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弁護士法72条違反の一例:非弁護士の法律事務の取扱い等の禁止

2014-05-25 23:00:00 | シチズンシップ教育
 弁護士でないものが、法律活動をして罰せられたケース。

 弁護士法72条違反の一例。
 弁護士資格等がない者らが,ビルの所有者から委託を受けて,そのビルの賃借人らと交渉して賃貸借契約を合意解除した上で各室を明け渡させるなどの業務を行った行為について,弁護士法72条違反の罪が成立するとされた事例





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(非弁護士の法律事務の取扱い等の禁止)
第七十二条  弁護士又は弁護士法人でない者は、報酬を得る目的で訴訟事件、非訟事件及び審査請求、異議申立て、再審査請求等行政庁に対する不服申立事件その他一般の法律事件に関して鑑定、代理、仲裁若しくは和解その他の法律事務を取り扱い、又はこれらの周旋をすることを業とすることができない。ただし、この法律又は他の法律に別段の定めがある場合は、この限りでない。

(譲り受けた権利の実行を業とすることの禁止)
第七十三条  何人も、他人の権利を譲り受けて、訴訟、調停、和解その他の手段によつて、その権利の実行をすることを業とすることができない。

(非弁護士との提携等の罪)
第七十七条  次の各号のいずれかに該当する者は、二年以下の懲役又は三百万円以下の罰金に処する。
一  第二十七条(第三十条の二十一において準用する場合を含む。)の規定に違反した者
二  第二十八条(第三十条の二十一において準用する場合を含む。)の規定に違反した者
三  第七十二条の規定に違反した者
四  第七十三条の規定に違反した者




******最高裁ホームページ********************
http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/js_20100319120659936026.pdf
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主文
本件各上告を棄却する。


理由

被告人両名の弁護人笠原静夫の上告趣意は,憲法違反,判例違反をいう点を含
め,実質は単なる法令違反の主張であって,刑訴法405条の上告理由に当たらな
い。

所論にかんがみ,職権で判断する。

原判決及びその是認する第1審判決の認定並びに記録によれば,本件の事実関係
は,次のとおりである。すなわち,不動産売買業等を営むA社(以下「A社」とい
う。)は,ビル及び土地の所有権を取得し,当該ビルの賃借人らをすべて立ち退か
せてビルを解体し,更地にした上で,同社が新たに建物を建築する建築条件付で土
地を売却するなどして利益を上げるという事業を行っていた。A社は,上記事業の
一環として,本件ビルを取得して所有していたが,同ビルには,74名の賃借人
が,その立地条件等を前提に事業用に各室を賃借して,それぞれの業務を行ってい
た。土地家屋の売買業等を営む被告人B社の代表取締役である被告人Cは,同社の
業務に関し,共犯者らと共謀の上,弁護士資格等を有さず,法定の除外事由もない
のに,報酬を得る目的で,業として,A社から,本件ビルについて,上記賃借人ら
との間で,賃貸借契約の合意解除に向けた契約締結交渉を行って合意解除契約を締
結した上で各室を明け渡させるなどの業務を行うことの委託を受けて,これを受任
した。被告人らは,A社から,被告人らの報酬に充てられる分と賃借人らに支払わ
れる立ち退き料等の経費に充てられる分とを合わせた多額の金員を,その割合の明
示なく一括して受領した。そして,被告人らは,本件ビルの賃借人らに対し,被告
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人B社が同ビルの所有者である旨虚偽の事実を申し向けるなどした上,賃借人らに
不安や不快感を与えるような振る舞いもしながら,約10か月にわたり,上記74
名の賃借人関係者との間で,賃貸借契約を合意解除して賃貸人が立ち退き料の支払
義務を負い,賃借人が一定期日までに部屋を明け渡す義務を負うこと等を内容とす
る契約の締結に応じるよう交渉して,合意解除契約を締結するなどした。

所論は,A社と各賃借人との間においては,法律上の権利義務に争いや疑義が存
するなどの事情はなく,被告人らが受託した業務は弁護士法72条にいう「その他
一般の法律事件」に関するものではないから,同条違反の罪は成立しないという。

しかしながら,被告人らは,多数の賃借人が存在する本件ビルを解体するため全賃
借人の立ち退きの実現を図るという業務を,報酬と立ち退き料等の経費を割合を明
示することなく一括して受領し受託したものであるところ,このような業務は,賃
貸借契約期間中で,現にそれぞれの業務を行っており,立ち退く意向を有していな
かった賃借人らに対し,専ら賃貸人側の都合で,同契約の合意解除と明渡しの実現
を図るべく交渉するというものであって,立ち退き合意の成否,立ち退きの時期,
立ち退き料の額をめぐって交渉において解決しなければならない法的紛議が生ずる
ことがほぼ不可避である案件に係るものであったことは明らかであり,弁護士法7
2条にいう「その他一般の法律事件」に関するものであったというべきである
。そ
して,被告人らは,報酬を得る目的で,業として,上記のような事件に関し,賃借
人らとの間に生ずる法的紛議を解決するための法律事務の委託を受けて,前記のよ
うに賃借人らに不安や不快感を与えるような振る舞いもしながら,これを取り扱っ
たのであり,被告人らの行為につき弁護士法72条違反の罪の成立を認めた原判断
は相当である。
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よって,刑訴法414条,386条1項3号により,裁判官全員一致の意見で,
主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官宮川光治裁判官櫻井龍子裁判官金築誠志裁判官
横田尤孝裁判官白木勇)


http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?hanreiid=80472&hanreiKbn=02

事件番号

 平成21(あ)1946



事件名

 弁護士法違反被告事件



裁判年月日

 平成22年07月20日



法廷名

 最高裁判所第一小法廷



裁判種別

 決定



結果

 棄却



判例集等巻・号・頁

 刑集 第64巻5号793頁




原審裁判所名

 東京高等裁判所



原審事件番号

 平成21(う)357



原審裁判年月日

 平成21年10月21日




判示事項

 弁護士資格等がない者らが,ビルの所有者から委託を受けて,そのビルの賃借人らと交渉して賃貸借契約を合意解除した上で各室を明け渡させるなどの業務を行った行為について,弁護士法72条違反の罪が成立するとされた事例




裁判要旨

 弁護士資格等がない者らが,ビルの所有者から委託を受けて,そのビルの賃借人らと交渉して賃貸借契約を合意解除した上で各室を明け渡させるなどの業務を行った行為については,その業務が,立ち退き合意の成否等をめぐって交渉において解決しなければならない法的紛議が生ずることがほぼ不可避である案件に係るものであって,弁護士法72条にいう「その他一般の法律事件」に関するものというべきであり,その際,賃借人らに不安や不快感を与えるような振る舞いをしていたなどの本件における具体的事情(判文参照)の下では,同条違反の罪が成立する。




参照法条

 弁護士法72条,弁護士法77条
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