月島三丁目内には、只今、トリトンタワー級超高層が2棟建つ計画が進行中です。そのうちの一棟で、トリトンタワー(X棟194.9m)を抜く規模(199m)となる「月島三丁目北地区第一種市街地再開発事業(以下、本件事業)」について、平成30年3月29日に都市計画原案説明会(18時半より、月島区民センター1階)を中央区が開催し、その後公告・縦覧手続きに入ると先日15日に発表されました。
本件事業は、地権者の皆様の土地・建物所有権を実質的にはまったく異なった区分所有権に変えてしまうことや、たとえ事業に参加したくない地権者であっても法的拘束力をもって域外に出て行かざるを得なくさせてしまうこと、近隣住民の皆様にとっては、区道821号線廃道や、わたし児童遊園の2階移設・縮小(現状515㎡から280㎡)、建設工事に伴う騒音・振動・粉じんや風害・複合日影問題【日影図参照】など日常生活や住環境及び商店街のにぎわいに多大な影響を与えるものとなるにも関わらず、昨年11月に「中央区まちづくり基本条例」に基づく説明会の場で約束された丁寧な説明や、十分な合意形成がなされてきたとは言えない状況にあります。
当会は、一度、3月5日に月島第一小学校の場所をお借りして「月島三丁目地区再開発準備組合(以下、準備組合)」との話し合いの場を企画いたしましたが、開催の一時間半前に突然書面にて欠席される旨を伝えてこられました。中央区から準備組合にご指導をいただき、今回は、その仕切り直しの開催となります。
開催に当たっては、今回は、20日に合意書【文書1】を交わしています。
前もって当会から本件事業に関する問題点【資料1】を、準備組合にお届けしており、それらについて準備組合からご説明をいただきます。29日の都市計画原案説明会を前にして、現状における課題認識や課題解決の考え方等について相互理解が深まれば幸いです。
なお、3月23日(金)17時半、準備組合から開催に当たっての文書【文書2】が事務局に届けられました。
ご多忙のところ大変恐縮ですが、ご参加賜りたく、お願い申し上げます。
記
1、日時:平成30年3月26日(月)19時00分~20時30分 受付開始18時30分
2、会場:月島区民館 3階 5号室(東京都中央区月島2-8-11)【地図参照】
3、内容:【資料1】「月島三丁目北地区第一種市街地再開発事業の問題点について」に対する準備組合からのご回答・ご説明
*準備組合との話し合い終了後、残った時間は(~21時45分まで)、一級建築士沼野井諭先生ご指導のもと代替案の検討を併せて行います。
【地図参照】
【資料1】「月島三丁目北地区第一種市街地再開発事業の問題点について」
第1、月島三丁目北地区第一種市街地再開発事業の問題点について
1、地上59階建て高さ199m1120戸の超高層計画の必要性について
月島三丁目北地区第一種市街地再開発事業(以下、本件事業)は、地上59階建て高さ199mを予定されていますが、近隣超高層の月島キャピタルゲート(地上53階建て高さ187m703戸)を抜く規模であり、超高層計画の規模の必要性や妥当性に疑問があります。超高層計画の必要性について述べて下さい。
2、事業の採算性と、管理費、修繕積立金などの権利者の高額な負担について
管理費は、権利者だけではなく、借家人も影響を受ける話です。また、事業採算性の観点とも密接に関連します。
すなわち、本件事業の総事業費は、855億円でうち補助金が129億円となります(2月15日環境建設委員会)。この855億円の総事業費は、近隣の再開発の中で最も高額であり、事業採算性において疑問が残ります。総事業費に削減の余地がないのかどうかと、高額となる理由を教えて下さい。
管理費、修繕積立金に関しての概算やその考え方についても教えて下さい。
3、超高層建築物から生じる日影被害、風害などの周辺地域への影響について
環境建設委員会の場で、近接する「月島三丁目南地区第一種市街地再開発事業(以下、南地区事業)」による日影の影響も含めた複合日影の問題が指摘されました。
日影被害、風害などの影響図と、複合日影の図をご提出下さい。
4、建設工事に伴う騒音・振動・粉じん被害について
「ルナガーデン」様に対する貴準備組合による説明会の場で、振動被害について指摘がなされました。近接する地域の皆様への長期間に及ぶ振動被害が生じないか、振動を軽減する工法がとられるかについてご説明下さい。その他、工事に伴う騒音や粉じん対策をご説明下さい。
5、保育教育施設、高齢者施設、公共交通機関等の社会的インフラに及ぼす影響について
児童数の急増に伴うことに起因すると考えられる『月島第一小学校学区変更問題』が中央区議会第一回定例会で生じてきています。12月15日の話し合いにおいて、社会的インフラに及ぼす影響につき、回答が不十分であったこともあり、本件事業によりどの程度の人口が増加し、その構成(年少人口、生産年齢人口、老年人口)はどのようであるか、ご説明下さい。
6、わたし児童遊園の2階への移設の問題点について
12月15日の話し合いの場において、2階への移設により、遊ぶ児童の防犯面での安全性について指摘がありました。
また、2階移設へ児童遊園を改変・縮小(現状515㎡から280㎡)することについて、近隣の児童遊園利用者への説明が足りておりません。どのように説明会など開催し、近隣の皆様への周知と理解を図っていかれるのか等ご説明下さい。中央区議会第一回定例で、すべての区民に「まちづくりに参加する権利」が平等にあることが再確認されたところですが、それら「まちづくりに参加する権利」をどのように権利者でない方々にも保障しようとされているか貴準備組合の考え方を教えて下さい。
7、区道821号線廃道と一部対面通行化の問題点について
環境建設委員会及び中央区議会第一回定例会において、区道廃道が月島1丁目と3丁目の当該エリア全体の交通に影響を与えないかの問題点が指摘され、区側は、「影響が軽微」としながらも影響がでること自体を認めています。
交通に影響が出る場合、道路法上、廃道はできません。影響が出ないとする根拠のご説明をお願いいたします。
区道821号線の一部は、5.45mから9mに拡張するが、その一方で、対面通行化します。その安全性についてや、一方通行のままで解決できないのか「ルナガーデン」での説明会で回答が保留になっている部分につきお答え下さい。
第2、月島三丁目北地区のまちづくりについての住民からの要望について
1、超高層に代わる代替案の検討について
12月15日の話し合いの場において、そもそも貴準備組合から現在提案されている計画案に至る経過について、代替案の検討に関する説明が不十分でした。代替案も含めた本件事業の検討の経緯をご説明いただきたく存じます。
2、準備組合理事らとの住民同士の話し合いの必要性について
「2月5日付貴準備組合より当会宛て文書」で、理事会で検討した結果、貴準備組合の理事を含めた住民同士の話し合いを受けないとの結論に至ったとのことですが、住民同士の話し合いこそ最重要であると考えております。
理事会では、どのような理由から住民同士の話し合いをしないこととなったのか、その経緯を教えて下さい。
第3、12月15日の話し合い以降生じた新たなテーマについて
1、既存保育園と障害者グループホーム移設の問題点
すでに、施行区域内には、保育園と障害者グループホームが存在しています。
保育園(月島3-1-11、1階、2階部分)は、平成21年11月1日に開設された定員30名の認証保育所A型「ポピンズナーサリースクール月島」です。本件事業では、既存保育所部分は住宅となり、定員90名、約700㎡の保育所が、A地区2階に整備となっています。
障害者グループホーム(月島3-1-11、3階・4階部分)は、「社会福祉法人東京都知的障害者育成会」が運営する「ピアつきしま」です。本件事業では、B-1地区に再整備するとなっています。
保育所定員が、本件事業の前後で60名の増員のみで再開発の規模に対しわずかの増加であり、もっと大きな規模でつくれないのかご説明下さい。また、障害者グループホームの再整備による充実の内容を明らかにしてください。
2、「個別利用区制度」の検討について
再開発計画の規模を縮小したり、歴史的な建造物や街並み等を保存する手法として、「個別利用区制度」が「都市再開発法第70条の2」に新設されました。本制度は、代替案として十分に検討に値すると考えます。
検討の有無と検討状況について教えて下さい。
3、月島の路地文化及び商店街のにぎわいの継承と発展について
12月15日の話し合いでは、短時間で終えたため、①月島の路地文化や②西仲通り商店街のにぎわいの継承と発展に向けた取り組みや工事期間における配慮や仮設店舗計画など、議論を深めることができませんでした。
月島の路地文化の継承をどのようにお考えでしょうか。
商店街のにぎわいの継承と発展に向けた取り組みや工事期間における配慮や仮設店舗計画について、どのように商店街の皆様と意見交換していくのでしょうか。工事期間における配慮や仮設店舗計画についての考え方もお示し下さい。
等々
【日影図】
【23日付文書】
【合意書】
長崎市中央卸売市場視察 報告書(注、青果市場である。)
第1、視察の目的
視察の目的は、卸売市場法改正を視野に入れつつ、築地市場等のありかた及び「築地を守る」ための手法について考察を深めることにある。
1、築地市場等の東京都中央卸売市場のありかた
豊洲新市場では、土壌汚染問題が解決されておらず、その一方で、風評被害対策として、ブロガーによる情報発信が行われている。有効な風評被害の対策は、現状における土壌汚染対策の進捗と地下ピットなどのベンゼン・水銀などの空気中の濃度の低下、地下水からのベンゼン・水銀など汚染物質の浄化を、きちんと情報発信していくところにあるが、なされているとは言い難い。土壌汚染が片付かない以上は、豊洲新市場の開設を農林水産省は、認可しないと考えられる。
さらに問題は、『市場問題プロジェクトチーム第一次報告書』でも明らかになってきている豊洲新市場へ移転した場合の開場後の赤字対策の方向性が示されていないことである。このままでは、卸売市場法9条3項3号の「償却に関する計画」が示されていないことより、経営持続性があるとはいえず、この点からも、農林水産省は豊洲新市場の開設認可をしないと考えられる(別紙1)。
視察により、他地区の中央卸売市場が、経営持続性をどのように確保しているかを見て、東京都中央卸売市場のあり方の方向性を見出すことを目的のひとつとする。
2、「築地を守る」ための手法
食文化の街「築地を守る」ためには、その発展の歴史から、場内に卸売市場が存在することが最も合理的かつ有効な手法である。
しかし、小池都知事が、築地を「食のテーマパーク」として打ち出した平成29年6月20日の基本方針において、方針1「築地市場の進化」として、「仲卸の目利きを活かしたセリ・市場内取引を確保・発展」と明記(別紙2)をしておきながら、その実現に向けた動きが、「築地再開発検討会議」含め一向に見られない。「築地再開発検討会議」に市場関係者を入れていない点自体も理解をし難い。
同様の傾向は、中央区にも残念ながら見られ、少なくとも「新しい築地をつくる会」を再開し、今こそ、中央区民の声をまとめ東京都に届けるべきときにも関わらず、届けようとしない。逆に、先日開催の「築地魚河岸」を運営する「中央区都市整備公社」主催による「築地市場移転後(築地市場跡地再開発後)の場外市場地区の今後を考える講演会」において最も大切なスライドのひとつ「築地魚河岸」に関するスライドが配布資料(別紙3)にありながら講演では飛んでしまい(単なる事故ならよいのですが…)、かつ、「築地市場跡地に市場機能を残すこと」に関する議論が十分になされなかったりと消極的姿勢に疑問を感じる。
視察により、中央卸売市場の周辺地域をどのように取り込んで市場を地域の発展の核としようとしているかを見て、「築地を守る」ための有効な手法を見出すことをもうひとつの目的とする。
第2、長崎市中央卸売市場
1、市場施設の概要(別紙4)
所在:〒851-0134 長崎市田中町279番地4
業務開始日:昭和50年7月1日
建設費(昭和50年完成時) 41億6千万円
敷地面積:7.3ha
建物延面積:3.7ha
卸売場棟:3.1ha(鉄骨造一部鉄筋コンクリート造2階建)
卸売場棟内の卸売場に低温卸売施設100㎡×2基有
他に冷蔵庫棟 1412㎡鉄筋コンクリート造2建
駐車場:屋上3714㎡122台、平面18400㎡710台
2、市場の機構
開設者:長崎市(昭和50年6月24日に農林水産省の認可)
卸売業者:2社(長崎大同青果 株式会社、株式会社 長果)
仲卸業者:19社(長崎青果卸業共同組合18社、大長崎青果組合1社)
売買参加者:161名
関連事業者:12業者 13店舗
3、立地
交通:
JR長崎駅から車で30分(約11km)
長崎自動車道 多良見ICより、車で約15分(約7km)
亡塚ICより、車で約5分(約3km)
4、歴史
昭和37年11月~昭和42年7月 青果市場の拡張及び移転の陳情がなされ昭和50年7月に移転。
5、総取扱高(平成28年4月から平成29年3月まで、開業日数262日)
総入荷量:6.9万トン(野菜74%、果実26%) 一日平均 約265トン
総売上金額:168億円(野菜66%、果実34%) 一日平均 約6422万円
(別紙5、『平成29年度 長崎市中央卸売市場年報』 H29.6月より)
第3、長崎市中央卸売市場の課題
1、日本全体の卸売市場の課題
①取扱いの低迷(総流通量減少、卸売市場経由率減少)
②市場間格差拡大
③業界の経営悪化
④公設市場開設者の財政難
⑤施設の老朽化(昭和30~50年代前半に建設され、築30~50年経過)、
⑥施設の陳腐化
品質管理の高度化(定温、低温、超低温の3温度帯の考え方、閉鎖型)
物流の高度化(ピッキング、パッキング昨日、搬送仕分けの自動化など)
卸売場のプラットホーム構造
搬出におけるドックシェルター
などの新しい要請に応えられていない。
⑦小売構造の変化
*スーパーマーケットのシェア拡大とスーパーマーケットへの対応の課題。
すなわち、大口需要者は、計画販売、計画仕入れ、早期購入などの購買行動をとるために、通常の朝のセリ時間帯では対応が間に合わず、取引の早期化、相対取引の増加。
鮮度・品質を重視するため、コールドチェーン体制を要望。
さらに、小分けパッキング、店舗別仕分けのピッキング、納品の要望。
*小売商の減少、来場仕入れ業者(飲食店など)の減少、納品の増加などによる来場者の減少
⑧セリ比率の急減、相対取引主流へ。集荷方法として、買付集荷比率増大。
⑨川上、川下の大型化
*川上:農協系統などの大型出荷団体が出荷先に大きな影響力
*川下:量販店のシェア増加⇒計画的販売への対応、パック加工、定時納品、コールドチェーンへの対応
⑩消費者
高齢化、人口減少と日本経済の縮小、消費者の意識変化
2、卸売市場の役割、卸売市場法改正
(1)卸売市場の役割
①流通コストの縮減による価格の低下
②生鮮食料品の販売における合理性・効率性
③社会的公平性、零細な生産者(出荷者)、小売業者が生計を立てられる場
④迅速確実な代金決済システム
⑤卸売市場間の連帯感の存在
3、卸売市場法改正の方向性
今後も、食品流通の中で卸売市場が果たしてきた集荷・分荷、価格形成、代金決済などの調整機能を重視し、食品流通の核として堅持。
公正な取引の場として、①~⑥の共通の取引ルールを遵守。
①売買取引の方法の公表
②差別的取扱いの禁止
③受託拒否の禁止(中央卸売市場のみ)
④代金決済ルールの策定・公表
⑤取引条件の公表
⑥取引結果の公表
それとともに、
⑦その他の取引ルールを公表する。すなわち、第三者販売の禁止、直荷引きの禁止、商物一致など、卸売市場ごとに、関係者の意見を聴くなど公正な手続きを踏み、共通の取引ルールに反しない範囲において定めることができる。
また、国は、食品等瘤等合理化計画に従って行われる中央卸売市場の整備に対し、予算の範囲内において、その費用の4/10以内を補助できる。
4、長崎市中央卸売市場の課題(別紙7)
取扱量、金額ともに、右肩下がりではあるものの、金額ベースでは、160億円の線を上下し、一方的な後退傾向ではない(別紙7 18頁)。
長崎県の中核的拠点市場(長崎県内シェア約52%、平成20年)であり、今後とも中核的拠点市場としての機能を高めるべく、持続可能な強靭な経営の足腰を確保する体制を取ることが大切。
昭和50年の開設以来、関係者以外立ち入りを禁止としているため、周辺住民はもとより、一般市民の認知度は低い状況となっている。「市民のための卸売市場」への転換には、市場の認知度の向上が喫緊の課題である。
第4、考察
長崎市の市が開設者である中央卸売市場を視察したが、日本全国の卸売市場が右肩下がりで一方的な後退傾向であるなか、健闘をしている。
東京都中央卸売市場も、少子高齢化社会の到来による日本の経済の縮小や食生活の変化から、大規模な中央卸売市場から、コンパクトなサイズへと転換することが求められている。このまま、①経営改善策を立てずに豊洲新市場へ移転すると、将来、市場会計が破たんするリスクが濃厚である。また、②土壌汚染対策が中途半端なまま移転した場合、豊洲ブランドが埋まれるとも考えにくい。③災害時の食料供給拠点ともなりうるとは、盛り土がないことと、土壌汚染対策と相まってなされた液状化対策が確かであることの検証がなされておらず、危機管理体制の点からも、豊洲は不適当である。以上、豊洲新市場移転のリスクを鑑みれば、東京の食を支える小売りにも買い出しが可能である築地の立地をそのまま生かし、市場の中核機能を築地市場に残し、豊洲に冷凍庫や大型物流機能を担わせ、ITなどで築地本場と豊洲市場を結んで補完的な役割を担わせることが、最も理に適っていると考える。もちろん、土壌汚染対策が完了したうえでの豊洲の使用であることは言うまでもない。
コンパクトサイズの中央卸売市場として築地を活かすポイントは、長崎中央卸売市場も取っており、おそらく全ての中央卸売市場での戦略ともなりうる①各市場間のネットワークの構築、②庭先集荷支援、③優良商品の発見と新規商品開発、④産地商人機能の支援、⑤企画・開発部門の設置と強化、⑥仲卸の販売力強化策としての、加工・ピッキング・物流機能の増強(補完市場としての豊洲新市場と連携して)、⑦IT機能の強化、⑧売買参加者の広域勧誘、⑨小売業の経営力強化のための支援強化、⑩卸売市場の多機能化、⑪築地魚河岸とも連携した市場外流通や新しい小売形態の取り込み、例、直売所、朝市、⑫移動販売車の取り込みと商品提供など(別紙7 26・27頁)などが同様に考えられる。そして、それらは、卸売市場法改正に合わせ、強化できる部分がいくつかある。
また、築地に市場機能があり続けることこそが、場外市場をば、市場がなくなった場合の観光地化のみで行く路線から、真に食の街として、今後も発展させていくことが可能となると考える。
東京都の英断と、地元や市場関係者の真の声をどうか中央区が東京都に届け、築地再生のけん引役となることを求めてやまない。
以上
別紙一覧
別紙1、『豊洲新市場への移転問題』180213築地女将さん会
別紙2、「小池知事 記者会見 平成29年6月20日」16頁
別紙3、「築地市場跡地の再開発後を考える」講演会 配布資料
別紙4、『中央卸売市場のしおり』(視察時頂いた資料)
別紙5、『平成29年度 長崎市中央卸売市場年報 H29.6月』(視察時頂いた資料)
別紙6、「卸売市場法及び食品流通構造改善促進法の一部を改正する法律案の概要」及び「同骨子」
別紙7、『長崎市中央卸売市場 経営展望』長崎市中央卸売市場あり方検討委員会H25.3月
第1、視察の目的
視察の目的は、卸売市場法改正を視野に入れつつ、築地市場等のありかた及び「築地を守る」ための手法について考察を深めることにある。
1、築地市場等の東京都中央卸売市場のありかた
豊洲新市場では、土壌汚染問題が解決されておらず、その一方で、風評被害対策として、ブロガーによる情報発信が行われている。有効な風評被害の対策は、現状における土壌汚染対策の進捗と地下ピットなどのベンゼン・水銀などの空気中の濃度の低下、地下水からのベンゼン・水銀など汚染物質の浄化を、きちんと情報発信していくところにあるが、なされているとは言い難い。土壌汚染が片付かない以上は、豊洲新市場の開設を農林水産省は、認可しないと考えられる。
さらに問題は、『市場問題プロジェクトチーム第一次報告書』でも明らかになってきている豊洲新市場へ移転した場合の開場後の赤字対策の方向性が示されていないことである。このままでは、卸売市場法9条3項3号の「償却に関する計画」が示されていないことより、経営持続性があるとはいえず、この点からも、農林水産省は豊洲新市場の開設認可をしないと考えられる(別紙1)。
視察により、他地区の中央卸売市場が、経営持続性をどのように確保しているかを見て、東京都中央卸売市場のあり方の方向性を見出すことを目的のひとつとする。
2、「築地を守る」ための手法
食文化の街「築地を守る」ためには、その発展の歴史から、場内に卸売市場が存在することが最も合理的かつ有効な手法である。
しかし、小池都知事が、築地を「食のテーマパーク」として打ち出した平成29年6月20日の基本方針において、方針1「築地市場の進化」として、「仲卸の目利きを活かしたセリ・市場内取引を確保・発展」と明記(別紙2)をしておきながら、その実現に向けた動きが、「築地再開発検討会議」含め一向に見られない。「築地再開発検討会議」に市場関係者を入れていない点自体も理解をし難い。
同様の傾向は、中央区にも残念ながら見られ、少なくとも「新しい築地をつくる会」を再開し、今こそ、中央区民の声をまとめ東京都に届けるべきときにも関わらず、届けようとしない。逆に、先日開催の「築地魚河岸」を運営する「中央区都市整備公社」主催による「築地市場移転後(築地市場跡地再開発後)の場外市場地区の今後を考える講演会」において最も大切なスライドのひとつ「築地魚河岸」に関するスライドが配布資料(別紙3)にありながら講演では飛んでしまい(単なる事故ならよいのですが…)、かつ、「築地市場跡地に市場機能を残すこと」に関する議論が十分になされなかったりと消極的姿勢に疑問を感じる。
視察により、中央卸売市場の周辺地域をどのように取り込んで市場を地域の発展の核としようとしているかを見て、「築地を守る」ための有効な手法を見出すことをもうひとつの目的とする。
第2、長崎市中央卸売市場
1、市場施設の概要(別紙4)
所在:〒851-0134 長崎市田中町279番地4
業務開始日:昭和50年7月1日
建設費(昭和50年完成時) 41億6千万円
敷地面積:7.3ha
建物延面積:3.7ha
卸売場棟:3.1ha(鉄骨造一部鉄筋コンクリート造2階建)
卸売場棟内の卸売場に低温卸売施設100㎡×2基有
他に冷蔵庫棟 1412㎡鉄筋コンクリート造2建
駐車場:屋上3714㎡122台、平面18400㎡710台
2、市場の機構
開設者:長崎市(昭和50年6月24日に農林水産省の認可)
卸売業者:2社(長崎大同青果 株式会社、株式会社 長果)
仲卸業者:19社(長崎青果卸業共同組合18社、大長崎青果組合1社)
売買参加者:161名
関連事業者:12業者 13店舗
3、立地
交通:
JR長崎駅から車で30分(約11km)
長崎自動車道 多良見ICより、車で約15分(約7km)
亡塚ICより、車で約5分(約3km)
4、歴史
昭和37年11月~昭和42年7月 青果市場の拡張及び移転の陳情がなされ昭和50年7月に移転。
5、総取扱高(平成28年4月から平成29年3月まで、開業日数262日)
総入荷量:6.9万トン(野菜74%、果実26%) 一日平均 約265トン
総売上金額:168億円(野菜66%、果実34%) 一日平均 約6422万円
(別紙5、『平成29年度 長崎市中央卸売市場年報』 H29.6月より)
第3、長崎市中央卸売市場の課題
1、日本全体の卸売市場の課題
①取扱いの低迷(総流通量減少、卸売市場経由率減少)
②市場間格差拡大
③業界の経営悪化
④公設市場開設者の財政難
⑤施設の老朽化(昭和30~50年代前半に建設され、築30~50年経過)、
⑥施設の陳腐化
品質管理の高度化(定温、低温、超低温の3温度帯の考え方、閉鎖型)
物流の高度化(ピッキング、パッキング昨日、搬送仕分けの自動化など)
卸売場のプラットホーム構造
搬出におけるドックシェルター
などの新しい要請に応えられていない。
⑦小売構造の変化
*スーパーマーケットのシェア拡大とスーパーマーケットへの対応の課題。
すなわち、大口需要者は、計画販売、計画仕入れ、早期購入などの購買行動をとるために、通常の朝のセリ時間帯では対応が間に合わず、取引の早期化、相対取引の増加。
鮮度・品質を重視するため、コールドチェーン体制を要望。
さらに、小分けパッキング、店舗別仕分けのピッキング、納品の要望。
*小売商の減少、来場仕入れ業者(飲食店など)の減少、納品の増加などによる来場者の減少
⑧セリ比率の急減、相対取引主流へ。集荷方法として、買付集荷比率増大。
⑨川上、川下の大型化
*川上:農協系統などの大型出荷団体が出荷先に大きな影響力
*川下:量販店のシェア増加⇒計画的販売への対応、パック加工、定時納品、コールドチェーンへの対応
⑩消費者
高齢化、人口減少と日本経済の縮小、消費者の意識変化
2、卸売市場の役割、卸売市場法改正
(1)卸売市場の役割
①流通コストの縮減による価格の低下
②生鮮食料品の販売における合理性・効率性
③社会的公平性、零細な生産者(出荷者)、小売業者が生計を立てられる場
④迅速確実な代金決済システム
⑤卸売市場間の連帯感の存在
3、卸売市場法改正の方向性
今後も、食品流通の中で卸売市場が果たしてきた集荷・分荷、価格形成、代金決済などの調整機能を重視し、食品流通の核として堅持。
公正な取引の場として、①~⑥の共通の取引ルールを遵守。
①売買取引の方法の公表
②差別的取扱いの禁止
③受託拒否の禁止(中央卸売市場のみ)
④代金決済ルールの策定・公表
⑤取引条件の公表
⑥取引結果の公表
それとともに、
⑦その他の取引ルールを公表する。すなわち、第三者販売の禁止、直荷引きの禁止、商物一致など、卸売市場ごとに、関係者の意見を聴くなど公正な手続きを踏み、共通の取引ルールに反しない範囲において定めることができる。
また、国は、食品等瘤等合理化計画に従って行われる中央卸売市場の整備に対し、予算の範囲内において、その費用の4/10以内を補助できる。
4、長崎市中央卸売市場の課題(別紙7)
取扱量、金額ともに、右肩下がりではあるものの、金額ベースでは、160億円の線を上下し、一方的な後退傾向ではない(別紙7 18頁)。
長崎県の中核的拠点市場(長崎県内シェア約52%、平成20年)であり、今後とも中核的拠点市場としての機能を高めるべく、持続可能な強靭な経営の足腰を確保する体制を取ることが大切。
昭和50年の開設以来、関係者以外立ち入りを禁止としているため、周辺住民はもとより、一般市民の認知度は低い状況となっている。「市民のための卸売市場」への転換には、市場の認知度の向上が喫緊の課題である。
第4、考察
長崎市の市が開設者である中央卸売市場を視察したが、日本全国の卸売市場が右肩下がりで一方的な後退傾向であるなか、健闘をしている。
東京都中央卸売市場も、少子高齢化社会の到来による日本の経済の縮小や食生活の変化から、大規模な中央卸売市場から、コンパクトなサイズへと転換することが求められている。このまま、①経営改善策を立てずに豊洲新市場へ移転すると、将来、市場会計が破たんするリスクが濃厚である。また、②土壌汚染対策が中途半端なまま移転した場合、豊洲ブランドが埋まれるとも考えにくい。③災害時の食料供給拠点ともなりうるとは、盛り土がないことと、土壌汚染対策と相まってなされた液状化対策が確かであることの検証がなされておらず、危機管理体制の点からも、豊洲は不適当である。以上、豊洲新市場移転のリスクを鑑みれば、東京の食を支える小売りにも買い出しが可能である築地の立地をそのまま生かし、市場の中核機能を築地市場に残し、豊洲に冷凍庫や大型物流機能を担わせ、ITなどで築地本場と豊洲市場を結んで補完的な役割を担わせることが、最も理に適っていると考える。もちろん、土壌汚染対策が完了したうえでの豊洲の使用であることは言うまでもない。
コンパクトサイズの中央卸売市場として築地を活かすポイントは、長崎中央卸売市場も取っており、おそらく全ての中央卸売市場での戦略ともなりうる①各市場間のネットワークの構築、②庭先集荷支援、③優良商品の発見と新規商品開発、④産地商人機能の支援、⑤企画・開発部門の設置と強化、⑥仲卸の販売力強化策としての、加工・ピッキング・物流機能の増強(補完市場としての豊洲新市場と連携して)、⑦IT機能の強化、⑧売買参加者の広域勧誘、⑨小売業の経営力強化のための支援強化、⑩卸売市場の多機能化、⑪築地魚河岸とも連携した市場外流通や新しい小売形態の取り込み、例、直売所、朝市、⑫移動販売車の取り込みと商品提供など(別紙7 26・27頁)などが同様に考えられる。そして、それらは、卸売市場法改正に合わせ、強化できる部分がいくつかある。
また、築地に市場機能があり続けることこそが、場外市場をば、市場がなくなった場合の観光地化のみで行く路線から、真に食の街として、今後も発展させていくことが可能となると考える。
東京都の英断と、地元や市場関係者の真の声をどうか中央区が東京都に届け、築地再生のけん引役となることを求めてやまない。
以上
別紙一覧
別紙1、『豊洲新市場への移転問題』180213築地女将さん会
別紙2、「小池知事 記者会見 平成29年6月20日」16頁
別紙3、「築地市場跡地の再開発後を考える」講演会 配布資料
別紙4、『中央卸売市場のしおり』(視察時頂いた資料)
別紙5、『平成29年度 長崎市中央卸売市場年報 H29.6月』(視察時頂いた資料)
別紙6、「卸売市場法及び食品流通構造改善促進法の一部を改正する法律案の概要」及び「同骨子」
別紙7、『長崎市中央卸売市場 経営展望』長崎市中央卸売市場あり方検討委員会H25.3月