「中央区を、子育て日本一の区へ」こども元気クリニック・病児保育室  小児科医 小坂和輝のblog

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法学部Cゼミ生企画講演会「格差問題と憲法」は、学問と言えないか?県議会議員の講演は学問と言えないか?

2013-10-12 23:00:00 | シチズンシップ教育
 司法試験の問題は、結構、トピックになっている社会状況(少しだけ未来を先取りしつつ)を題材につくられているように感じます。

 今年の5月の司法試験 公法系(憲法)の論文問題です。


 前半の処分は、第三回デモ行進許可申請の不許可処分。

 後半の処分は、B県立大学の学内での講演会開催における教室使用許可申請の不許可処分。


 それら処分で、

 デモのほうは、制限を受けた人権:憲法21条1項が保障する表現の自由のうちの集団行動の自由

        制限によって守られる人権、権利:平穏な生活環境、商業活動

 講演会のほうは、制限を受けた人権:憲法21条1項が保障する集会の自由、憲法23条が保障する学問の自由のうちの学問研究の自由、研究発表の自由

         制限によって守られる人権、権利:学内秩序


 さて、

 B県立大学教室使用規則では,「政治的目的での使用は認めず,教育・研究目的での使用に限り,これを許可する」とある中で、

 同時期に企画された経済学部ゼミ生の講演会「グローバリゼーションと格差問題:経済学の観点から」(演者:2名の評論家)では、教室の使用が許可。

        一方、法学部Cゼミ生の講演会「格差問題と憲法」では、教室の使用が不許可。
    
    不許可された法学部Cゼミ生の講演会
    プログラム
    1 「B県 次年度以降の財政の在り方 社会福祉関係費の削減について」
      〇知事の施策方針に賛成する県議会議員
      〇知事の施策方針に反対する県議会議員
    2 「今回のデモ行進の不許可処分について」
      〇B県立大学法学部C教授(憲法ゼミナールCゼミ担当)


   大学の不許可の理由
   :大学側は,Aらが中心となって行ったデモ行進が県条例に違反すること,ニュースで流されたAの発言は県政批判に当たるものであること,また講演者が政治家であることから,Cゼミ主催の講演会は政治的色彩が強いと判断した。



 皆様は、いかがお考えですか?

 法学部Cゼミ生の講演会「格差問題と憲法」は、学問ではないのだろうか?

 県議会議員の講演は学問とは、言えないだろうか?




 もちろん、

 〇部分社会論
  「大学は、一般市民社会とは異なる特殊な部分社会を形成している。大学の行為は、他にそれが一般市民法秩序と直接の関係を有するものであることを是認するに足りる特段の事情のない限り、純然たる大学内部の問題として大学の自主的、自律的な判断に委ねられるべきものであって、司法審査の対象にならない。」
 
 〇学問の自由が保障されているのは、教授であって、学生ではない

 の議論をクリアーした先の議論として。


*****法務省ホームページ******************
http://www.moj.go.jp/content/000111057.pdf

[公法系科目]
〔第1問〕(配点:100)

 Aは,B県が設置・運営するB県立大学法学部の学生で,C教授が担当する憲法ゼミナール(以下
「Cゼミ」という。)を履修している。Cゼミの202*年度のテーマは,「人間の尊厳と格差問題」
である。Cゼミ生は,C教授の承諾も得て,ゼミの研究活動の一環として貧富の格差の拡大に関して
多くの県民と議論することを目的としたシンポジウム「格差問題を考える」を県民会館で開催した。
そのシンポジウムでの活発な意見交換を経て,「格差の是正」を訴える一連のデモ行進を行うことに
なった。そのデモ行進については,Cゼミ生を中心として実行委員会が組織され,Aがその委員長に
選ばれた。実行委員会は,第1回目のデモ行進を202*年8月25日(日)に行うこととして,ツ
イッター等を通じて参加を呼び掛けたところ,参加希望者は約1000人となった。そこで,Aは,
主催者として,B県集団運動に関する条例第2条(【参考資料1】参照)の定めにより,B県の県庁
所在地であるB市の金融街から市役所,県庁に至る片道約2キロメートルの幹線道路を約1000
人の参加者が往復するデモ行進許可申請書を提出した。デモ行進が行われる幹線道路沿いには多く
の飲食店があり,市の中心部にある県庁や市役所の周りは県内最大の商業ゾーンでもある。B県公安
委員会は,デモ行進は片側2車線の車道の歩道寄りの1車線内のみを使うことという条件付きで許
可した。

 第1回目のデモ行進の当日,Aら実行委員会は,デモ参加者に対し,デモ行進中は拡声器等を使用
しないこと,また,ビラの類は配らず,ゴミを捨てないようにすることを徹底させた。第1回目のデ
モ行進は,若干の飲食店から売上げが減少したとの県への苦情があったが,その他は特に問題を起こ
すことなく終えた。そこで,Aら実行委員会は,第2回目のデモ行進を同年9月21日(土)に,第
1回目と同じ計画で行うこととし,同月5日(木)にデモ行進の許可申請を行った。これに対し,B
県公安委員会は,第1回目と同様の条件を付けて許可した。

 B県では,次年度以降の財政の在り方をめぐり,社会福祉関係費の削減を中心として,知事と県議
会が激しく対立していた。知事は,同月13日(金)に,B県住民投票に関する条例(【参考資料2】
参照)第4条第3項に基づき,「社会福祉関係費の削減の是非」を付議事項として住民投票を発議し,
翌10月13日(日)に住民投票を実施することとした。

 第2回目のデモ行進も,拡声器等を使用せず,ビラの類も配らずに無事終了した。ただし,住民投
票実施ということもあって参加者は2000人近くに達し,「県の社会福祉関係費の削減に反対」と
いう横断幕やプラカードを掲げる参加者もいたし,「社会福祉関係費の削減に反対票を投じよう」と
いうシュプレヒコールもあった。また,デモ行進が行われた道路で交通渋滞が発生したために,幹線
道路に近接した閑静な住宅街の道路を迂回路として使う車が増えた。第2回目のデモ行進終了後,市
民や町内会からは,住宅街で交通事故が起きることへの不安や騒音被害を訴える苦情が県に寄せら
れた。また,第1回目よりも更に多くの飲食店から,デモ行進の影響で飲食店の売上げが減少したと
いう苦情が県に寄せられた。

 Aら実行委員会は,第3回目のデモ行進を同年9月29日(日)に行うことにして,参加予定人員
を2000人とし,その他は第1回目・第2回目と同様の計画で許可申請を行った。しかし,B県公
安委員会は,住民投票日が近づいてきて一層住民の関心が高まっており,第3回目のデモ行進は,市
民の平穏な生活環境を害したり,商業活動に支障を来したりするなど,住民投票運動に伴う弊害を生
ずる蓋然性が高いと判断し,当該デモ行進の実施がB県集団運動に関する条例第3条第1項第4号
に該当するとして,当該申請を不許可とした。

 この不許可処分に抗議するために,Aら実行委員ばかりでなく,デモ行進に参加していた人たち約
200人が,B県庁前に集まった。そこに地元のテレビ局が取材に来ていて,Aがレポーターの質問
に答えて,「第1回のデモ行進と第2回のデモ行進が許可されたのに,第3回のデモ行進が不許可と
されたのは納得がいかない。平和的なデモ行進であるのにもかかわらず,デモ行進を不許可としたこ
とは,県の重要な政策問題に関する意見の表明を封じ込めようとするものであり,憲法上問題があ
る」と発言する映像が,ニュースの中で放映された。そのニュースを,B県立大学学長や副学長も観
ていた。

 AたちCゼミ生は,当初から,学外での活動の締めくくりとして,学内で「格差問題と憲法」をテ
ーマにした講演会の開催を計画していた。デモ行進が不許可になったので学内講演会の計画を具体
化することとなったが,知事の施策方針に賛成する県議会議員と反対する県議会議員を講演者とし
て招き,さらに,今回のデモ行進の不許可処分に関するC教授による講演を加えて,開催することに
した。C教授の了承も得て,Aたちは,Cゼミとして教室使用願を大学に提出した。同じ頃,Cゼミ
主催の講演会とは開催日が異なるが,経済学部のゼミからも,2名の評論家を招いて行う「グローバ
リゼーションと格差問題:経済学の観点から」をテーマとした講演会のための教室使用願が提出さ
れていた。

 B県立大学教室使用規則では,「政治的目的での使用は認めず,教育・研究目的での使用に限り,
これを許可する」と定められている。この規則の下で,同大学は,ゼミ活動目的での申請であり,か
つ,当該ゼミの担当教授が承認していれば教室の使用を許可する,という運用を行っている
。同大学
は,経済学部のゼミからの申請は許可したが,Cゼミからの申請は許可しなかった。大学側は,Aら
が中心となって行ったデモ行進が県条例に違反すること,ニュースで流されたAの発言は県政批判
に当たるものであること,また講演者が政治家であることから,Cゼミ主催の講演会は政治的色彩が
強いと判断した。

 Aは,B県を相手取ってこの2つの不許可処分が憲法違反であるとして,国家賠償訴訟を提起する
ことにした。


〔設問1〕
 あなたがAの訴訟代理人となった場合,2つの不許可処分に関してどのような憲法上の主張を
行うか。
 なお,道路交通法に関する問題並びにB県各条例における条文の漠然性及び過度の広汎性の問
題は論じなくてよい。

〔設問2〕
B県側の反論についてポイントのみを簡潔に述べた上で,あなた自身の見解を述べなさい。


【参考資料1】B県集団運動に関する条例(抜粋)
第1条道路,公園,広場その他屋外の公共の場所において集団による行進若しくは示威運動又は集
会(以下「集団運動」という。)を行おうとするときは,その主催者は予めB県公安委員会の許可
を受けなければならない。
第2条前条の規定による許可の申請は,主催者である個人又は団体の代表者(以下「主催者」とい
う。)から,集団運動を行う日時の72時間前までに次の事項を記載した許可申請書三通を開催地
を管轄する警察署を経由して提出しなければならない。
一主催者の住所,氏名
二集団運動の日時
三集団運動の進路,場所及びその略図
四参加予定団体名及びその代表者の住所,氏名
五参加予定人員
六集団運動の目的及び名称
第3条B県公安委員会は,前条の規定による申請があつたときは,当該申請に係る集団運動が次の
各号のいずれかに該当する場合のほかは,これを許可しなければならない。
一~三(略)
四B県住民投票に関する条例第14条第1項第2号及び第3号に掲げる行為がなされることと
なることが明らかであるとき。
2 B県公安委員会は,次の各号に関し必要な条件を付けることができる。
一,二(略)
三交通秩序維持に関する事項
四集団運動の秩序保持に関する事項
五夜間の静ひつ保持に関する事項
六公共の秩序又は公衆の衛生を保持するためやむを得ない場合の進路,場所又は日時の変更に
関する事項



【参考資料2】B県住民投票に関する条例(抜粋)
第1条この条例は,県政に係る重要事項について,住民に直接意思を確認するための住民投票に
係る基本的事項を定めることにより,住民の県政への参加を推進し,もって県民自治の確立に資
することを目的とする。
第2条住民投票に付することができる県政に係る重要事項(以下「重要事項」という。)は,現在
又は将来の住民の福祉に重大な影響を与え,又は与える可能性のある事項であって,住民の間又
は住民,議会若しくは知事の間に重大な意見の相違が認められる状況その他の事情に照らし,住
民に直接その賛成又は反対を確認する必要があるものとする。
第4条(略)
2 (略)
3 知事は,自ら住民投票を発議し,これを実施することができる。
4 住民投票の期日は,知事が定める。
第14条何人も,住民投票の付議事項に対し賛成又は反対の投票をし,又はしないよう勧誘する
行為(以下「住民投票運動」という。)をするに当たっては,次に掲げる行為をしてはならない。
一買収,脅迫その他不正の手段により住民の自由な意思を拘束し又は干渉する行為
二平穏な生活環境を害する行為
三商業活動に支障を来す行為
2 (略)

以上
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