃している。9月7日を前後挟んだ一週間のそれぞれの街区の地下水位のモニター結果を見せていただきたい。もし、モニターがないのであれば、今後、地下水モニターを実施し、台風の前後での地下水位のデータを出していただきたい。
将来的に、地下水位をモニターする井戸は、いくつ(街区それぞれで、建物下地下水モニター用にいくつ、建物外の地下水モニター用にいくつおくのか)置くかも明らかにしていただきたい。
今後、地下水位を随時、公表願いたい。
<地盤面の亀裂補修>
計画地盤面を覆うコンクリートやアスファルトに亀裂が生じた場合、その亀裂を塞ぐ作業は、何日以内に行うことを約束するのか?
<液状化発生への対応>
万が一地震がおき、液状化が起こった場合、何日以内に汚染土壌を処理することを約束するのか?
<液状化発生への市場機能閉鎖時の補償>
万が一地震がおき、液状化が起こり、汚染土壌のために市場機能がストップした場合、補償を出すことを約束するのか?
同様に、土壌汚染に起因するなんらかの理由で、市場機能がストップした場合、補償を出すことを約束するのか?
どの範囲で補償を出す計画か明らかにすることなしに、移転を決定するのは、やめていただきたいが約束できるか?
<地下水の汚染状況のチェック>
地下水位をモニターする井戸からくみ上げた水で、汚染化学物質の汚染度チェックはどのような頻度で計画しているか明らかにしていただきたい。化学的分析だけでなく、生物学的な分析、例えば、地下水をくみ上げた水の貯留池には、コイなどの水生物を飼うことで、汚染のないことをモニターいただきたい。
<土壌汚染対策費及び液状化現象対策費>
土壌汚染対策費及び液状化現象対策費の試算を出していただきたい。
専門家会議でイメージしている技術と、東京都がイメージしている技術が異なる場合が想定されるため、専門家会議試算と東京都試算を別々にだしていただきたい。
<土壌改良工事時の汚染土壌飛散>
土壌改良工事の発生する汚染土壌の飛散対策及び飛散していないことの検証方法を明らかにしていただきたい。
<知事の確約>
知事は、本当に専門家会議の出した方針に沿うという確約をいただきたい。以下の会見を見る限り、知事は、専門家会議の方針に従たがうとは、考えにくいため。
~5月30日の知事の会見を引用~
【記者】築地の関係なんですけれども、市場の関係者が知事に陳情したというような話を聞いているんですけれども、その内容と受け止め方について…。
【知事】いや、それは当局に聞いてください。何か陳情があったそうですけどね、あの5団体(水産仲卸を除く築地市場の主要団体)からは。
ただね、私もこの間、担当の局長に言ったんですがね、それがどういうふうに伝わっているかですな。インターネットにね、日大の名誉教授をしていらっしゃる、これは海洋工学の専門家ですけどね。要するに、土壌の汚染をどうやってクリーンナップするかということじゃなくて、もっと違う発想でものを考えたらどうだと。それは、一回その土地をどこかに全部、土を持っていってね。それで、それを違う方法で焼くとか何かして汚染をとる。
一方、あの跡地に、土を全部さらっちゃった後、地下2階ぐらいですかね、その構造を詳しくは、私、専門性はわかりませんけども、3メートル、2メートル、1メートルか、そういう段階の、要するに箱ですね、コンクリートの。どういう構造になっているか、私、わかりませんが、概略の図はありましたけど、それを埋め込むことで、その上に、市場としてのインフラを支える、そのほうがずっと安くて早く終わるんじゃないかということでしたね。
土壌汚染をどうして回復するか、そういう発想だけじゃなくてね、思い切ってものを取り替えるみたいな、違うベクトルというものを考えたほうがいいと、私、かねがね言ったけど、それがどう伝わったのか、そういうサジェスチョン(示唆)、プロポーズ(提案)もありました。
こういったものがいくつか出てくるでしょうからね、それを斟酌して、要するに、当局が説明しているような方法だけじゃなくてね、もっと画期的な方法があるんじゃないか。そうすると、みんなが安心して、納得するような手だてが発見されるかもしれない、そういう期待を持ってます。日本はいろんな技術を持ってますからね。
(途中略)
だから、できるだけ早くですな、安く回収できるための、何ていうんでしょうね、技術がないかと探してたら、さっき申し上げたみたいに、全然違うジャンルの方々からいろんな発想が届けられる。これからもあると思います。今の首都大学東京の学長の西澤(潤一)先生、これはもう科学技術の泰斗(権威)ですから、あの人を通じてですね、我々の考えられない方法がないか、いろんな領域の技術者に意見を聞いてます。
<土壌汚染の将来的な監視>
土壌汚染状況を将来も監視するために協議会を立ち上げると言うことであるが、是非、その協議会も公開で開催して欲しい。
この協議会には、是非、平田座長も加わっていただきたい。
******************
「今後の手続き」の観点から
<専門者会議の公開について>
第9回の専門者会議では、第8回の時に議論があったように、テレビカメラも入れて、公開でおこなっていただきたい。
<東京都環境影響評価条例に定める手続き>
今後、豊洲の土壌汚染状況も含めて手続きが進められていくことになるが、現在、「東京都環境影響評価条例に定める基本手続き」のどの部分まで、進行しているのか。(「評価書案」に対する「関係区市町村」と「都民」の意見書が提出された段階と理解しているが正しいか?)
今後、「都民の意見を聴く会」や、審議会の審議内容をきちんと公開していただきたい。
リスクコミュニケーションという点では、専門家会議代表と、市民代表で公開討論会をお願いしたい。
<土壌汚染対策法との兼ね合い>
今回の専門家会議が提案した汚染土壌の処理方針は、土壌汚染対策法に従った汚染土壌の処理方針より厳格なものなのか、それとも厳格でないものなのかどちらか?
東京都環境確保条例117条に従うことで、土壌汚染対策法に従った程度に厳格なものになると解釈してよいか?
<食の安心・安全>
この会議では、食の安全・安心という観点からの評価がいっさいなされていない。食の安心という観点からは、土壌汚染リスクは、ゼロであるべきであり、そのリスクゼロを達成することが必要と考えるがいかがか。
<土壌汚染対策法は、「食の安心・安全」を保障しない>
今回の専門家会議は、土壌汚染対策法に従ったものとしても、土壌汚染対策法に従うことが、イコール「食の安心・安全」を守ることには通じないと考えるが、いかがお考えか。
「市場を考える会」や今までの専門者会議の傍聴者の意見は、総じて、専門家会議の方針では「食の安心・安全」は、守れないということを意味していたと感じるがいかがか。
土壌汚染対策法の観点から、「食の安心・安全」を達成することを考えるのではなく、新たな視点、新たな尺度を導入することで「食の安心・安全」を保障することを考えることはできないのか。それは、都民や市場で働く人たちとの十分なリスク・コミュニケーションで生まれると考える。
そのリスク・コミュニケーションをもてたとすると、ひとつの落としどころは、有楽町層までのすべての土壌を掘削し、入れ替えるのであれば、「食の安心・安全」は守れると考えるがいかがか。
もしくは、「移転ありき」でない専門者会議であるならば、「「食の安心・安全」は、豊洲の東京ガス工場跡地では守れない」という結論が導けたのではないか?「もっと安全な土地を探すべきである」という結論が導けたのではないか?
<科学者としての理性>
科学者として、すべての委員にお聞きしたい。
豊洲の東京ガス工場跡地は、生鮮食料品を扱う市場移転候補地として、「ふさわしいか、ふさわしくないか」。
「深刻な土壌汚染の土地」と「築地市場現在地」では、どちらが生鮮食料品を扱う市場の候補地としてふさわしいと考えるか?
<以上>