少年法は、たとえ犯罪をおかした少年であっても、そのプライバシーを保護するため、少年法61条に特別の規定を置いています。
(記事等の掲載の禁止)
第六十一条 家庭裁判所の審判に付された少年又は少年のとき犯した罪により公訴を提起された者については、氏名、年齢、職業、住居、容ぼう等によりその者が当該事件の本人であることを推知することができるような記事又は写真を新聞紙その他の出版物に掲載してはならない。
以下、事案で、どのように少年法61条が適用されたか。
<事案>
本件は,上告人が発行した週刊誌に掲載された記事により,名誉を毀損され
,プライバシーを侵害されたとする被上告人が,上告人に対し,不法行為に基づく
損害賠償を求めている事件である。
原審が確定した事実関係の概要等は,次のとおりである。
(1) 被上告人(昭和50年10月生まれ)は,平成6年9月から10月にかけて
,成人又は当時18歳,19歳の少年らと共謀の上,連続して犯した殺人,強盗殺
人,死体遺棄等の4つの事件により起訴され,刑事裁判を受けている刑事被告人で
ある。
上告人は,図書及び雑誌の出版等を目的とする株式会社であり,「週刊文春」と
題する週刊誌を発行している。
(2) 上告人は,名古屋地方裁判所に上記各事件の刑事裁判の審理が係属してい
た平成9年7月31日発売の「週刊文春」誌上に,第1審判決添付の別紙二のとお
り,「『少年犯』残虐」「法廷メモ独占公開」などという表題の下に,事件の被害
者の両親の思いと法廷傍聴記等を中心にした記事(以下「本件記事」という。)を
掲載したが,その中に,被上告人について,仮名を用いて,法廷での様子,犯行態
様の一部,経歴や交友関係等を記載した部分がある。
<名古屋高裁の判断>
本件記事は,少年法61条が禁止する推知報道であり,事件当時18歳で
あった被上告人が当該事件の本人と推知されない権利ないし法的利益よりも,明ら
かに社会的利益の擁護が強く優先される特段の事情を認めるに足りる証拠は存しな
いから,本件記事を週刊誌に掲載した上告人は,不法行為責任を免れない。
→被上告人の損害賠償請求を一部認容すべきものとした。
<最高裁判所の判断>
上告人の本件記事の掲載行為は,被上告人の名誉を毀損し,プライ
バシーを侵害するものであるとした原審の判断は,その限りにおいて是認すること
ができる。
なお,【要旨1】少年法61条に違反する推知報道かどうかは,その記事等によ
り,不特定多数の一般人がその者を当該事件の本人であると推知することができる
かどうかを基準にして判断すべきところ,本件記事は,被上告人について,当時の
実名と類似する仮名が用いられ,その経歴等が記載されているものの,被上告人と
特定するに足りる事項の記載はないから,被上告人と面識等のない不特定多数の一
般人が,本件記事により,被上告人が当該事件の本人であることを推知することが
できるとはいえない。したがって,本件記事は,少年法61条の規定に違反するも
のではない。
→原判決文中上告人の敗訴部分を破棄する。
前項の部分につき本件を名古屋高等裁判所に差し戻す。
*******最高裁ホームページより******
http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?hanreiid=52287&hanreiKbn=02
事件番号
平成12(受)1335
事件名
損害賠償請求事件
裁判年月日
平成15年03月14日
法廷名
最高裁判所第二小法廷
裁判種別
判決
結果
破棄差戻し
判例集等巻・号・頁
民集 第57巻3号229頁
原審裁判所名
名古屋高等裁判所
原審事件番号
平成11(ネ)648
原審裁判年月日
平成12年06月29日
判示事項
1 少年法61条が禁止しているいわゆる推知報道に当たるか否かの判断基準
2 犯行時少年であった者の犯行態様,経歴等を記載した記事を実名類似の仮名を用いて週刊誌に掲載したことにつき名誉又はプライバシーの侵害による損害賠償責任を肯定した原審の判断に被侵害利益ごとに違法性阻却事由の有無を審理判断しなかった違法があるとされた事例
裁判要旨
1 少年法61条が禁止しているいわゆる推知報道に当たるか否かは,その記事等により,不特定多数の一般人がその者を当該事件の本人であると推知することができるかどうかを基準にして判断すべきである。
2 犯行時少年であった者の犯行態様,経歴等を記載した記事を実名類似の仮名を用いて週刊誌に掲載したことにつき,その記事が少年法61条に違反するとした上,同条により保護される少年の権利ないし法的利益より明らかに社会的利益の擁護が優先する特段の事情がないとして,直ちに,名誉又はプライバシーの侵害による損害賠償責任を肯定した原審の判断には,被侵害利益ごとに違法性阻却事由の有無を個別具体的に審理判断しなかった違法がある。
参照法条
少年法61条,民法709条,民法710条
判決文全文
http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/js_20100319120651692369.pdf
(記事等の掲載の禁止)
第六十一条 家庭裁判所の審判に付された少年又は少年のとき犯した罪により公訴を提起された者については、氏名、年齢、職業、住居、容ぼう等によりその者が当該事件の本人であることを推知することができるような記事又は写真を新聞紙その他の出版物に掲載してはならない。
以下、事案で、どのように少年法61条が適用されたか。
<事案>
本件は,上告人が発行した週刊誌に掲載された記事により,名誉を毀損され
,プライバシーを侵害されたとする被上告人が,上告人に対し,不法行為に基づく
損害賠償を求めている事件である。
原審が確定した事実関係の概要等は,次のとおりである。
(1) 被上告人(昭和50年10月生まれ)は,平成6年9月から10月にかけて
,成人又は当時18歳,19歳の少年らと共謀の上,連続して犯した殺人,強盗殺
人,死体遺棄等の4つの事件により起訴され,刑事裁判を受けている刑事被告人で
ある。
上告人は,図書及び雑誌の出版等を目的とする株式会社であり,「週刊文春」と
題する週刊誌を発行している。
(2) 上告人は,名古屋地方裁判所に上記各事件の刑事裁判の審理が係属してい
た平成9年7月31日発売の「週刊文春」誌上に,第1審判決添付の別紙二のとお
り,「『少年犯』残虐」「法廷メモ独占公開」などという表題の下に,事件の被害
者の両親の思いと法廷傍聴記等を中心にした記事(以下「本件記事」という。)を
掲載したが,その中に,被上告人について,仮名を用いて,法廷での様子,犯行態
様の一部,経歴や交友関係等を記載した部分がある。
<名古屋高裁の判断>
本件記事は,少年法61条が禁止する推知報道であり,事件当時18歳で
あった被上告人が当該事件の本人と推知されない権利ないし法的利益よりも,明ら
かに社会的利益の擁護が強く優先される特段の事情を認めるに足りる証拠は存しな
いから,本件記事を週刊誌に掲載した上告人は,不法行為責任を免れない。
→被上告人の損害賠償請求を一部認容すべきものとした。
<最高裁判所の判断>
上告人の本件記事の掲載行為は,被上告人の名誉を毀損し,プライ
バシーを侵害するものであるとした原審の判断は,その限りにおいて是認すること
ができる。
なお,【要旨1】少年法61条に違反する推知報道かどうかは,その記事等によ
り,不特定多数の一般人がその者を当該事件の本人であると推知することができる
かどうかを基準にして判断すべきところ,本件記事は,被上告人について,当時の
実名と類似する仮名が用いられ,その経歴等が記載されているものの,被上告人と
特定するに足りる事項の記載はないから,被上告人と面識等のない不特定多数の一
般人が,本件記事により,被上告人が当該事件の本人であることを推知することが
できるとはいえない。したがって,本件記事は,少年法61条の規定に違反するも
のではない。
→原判決文中上告人の敗訴部分を破棄する。
前項の部分につき本件を名古屋高等裁判所に差し戻す。
*******最高裁ホームページより******
http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?hanreiid=52287&hanreiKbn=02
事件番号
平成12(受)1335
事件名
損害賠償請求事件
裁判年月日
平成15年03月14日
法廷名
最高裁判所第二小法廷
裁判種別
判決
結果
破棄差戻し
判例集等巻・号・頁
民集 第57巻3号229頁
原審裁判所名
名古屋高等裁判所
原審事件番号
平成11(ネ)648
原審裁判年月日
平成12年06月29日
判示事項
1 少年法61条が禁止しているいわゆる推知報道に当たるか否かの判断基準
2 犯行時少年であった者の犯行態様,経歴等を記載した記事を実名類似の仮名を用いて週刊誌に掲載したことにつき名誉又はプライバシーの侵害による損害賠償責任を肯定した原審の判断に被侵害利益ごとに違法性阻却事由の有無を審理判断しなかった違法があるとされた事例
裁判要旨
1 少年法61条が禁止しているいわゆる推知報道に当たるか否かは,その記事等により,不特定多数の一般人がその者を当該事件の本人であると推知することができるかどうかを基準にして判断すべきである。
2 犯行時少年であった者の犯行態様,経歴等を記載した記事を実名類似の仮名を用いて週刊誌に掲載したことにつき,その記事が少年法61条に違反するとした上,同条により保護される少年の権利ないし法的利益より明らかに社会的利益の擁護が優先する特段の事情がないとして,直ちに,名誉又はプライバシーの侵害による損害賠償責任を肯定した原審の判断には,被侵害利益ごとに違法性阻却事由の有無を個別具体的に審理判断しなかった違法がある。
参照法条
少年法61条,民法709条,民法710条
判決文全文
http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/js_20100319120651692369.pdf