「中央区を、子育て日本一の区へ」こども元気クリニック・病児保育室  小児科医 小坂和輝のblog

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現行国民審査が違憲として論ずる場合の違憲審査基準をどう立てるか。

2014-05-10 23:00:00 | シチズンシップ教育
 あらためて、大きな一歩となった判決と思いました。

 在外日本人選挙権制限規定違憲判決。


 用いられた合憲性の判断基準:

 目的:「やむを得ない事由」があるか

 手段:「やむを得ない事由があるから」やらない

 目的手段審査を用いるが、目的の部分、すなわち「やむを得ない事由」があるかどうかだけ審査し、「ある」なら、自動的に「手段としてやらないこと」は合憲。「ない」なら、「手段としてやらない」ことは違憲。


 具体的には、

憲法の以上の趣旨にかんがみれば,自ら選挙の公正を害する行為をした者等の選
挙権について一定の制限をすることは別として,国民の選挙権又はその行使を制限
することは原則として許されず,国民の選挙権又はその行使を制限するためには,
そのような制限をすることがやむを得ないと認められる事由がなければならないと
いうべきである。そして,そのような制限をすることなしには選挙の公正を確保し
つつ選挙権の行使を認めることが事実上不能ないし著しく困難であると認められる
場合でない限り,上記のやむを得ない事由があるとはいえず,このような事由なし
に国民の選挙権の行使を制限することは,憲法15条1項及び3項,43条1項並
びに44条ただし書に違反するといわざるを得ない。また,このことは,国が国民
の選挙権の行使を可能にするための所要の措置を執らないという不作為によって国
民が選挙権を行使することができない場合についても,同様である。



 上記判断基準を用いて、実際に違憲にした箇所の全文→判決文の「第2」の部分です。



 実は、ブログ(2014-05-04 23:00:00 http://blog.goo.ne.jp/kodomogenki/e/b2e7bae5aa0bfd42e729d264e58f72a7)で、問題提起した現行の最高裁判所裁判官の国民審査の手法も、よりよいやり方があるのではと考えるところです。なぜならば、現行国民審査では、「適格と判断した裁判官に対する記載欄には○の記号を記載したかったが,国民審査法第15条の規定によって何も記載しないで投票せざるを得ない」のであり、このことは、思想良心の自由(憲法19条)や、表現の自由(憲法21条1項)及び公務員の選定する権利(憲法15条1項)を侵害しているからです。
 よりよいやりかたがあるのにやらないで現行国民審査を続けることが違憲であるとして論ずるには、この判決が使えると思いました。




**********判決文の「第2」の部分の抜粋****************************

 第2 在外国民の選挙権の行使を制限することの憲法適合性について

 1 国民の代表者である議員を選挙によって選定する国民の権利は,国民の国政
への参加の機会を保障する基本的権利として,議会制民主主義の根幹を成すもので
あり,民主国家においては,一定の年齢に達した国民のすべてに平等に与えられる
べきものである。
 憲法は,前文及び1条において,主権が国民に存することを宣言し,国民は正当
に選挙された国会における代表者を通じて行動すると定めるとともに,43条1項
において,国会の両議院は全国民を代表する選挙された議員でこれを組織すると定
め,15条1項において,公務員を選定し,及びこれを罷免することは,国民固有
の権利であると定めて,国民に対し,主権者として,両議院の議員の選挙において
投票をすることによって国の政治に参加することができる権利を保障している。そ
して,憲法は,同条3項において,公務員の選挙については,成年者による普通選
挙を保障すると定め,さらに,44条ただし書において,両議院の議員の選挙人の
資格については,人種,信条,性別,社会的身分,門地,教育,財産又は収入によ
って差別してはならないと定めている。以上によれば,憲法は,国民主権の原理に
基づき,両議院の議員の選挙において投票をすることによって国の政治に参加する
ことができる権利を国民に対して固有の権利として保障しており,その趣旨を確た
るものとするため,国民に対して投票をする機会を平等に保障しているものと解す
るのが相当である。
 憲法の以上の趣旨にかんがみれば,自ら選挙の公正を害する行為をした者等の選
挙権について一定の制限をすることは別として,国民の選挙権又はその行使を制限
することは原則として許されず,国民の選挙権又はその行使を制限するためには,
そのような制限をすることがやむを得ないと認められる事由がなければならないと
- 4 -
いうべきである。そして,そのような制限をすることなしには選挙の公正を確保し
つつ選挙権の行使を認めることが事実上不能ないし著しく困難であると認められる
場合でない限り,上記のやむを得ない事由があるとはいえず,このような事由なし
に国民の選挙権の行使を制限することは,憲法15条1項及び3項,43条1項並
びに44条ただし書に違反するといわざるを得ない。また,このことは,国が国民
の選挙権の行使を可能にするための所要の措置を執らないという不作為によって国
民が選挙権を行使することができない場合についても,同様である。
 在外国民は,選挙人名簿の登録について国内に居住する国民と同様の被登録資格
を有しないために,そのままでは選挙権を行使することができないが,憲法によっ
て選挙権を保障されていることに変わりはなく,国には,選挙の公正の確保に留意
しつつ,その行使を現実的に可能にするために所要の措置を執るべき責務があるの
であって,選挙の公正を確保しつつそのような措置を執ることが事実上不能ないし
著しく困難であると認められる場合に限り,当該措置を執らないことについて上記
のやむを得ない事由があるというべきである。

 2 本件改正前の公職選挙法の憲法適合性について

 前記第1の2(2)のとおり,本件改正前の公職選挙法の下においては,在外国民
は,選挙人名簿に登録されず,その結果,投票をすることができないものとされて
いた。これは,在外国民が実際に投票をすることを可能にするためには,我が国の
在外公館の人的,物的態勢を整えるなどの所要の措置を執る必要があったが,その
実現には克服しなければならない障害が少なくなかったためであると考えられる。
 記録によれば,内閣は,昭和59年4月27日,「我が国の国際関係の緊密化に
伴い,国外に居住する国民が増加しつつあることにかんがみ,これらの者について
選挙権行使の機会を保障する必要がある」として,衆議院議員の選挙及び参議院議
員の選挙全般についての在外選挙制度の創設を内容とする「公職選挙法の一部を改
- 5 -
正する法律案」を第101回国会に提出したが,同法律案は,その後第105回国
会まで継続審査とされていたものの実質的な審議は行われず,同61年6月2日に
衆議院が解散されたことにより廃案となったこと,その後,本件選挙が実施された
平成8年10月20日までに,在外国民の選挙権の行使を可能にするための法律改
正はされなかったことが明らかである。世界各地に散在する多数の在外国民に選挙
権の行使を認めるに当たり,公正な選挙の実施や候補者に関する情報の適正な伝達
等に関して解決されるべき問題があったとしても,既に昭和59年の時点で,選挙
の執行について責任を負う内閣がその解決が可能であることを前提に上記の法律案
を国会に提出していることを考慮すると,同法律案が廃案となった後,国会が,1
0年以上の長きにわたって在外選挙制度を何ら創設しないまま放置し,本件選挙に
おいて在外国民が投票をすることを認めなかったことについては,やむを得ない事
由があったとは到底いうことができない。そうすると,【要旨1】本件改正前の公
職選挙法が,本件選挙当時,在外国民であった上告人らの投票を全く認めていなか
ったことは,憲法15条1項及び3項,43条1項並びに44条ただし書に違反す
るものであったというべきである。

 3 本件改正後の公職選挙法の憲法適合性について

 本件改正は,在外国民に国政選挙で投票をすることを認める在外選挙制度を設け
たものの,当分の間,衆議院比例代表選出議員の選挙及び参議院比例代表選出議員
の選挙についてだけ投票をすることを認め,衆議院小選挙区選出議員の選挙及び参
議院選挙区選出議員の選挙については投票をすることを認めないというものである。
この点に関しては,投票日前に選挙公報を在外国民に届けるのは実際上困難であり
,在外国民に候補者個人に関する情報を適正に伝達するのが困難であるという状況
の下で,候補者の氏名を自書させて投票をさせる必要のある衆議院小選挙区選出議
員の選挙又は参議院選挙区選出議員の選挙について在外国民に投票をすることを認
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めることには検討を要する問題があるという見解もないではなかったことなどを考
慮すると,初めて在外選挙制度を設けるに当たり,まず問題の比較的少ない比例代
表選出議員の選挙についてだけ在外国民の投票を認めることとしたことが,全く理
由のないものであったとまでいうことはできない。しかしながら,本件改正後に在
外選挙が繰り返し実施されてきていること,通信手段が地球規模で目覚ましい発達
を遂げていることなどによれば,在外国民に候補者個人に関する情報を適正に伝達
することが著しく困難であるとはいえなくなったものというべきである。また,参
議院比例代表選出議員の選挙制度を非拘束名簿式に改めることなどを内容とする公
職選挙法の一部を改正する法律(平成12年法律第118号)が平成12年11月
1日に公布され,同月21日に施行されているが,この改正後は,参議院比例代表
選出議員の選挙の投票については,公職選挙法86条の3第1項の参議院名簿登載
者の氏名を自書することが原則とされ,既に平成13年及び同16年に,在外国民
についてもこの制度に基づく選挙権の行使がされていることなども併せて考えると
,【要旨2】遅くとも,本判決言渡し後に初めて行われる衆議院議員の総選挙又は
参議院議員の通常選挙の時点においては,衆議院小選挙区選出議員の選挙及び参議
院選挙区選出議員の選挙について在外国民に投票をすることを認めないことについ
て,やむを得ない事由があるということはできず,公職選挙法附則8項の規定のう
ち,在外選挙制度の対象となる選挙を当分の間両議院の比例代表選出議員の選挙に
限定する部分は,憲法15条1項及び3項,43条1項並びに44条ただし書に違
反するものといわざるを得ない。




******最高裁ホームページより******
http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?hanreiid=52338&hanreiKbn=02

事件番号

 平成13(行ツ)82



事件名

 在外日本人選挙権剥奪違法確認等請求事件



裁判年月日

 平成17年09月14日



法廷名

 最高裁判所大法廷



裁判種別

 判決



結果

 その他



判例集等巻・号・頁

 民集 第59巻7号2087頁




原審裁判所名

 東京高等裁判所



原審事件番号

 平成11(行コ)253



原審裁判年月日

 平成12年11月08日




判示事項

1 公職選挙法(平成10年法律第47号による改正前のもの)が在外国民の国政選挙における投票を平成8年10月20日に施行された衆議院議員の総選挙当時全く認めていなかったことと憲法15条1項,3項,43条1項,44条ただし書
2 公職選挙法附則8項の規定のうち在外国民に国政選挙における選挙権の行使を認める制度の対象となる選挙を当分の間両議院の比例代表選出議員の選挙に限定する部分と憲法15条1項,3項,43条1項,44条ただし書
3 在外国民が次回の衆議院議員の総選挙における小選挙区選出議員の選挙及び参議院議員の通常選挙における選挙区選出議員の選挙において在外選挙人名簿に登録されていることに基づいて投票をすることができる地位にあることの確認を求める訴えの適否
4 在外国民と次回の衆議院議員の総選挙における小選挙区選出議員の選挙及び参議院議員の通常選挙における選挙区選出議員の選挙において投票をすることができる地位
5 国会議員の立法行為又は立法不作為が国家賠償法1条1項の適用上違法の評価を受ける場合
6 平成8年10月20日に施行された衆議院議員の総選挙までに国会が在外国民の国政選挙における投票を可能にするための立法措置を執らなかったことについて国家賠償請求が認容された事例




裁判要旨

1 平成8年10月20日に施行された衆議院議員の総選挙当時,公職選挙法(平成10年法律第47号による改正前のもの)が,国外に居住していて国内の市町村の区域内に住所を有していない日本国民が国政選挙において投票をするのを全く認めていなかったことは,憲法15条1項,3項,43条1項,44条ただし書に違反する。
2 公職選挙法附則8項の規定のうち,国外に居住していて国内の市町村の区域内に住所を有していない日本国民に国政選挙における選挙権の行使を認める制度の対象となる選挙を当分の間両議院の比例代表選出議員の選挙に限定する部分は,遅くとも,本判決言渡し後に初めて行われる衆議院議員の総選挙又は参議院議員の通常選挙の時点においては,憲法15条1項,3項,43条1項,44条ただし書に違反する。
3 国外に居住していて国内の市町村の区域内に住所を有していない日本国民が,次回の衆議院議員の総選挙における小選挙区選出議員の選挙及び参議院議員の通常選挙における選挙区選出議員の選挙において,在外選挙人名簿に登録されていることに基づいて投票をすることができる地位にあることの確認を求める訴えは,公法上の法律関係に関する確認の訴えとして適法である。
4 国外に居住していて国内の市町村の区域内に住所を有していない日本国民は,次回の衆議院議員の総選挙における小選挙区選出議員の選挙及び参議院議員の通常選挙における選挙区選出議員の選挙において,在外選挙人名簿に登録され ていることに基づいて投票をすることができる地位にある。
5 国会議員の立法行為又は立法不作為は,その立法の内容又は立法不作為が国民に憲法上保障されている権利を違法に侵害するものであることが明白な場合や,国民に憲法上保障されている権利行使の機会を確保するために所要の立法措置を執ることが必要不可欠であり,それが明白であるにもかかわらず,国会が正当な理由なく長期にわたってこれを怠る場合などには,例外的に,国家賠償法1条1項の適用上,違法の評価を受ける。
6 国外に居住していて国内の市町村の区域内に住所を有していない日本国民に国政選挙における選挙権行使の機会を確保するためには,上記国民に上記選挙権の行使を認める制度を設けるなどの立法措置を執ることが必要不可欠であったにもかかわらず,上記国民の国政選挙における投票を可能にするための法律案が廃案となった後,平成8年10月20日の衆議院議員総選挙の施行に至るまで10年以上の長きにわたって国会が上記投票を可能にするための立法措置を執らなかったことは,国家賠償法1条1項の適用上違法の評価を受けるものというべきであり,国は,上記選挙において投票をすることができなかったことにより精神的苦痛を被った上記国民に対し,慰謝料各5000円の支払義務を負う。
(1,2,4~6につき,補足意見,反対意見がある。)




参照法条

 憲法15条1項,憲法15条3項,憲法41条,憲法43条1項,憲法44条,公職選挙法第4章の2 在外選挙人名簿,公職選挙法42条,公職選挙法49条の2,公職選挙法附則8項,公職選挙法(平成12年法律第62号による改正前のもの)21条1項,公職選挙法(平成10年法律第47号による改正前のもの)42条,住民基本台帳法15条1項,行政事件訴訟法4条,国家賠償法1条1項

全文
http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/js_20100319120718970813.pdf
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