公文書は、政府だけの問題ではなく、各自治体の問題でも有ります。
森友・加計問題で済ますことなく、どうか、各地自体の重要事項における公文書に目を配って下さい。
中央区や東京都も例外ではありません。
中央区、東京都の担当のジャーナリストの皆様、どうかよろしくお願い申し上げます。
*********朝日新聞****************
(政治断簡)公文書にみる民主主義の成熟度 編集委員・佐藤武嗣
2018年4月23日05時00分
「すべて公務員は、全体の奉仕者であって、一部の奉仕者ではない」。日本国憲法は第15条で公務員の役割をこう定めている。森友・加計問題をめぐる公文書改ざんや、面会記録に知らんぷりを決め込む官僚には、一体どこを見て仕事をしているのかと憤る。
安倍一強を背景に、服従を強いるかのように人事権を振りかざすのが悪いのか。安倍官邸に取り入ろうとする官僚の忖度(そんたく)が悪いのか。いずれにしても、「国民の知る権利」が、ないがしろにされていることだけは確かである。
*
公文書の意義とは何か。2008年に福田内閣で始まった「公文書管理の在り方等に関する有識者会議」の最終報告ではこう説明している。
「国の活動や歴史的事実の正確な記録である『公文書』は、過去・歴史から教訓を学ぶとともに、未来に生きる国民に対する説明責任を果たすために必要不可欠な国民の貴重な共有財産である」
公文書は、権力者のために記すのではない。ましてや権力者や、それを忖度した者が改ざんするのは、国民と民主主義への背信行為だ。
数年前、留学先の米国の大学で、ニクソン大統領を辞任に追い込んだ「ウォーターゲート事件」を特報したワシントン・ポスト紙のボブ・ウッドワード記者の講演を聞いた。「世の中で最も恐ろしいのは何だと思う?」。彼の答えは「Secret government(秘密の政府)」。政府の中で何が起きているのか分からないことほど、民主主義にとって恐ろしいものはないと強調した。
確かに独裁国家は、後世に記録を残す必要もないし、むしろ都合の悪い記録は残したくない。公文書の在り方は、その国の民主主義の成熟度を測る尺度とも言える。
*
政府と公文書。それにメディアはどう向き合うか。権力者は内部記録漏洩(ろうえい)に敏感だ。
ウッドワード氏の講演で、私は「機密文書を入手し、それを報じて国益を損なう可能性がある場合、どう判断するのか」と聞いた。「知ったことは書くのが基本。ペンタゴン・ペーパーズをめぐる司法判断でも保証されている」。それが彼の答えだった。
ペンタゴン・ペーパーズとは、トルーマン政権など4代の政権によるベトナム戦争の政策判断や秘密工作、軍事記録が記された最高機密文書で、ニューヨーク・タイムズ紙が入手して特報した。当時のニクソン政権は記事掲載差し止めを連邦裁判所に要求。これはスピルバーグ監督の映画「ペンタゴン・ペーパーズ」でも描かれている。
「ペンタゴン・ペーパーズの司法判断」とは、連邦最高裁の判決だ。「報道の自由は守られ、政府の機密事項を保有し、国民に公開できる。制限を受けない自由な報道のみが政府の偽りを効果的に暴くことができる」と政府の差し止めを退けた。
ペンタゴン・ペーパーズはメディアの特報から40年を経た11年、最高機密を含む約7千ページが全文開示され、今では誰もが米国立公文書館のホームページで閲覧できる。
森友・加計問題で済ますことなく、どうか、各地自体の重要事項における公文書に目を配って下さい。
中央区や東京都も例外ではありません。
中央区、東京都の担当のジャーナリストの皆様、どうかよろしくお願い申し上げます。
*********朝日新聞****************
(政治断簡)公文書にみる民主主義の成熟度 編集委員・佐藤武嗣
2018年4月23日05時00分
「すべて公務員は、全体の奉仕者であって、一部の奉仕者ではない」。日本国憲法は第15条で公務員の役割をこう定めている。森友・加計問題をめぐる公文書改ざんや、面会記録に知らんぷりを決め込む官僚には、一体どこを見て仕事をしているのかと憤る。
安倍一強を背景に、服従を強いるかのように人事権を振りかざすのが悪いのか。安倍官邸に取り入ろうとする官僚の忖度(そんたく)が悪いのか。いずれにしても、「国民の知る権利」が、ないがしろにされていることだけは確かである。
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公文書の意義とは何か。2008年に福田内閣で始まった「公文書管理の在り方等に関する有識者会議」の最終報告ではこう説明している。
「国の活動や歴史的事実の正確な記録である『公文書』は、過去・歴史から教訓を学ぶとともに、未来に生きる国民に対する説明責任を果たすために必要不可欠な国民の貴重な共有財産である」
公文書は、権力者のために記すのではない。ましてや権力者や、それを忖度した者が改ざんするのは、国民と民主主義への背信行為だ。
数年前、留学先の米国の大学で、ニクソン大統領を辞任に追い込んだ「ウォーターゲート事件」を特報したワシントン・ポスト紙のボブ・ウッドワード記者の講演を聞いた。「世の中で最も恐ろしいのは何だと思う?」。彼の答えは「Secret government(秘密の政府)」。政府の中で何が起きているのか分からないことほど、民主主義にとって恐ろしいものはないと強調した。
確かに独裁国家は、後世に記録を残す必要もないし、むしろ都合の悪い記録は残したくない。公文書の在り方は、その国の民主主義の成熟度を測る尺度とも言える。
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政府と公文書。それにメディアはどう向き合うか。権力者は内部記録漏洩(ろうえい)に敏感だ。
ウッドワード氏の講演で、私は「機密文書を入手し、それを報じて国益を損なう可能性がある場合、どう判断するのか」と聞いた。「知ったことは書くのが基本。ペンタゴン・ペーパーズをめぐる司法判断でも保証されている」。それが彼の答えだった。
ペンタゴン・ペーパーズとは、トルーマン政権など4代の政権によるベトナム戦争の政策判断や秘密工作、軍事記録が記された最高機密文書で、ニューヨーク・タイムズ紙が入手して特報した。当時のニクソン政権は記事掲載差し止めを連邦裁判所に要求。これはスピルバーグ監督の映画「ペンタゴン・ペーパーズ」でも描かれている。
「ペンタゴン・ペーパーズの司法判断」とは、連邦最高裁の判決だ。「報道の自由は守られ、政府の機密事項を保有し、国民に公開できる。制限を受けない自由な報道のみが政府の偽りを効果的に暴くことができる」と政府の差し止めを退けた。
ペンタゴン・ペーパーズはメディアの特報から40年を経た11年、最高機密を含む約7千ページが全文開示され、今では誰もが米国立公文書館のホームページで閲覧できる。