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現行の国民審査は、最高裁判所裁判官に対する国民審査制度を設けた憲法の趣旨に反するか否か。

2014-05-04 23:00:00 | シチズンシップ教育

 国民審査制度を考える。

 以下、最高裁判所裁判官の罷免に関し、その裁判官が行ってきた判決をレビューして投票した熱心なAさんの権利は、保護されるべきでしょうか。


 平成24年度、司法試験の予備試験の憲法学論述問題からの問題提起です。

 現行の国民審査は、最高裁判所裁判官に対する国民審査制度を設けた憲法の趣旨に反するか否か。

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[憲法]

20**年**月に,衆議院議員総選挙が行われる。その際に,日本国憲法第79条第2項ない
し第4項及び最高裁判所裁判官国民審査法(以下「国民審査法」という。同法については,資料1
参照)に基づき,最高裁判所裁判官の国民審査も行われる。国民審査法第15条によれば,審査人
は,罷免を可とする裁判官については,投票用紙の当該裁判官に対する記載欄に自ら×の記号を記
載し,罷免を可としない裁判官については,投票用紙の当該裁判官に対する記載欄に何らの記載も
しないで,投票しなければならないとされている。

国民審査法第53条及び同条に基づき規定された最高裁判所裁判官国民審査法施行令第26条
(資料2参照)によれば,審査公報に掲載されるのは,審査に付される裁判官の氏名,生年月日及
び経歴並びに最高裁判所において関与した主要な裁判その他審査に関し参考となるべき事項であ
る。

今回の国民審査で審査権を有するAは,審査公報に挙げられていた主要な裁判について,その判
決文にまで当たって審査の対象となる各裁判官の見解を調べ,さらに,各裁判官の経歴等も調べた。
その結果,各裁判官に対するAの評価は,最高裁判所裁判官として適格と判断した裁判官,不適格
と判断した裁判官,そして適格・不適格いずれとも判断できなかった裁判官に分かれた。Aは,不
適格と判断した裁判官に対する記載欄には×の記号を記載し,適格・不適格いずれとも判断できな
かった裁判官に対する記載欄には何も記載せずに投票した。Aは,適格と判断した裁判官に対する
記載欄には○の記号を記載したかったが,国民審査法第15条の規定によって何も記載しないで投
票せざるを得なかった。

Aは,最高裁判所裁判官に対する国民審査制度を設けた憲法の趣旨に照らし,現行の制度には幾
つかの問題があると考えた。Aは,現行の国民審査法を合憲とする1952年の最高裁判所大法廷
判決を知っていたが,国民審査法第36条に基づく訴訟を提起して,上記最高裁判所判例の変更の
必要性も憲法上の主張の一つとして主張しつつ,現行の国民審査制度の是正を図りたいと思った。
以上のことを前提として,以下の各設問に答えなさい。


〔設問1〕
あなたがAの訴訟代理人になった場合,国民審査法第36条に基づく訴訟において,訴訟代理
人としてあなたが行う憲法上の主張を述べなさい。

〔設問2〕
設問1における憲法上の主張に関するあなた自身の見解を,被告側の反論を想定しつつ,述べ
なさい。



【資料1】最高裁判所裁判官国民審査法(昭和22年11月20日法律第136号)(抄録)
第1条最高裁判所の裁判官の任命に関する国民の審査については,この法律の定めるところによる。

第4条衆議院議員の選挙権を有する者は,審査権を有する。

第15条審査人は,投票所において,罷免を可とする裁判官については,投票用紙の当該裁判官に
対する記載欄に自ら×の記号を記載し,罷免を可としない裁判官については,投票用紙の当該裁判
官に対する記載欄に何等の記載をしないで,これを投票箱に入れなければならない。
2 投票用紙には,審査人の氏名を記載することができない。

第30条審査会は,中央選挙管理会の指定した場所で,これを開く。
2 審査長は,審査権を有する者の中から中央選挙管理会の選任した者を以て,これに充てる。
3 審査長は,審査会に関する事務を担任する。
4 審査長は,第8条の選挙人名簿に登録された者の中から審査立会人3人を選任しなければならな
い。
5 審査長は,すべての審査分会長から前条の報告を受けた日又はその翌日に審査会を開き,審査立
会人立会の上,その報告を調査しなければならない。

第33条第30条第5項の規定による調査を終えたときは,審査長は,直ちに罷免を可とされた裁
判官の氏名並びに罷免を可とする投票の数及び罷免を可としない投票の数その他審査の次第を中央
選挙管理会に報告しなければならない。
2 中央選挙管理会は,前項の報告を受けたときは,直ちに罷免を可とされた裁判官にその旨を告知
し,同時に罷免を可とされた裁判官の氏名を官報で告示し,かつ,総務大臣を通じ内閣総理大臣に
通知しなければならない。

第36条審査の効力に関し異議があるときは,審査人又は罷免を可とされた裁判官は,中央選挙管
理会を被告として第33条第2項の規定による告示のあつた日から30日内に東京高等裁判所に訴
えを提起することができる。

第53条都道府県の選挙管理委員会は,政令の定めるところにより,審査に付される裁判官の氏名,
経歴その他審査に関し参考となるべき事項を掲載した審査公報を発行しなければならない。

【資料2】最高裁判所裁判官国民審査法施行令(昭和23年5月25日政令第122号)(抄録)
第26条審査公報には,審査に付される裁判官の氏名,生年月日及び経歴並びに最高裁判所におい
て関与した主要な裁判その他審査に関し参考となるべき事項を掲載するものとする。


以上


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問題文中の判例
http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?hanreiid=57143&hanreiKbn=02 


事件番号

 昭和24(オ)332



事件名

 最高裁判所裁判官国民審査の効力に関する異議



裁判年月日

 昭和27年02月20日



法廷名

 最高裁判所大法廷



裁判種別

 判決



結果

 棄却



判例集等巻・号・頁

 民集 第6巻2号122頁




原審裁判所名

 東京高等裁判所



原審事件番号





原審裁判年月日

 昭和24年12月05日




判示事項

 一 最高裁判所裁判官国民審査制度の趣旨
二 最高裁判所裁判官国民審査法の合憲性
三 最高裁判所裁判官国民審査の審査公報に「関与した主要な裁判」として記載すべき内容




裁判要旨

 一 最高裁判所裁判官任命に関する国民審査の制度は、国民が裁判官を罷免すべきか否かを決定する趣旨であつて、裁判官の任命を完成させるか否かを審査するものではない。
二 最高裁判所裁判官国民審査法は、憲法第七九条、第一九条、第二一条に違反しない。
三 最高裁判所裁判官国民審査の審査公報には、裁判官の取り扱つた裁判上の意見を具体的に表示せず、ただ事件名のみを記載しても、最高裁判所裁判官国民審査法施行令第二六条に反しない。




参照法条

 憲法79条1項,憲法79条4項,憲法15条,憲法19条,憲法21条,最高裁判所裁判官国民審査法(昭和22年法律136号)15条,最高裁判所裁判官国民審査法(昭和22年法律136号)32条,最高裁判所裁判官国民審査法(昭和22年法律136号),最高裁判所裁判官国民審査法施行令(昭和23年政令122号)26条

判決文全文→ http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/js_20100319124143795419.pdf  

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