特定秘密保護法が成立したことからすると、近未来において、以下のようなネット規制が始まることも考えておいた方がよいかもしれません。
以下は、司法試験問題であるため、バランスをとったネット規制でありますが、これが、「平和問題と死刑存廃問題に関係する情報」が、「政府情報」と置き換えられると、さあたいへんです。
そしてそれは、特定秘密保護法成立の経過から、ありうるのです。
**************平成20年司法試験 憲法論述問題*****************
(注、現在、フィルタリング・ソフト法は存在していません。仮想事例です。最後の資料1、資料2参照下さい。)
Aは,平和問題と死刑存廃問題に関係する情報を無料で配信するサイト(以下「本件サイト」と
いう。)を運営していた。本件サイトには,戦場における死傷者の無残な画像,拷問を受ける人々の
画像,公開処刑の画像等,見る人に不快感を与える可能性のある画像も掲載されていた。フィルタ
リング・ソフト法施行後,本件サイトに含まれるウェブページの大半が有害情報を含む有害ウェブ
ページとして,かつ本件サイト全体が有害ウェブサイトとして指定された。このため,適合ソフト
を搭載したインターネット接続電子機器では,本件サイト内のすべてのウェブページが閲覧できな
くなった。
Aは,大人ばかりでなく子どもも真実を知った上で問題を考える必要があるという信念のもとで
本件サイトを運営していた。しかも,Aは,見る人に不快感を与える可能性のある画像が表示され
る前に,「次のウェブページには,不快感を与えるかもしれない画像が掲載されています。」という
注意を促す文章を掲げていた。遮断される以前に本件サイトに寄せられていた意見のほとんどは,
画像を見てショックを受けたが,平和や死刑の問題を真剣に考えるようになったというものであっ
た。Aは,子どもが全く見ることができず,18歳以上の者も所定の手続を踏まなければ見ること
ができないことへの対抗策として,適合ソフトが搭載されていても本件サイトを閲覧できるように
するプログラムを開発した上,本件サイトとは別の自分のサイトに同プログラムをアップロードし,
無償でダウンロードできるようにした。
このため,Aは,フィルタリング・ソフト法第17条及び第16条第1項第2号が定める,適合
ソフトの使用目的に沿うべき動作をさせないプログラムを提供する罪に当たるものとして起訴され
た。
〔設問〕
1. あなたがAの弁護人であったとして,裁判においてどのような憲法上の主張を行うか,具体的
に論じなさい。
2. Aの主張に対する検察官の主張を想定しつつ,憲法上の問題点について,あなた自身の見解を
述べなさい。
*******************************************
上記問題の内容自体は、小児科医の自分にとって、難しい問題を突きつけられています。
青少年の保護と表現の自由のぶつかり合いです。
どちらも落とせない。
しかし、判断を下さねばならない。
*************************
<原告側の主張>
1 同法が、検閲にあたり、違憲無効であることについて
憲法21条2項は、検閲を禁止する。
検閲とは、「公権力が、外に発表されるべき思想・表現の内容をあらかじめ審査し、不適当と認められるときは、その発表を禁止する行為で、思想・情報の受領前の抑制だけでなく、思想・情報の発表に重大な抑止的効果を及ぼすような事後規制も含む」(芦部説)。
同法があることで、サイト作成者が、戦争の現場や死刑の現場の情報を、そのまま発信するのではなく、加工し、悲惨な画像の掲載を控えるように行動することが考えられる。
重大な抑止的効果を及ぼす可能性があり、検閲(芦部説)にあたり、違憲である。
2 同法の法律文言の過度の広汎性ゆえ、違憲無効であることについて
同法は、「著しく残虐性を助長する情報」を有害情報とすることとし、内閣府令1条に委任して基準を設けているが、二号二は、「同程度に残虐性を助長するもの」とあり、「同程度」という評価を通じて、評価する側の主観による判断が入る余地を許している。
このことは、規制の範囲があまりにも広汎となり、違憲的に適用される可能性があるということであり、法律文言の過度の広汎性ゆえに無効である。
3 同法が、厳格な審査基準を用いて審査すると、法令違憲であることについて
表現の自由は、憲法21条1項で保障されている。
同法は、表現内容規制であり、有用な情報まで規制の対象として及ぶ可能性があり、表現の自由の保障が及ぶ情報を規制する可能性を有しているため、厳格に審査することが求められる。
すなわち、立法目的は、やむにやまれぬ必要不可欠な公共的利益であり、規制手段は、その公共的利益のみを具体化するように厳格に定められなければならない。
本件では、法の立法目的は、有害情報から子どもを保護し、有害情報にさらされずにネットを使用したいと考える大人の利益に配慮することであり、必要不可欠な公共的利益である。
一方、規制手段は、フィルタリングソフトを原則的に、機器に搭載し、有害情報と指定された情報は、自動的に閲覧できなくさせる方法をとっている。
有害情報と指定されると、そのサイト全体に規制が及び、本来有益な戦争の現場や犯罪の現場の情報であったとしても、フィルタリングソフト搭載機器のひとには、ネット上で届けられなくなるのであり、同法は、公共的利益のみを具体化しているとはいえず、過剰な規制として表現の自由を侵害している。
よって、違憲無効である。
以上、1、2、3から同法は違憲無効であり、同法と不可分な関係にある同法に基づくAの起訴も無効である。
4 同法を、Aに適用することは、違憲であることについて
同法は、Aが開設する本件サイトを、有害ウエブサイトと指定した。
本件サイトは、平和問題と死刑存廃問題に関する情報を無料で配信するサイトであり、戦争における死傷者の無残な画像、拷問を受ける人々の画像、公開処刑の画像等、見る人に不快感を与える可能性のある画像も掲載されてはいるものの、戦争や死刑の悲惨な現実を直視するためにつくられたものであった。
本件サイトは、内閣府令1条2号でいういずれの「著しく残虐性」のある情報には該当はしない。
すると、本件サイトは、有害ウェブサイトにはあたらないにも関わらず指定されたものであり、本件サイトをフィルタリングソフトを搭載した機器から閲覧できなくさせたことは、Aの表現の自由の侵害にあたり、違憲であるとともに、Aは無罪である。
<検察側の主張>
1 同法が、検閲にあたらないことについて
検閲とは、「行政権が主体となって、思想内容等の表現物を対象とし、その全部又は一部の発表の禁止を目的として、対象とされる一定の表現物につき、網羅的一般的に発表前にその内容を審査した上、不適当とみとめるものの発表を禁止すること」をいう(最高裁裁判例)。
本件では、有害情報サイトであっても、フィルタリングソフトを削除すれば、誰もが閲覧可能になるのであり、発表の禁止には該当せず、上記検閲にはあたらない。
また、原告の言う、「事後規制」として、抑制効果を有するものであるとしても、青少年保護のもとなされる以上、その規制は、違憲とまでいう強い抑止効果とは言えない。
2 同法の法律文言の過度の広汎性ではないということについて
内閣府令において、残虐性に関する基準を立て、公正な告知を行っており、その基準の適用においては、審議会を設置し、判断しているのであり、恣意的な裁量権の濫用は入らない。
また、残虐性について、何が該当するかは、条文の趣旨・文言から判断可能であり、文言の不明確性から、委縮効果を生じるものでもない。
よって、過度に広範であることで、違憲であるとは言えない。
3 同法が、合理性の審査基準を用いて審査すると、合憲であることについて
同法が制定されるに至った立法事実として、過度の性的表現、過度の暴力や残虐な表現、犯罪や違法薬物への興味を引き起こすような情報等が子どもに有害な影響を及ぼすことが言われていることがある。
青少年の保護するためには、有害情報への規制がなされることは、やむを得ず、青少年保護を目的とする規制の審査基準は、合理性の審査基準が妥当である。
すなわち、立法目的は、立法目的が重要で、立法目的を達成する手段に合理性があるかを審査し、合理性が認められない場合を違憲とすべきである。
本件では、同法の立法目的は、有害情報から子どもを保護し、有害情報にさらされずにネットを使用したいと考える大人の利益に配慮することであり、必要不可欠な公共的利益であり重要である。
手段は、フィルタリングソフト搭載を機器に義務付けることで、そのフィルタリングソフトが自動的に有害情報を排除し、青少年や見たくない大人への閲覧ができないようにすることであり、目的と手段には、合理的な関連性があると言え、合憲である。
有害情報と指定されたサイトを見たい者は、フィルタリングソフトを削除することの手間が必要となり、また、有害情報と指定されたサイトの情報発信に制限が生じるが、それは、有害情報から青少年を保護するための間接的付随的な制約に過ぎない。
よって、同法は、表現の自由を侵害するものではない。
4 同法を、Aに適用することの、適用合憲について
本件サイトは、審議会を経て、適正な手続きに則って、有害サイトの指定がなされたものである。
Aは、有害サイトである本件サイトのフィルタリングソフトの動作をさせないプログラムを、自らのサイトにアップロードし、無償でダウンロードできるようにしたのであるから、違法プログラムの他人への提供を行ったと言える。
Aの行為は、同法17条に該当し、違法であり、起訴は正当である。
<自分の見解>
1 同法が、検閲にあたるかどうかについて
検閲には、事前抑制だけでなく、事後規制であっても、思想情報の発表に重大な抑止的効果を及ぼすものは、検閲として禁止すべきものと考える。
本件では、残虐なものとして、有害情報に指定されることは、一定程度のひとへのネット上での情報発信がなされないことを意味するから、有害情報との指定をさけるよう表現への委縮効果が働くことは否めない。
ただし、同法は情報の発表自体を禁止するものでなないことや、有害情報と指定されたことを不服として、不服申立てをとる手段など他の取りうる手段もあり、委縮効果の程度もさほど強く働くとは、考えにくく、同法が検閲に当たり違憲とまで断じることはできないと考える。
2 同法の法律文言が、過度の広汎性であるかについて
残虐性の基準において、「同程度に助長するもの」という文言は、同程度のとらえ方が、広汎に定義を広げる可能性をもっており、たとえ、審議会と言う第三者機関が介在したとしても、広汎な文言解釈から、違憲な適用の可能性があることは否めない。
一方で、同法は、著しく残虐な情報が、無防備な青少年に届くことを規制する趣旨のものであり、その目的達成のために残虐性の定義する幅に余裕を持たせることも理解できるところである。
従って、同法は、広汎な解釈がある文言を用いているが、違憲とまでは断じることはできないと考える。
3 同法の「より制限的でない他の選びうる手段」の基準(LRAの基準)を用いた違憲性の判断について
同法では、表現内容規制のため侵害する可能性があり、一方で、青少年保護の規制利益もまた、重要なことはいうまでもない。
規制手段は、同法のような表現内容の規制の場合、その規制が、容易に拡大されることがありうる。
一方、行政の裁量権の幅は、青少年保護という視点からは広いと言えるが、裁判所の司法判断をする裁量権の幅も、その侵害される可能性のある人権が表現の自由であることから広いと言え、その審査をより厳格にするためにも、同法の審査に当たっては、「より制限的でない他の選びうる手段」の基準(LRAの基準)を用いることを妥当と考える。
すなわち、立法目的を達成するため規制の程度のより少ない手段が存在するかどうかを具体的・実質的に審査し、それがありうると解される場合には、当該規制立法を違憲とすべきである。
本件において、同法は、ネットの機器には、すべてのサイトの閲覧を可能とし、それらネットの機器が青少年が使用する目的の場合のものにはフィルタリングソフトの搭載を義務付けることとし、希望する成人も同様にフィルタリングソフトを搭載するという、より制限的でない手段が存在している。
よって、同法には、その目的達成により制限的でない手段がある以上、表現の自由を侵害するものとして、違憲無効であると考える。
以上、3から同法は違憲無効であり、同法と不可分な関係にある同法に基づくAの起訴も無効である。
仮に、同法が、法令違憲でないとしても、適用において違憲であるため、Aは無罪である。
以下、論ずる。
4 同法を、Aに適用することの違憲性について
(1) 同法が適用されてAのサイトを有害ウェブサイトとして指定されており(以下、「適用①」という。)、Aの同法違反の判断に当たっては(以下、「適用②」という。)、前提として、その適用の違憲性の判断がなされねばならないと考える。
なぜならば、有害情報と一見見える情報でも、実際には有益な情報であることがありうるのであり、同法により有害情報と指定をされることで個別具体的に有益な情報の侵害行為がないかを慎重に検討すべきであるからである。
従って、以下、4つの 考慮要素を立て、
①発信者の属性、
②発信者の意図、
③ウェブサイトの目的と内容
④その情報が与える影響
同法の適用①の判断をする。
本件では、
①Aは、平和問題と死刑存廃問題に関する情報を無料で配信するサイトの運営者であり、フィルタリングソフトの削除プログラムを開発・販売等を業とするものではない。
②Aは、本件サイトで、大人ばかりではなく、子どもも真実を知ったうえで、平和問題と死刑存廃問題を考えさせようとしたのであり、残額性のある画像を、意図なく発表していたのではない。
③ウェブサイトは、現実の写真が、発表されていたが、見る人に不快感を与える可能性のある画像が表示される前には、警告文が出るようにし、配慮したうえで、平和問題と死刑存廃問題を考えさせるサイトであった。
④実際に、本件サイトを見た人の感想として、本件サイトに寄せられた意見のほとんどは、画像を見てショックを受けたが、平和や死刑の問題を真剣に考えるようになったというものであった。
以上からすると、本件サイトは、残虐性のある有害情報とは断じ得ず、有害情報として、一律に指定したところに違法があったと言わざるを得ないと考える。同時に、Aとしては、自らの救済手段としては、自らのサイトに対するフィルタリングソフトを解除するソフトをネット上にアップする以外に、取り得る有効な手段がなかったとも言える。
(2)Aのフィルタリングソフト削除のプログラムをアップし、他人に提供した行為は、本来、有益な情報として閲覧されるべきものを、ただ単に閲覧できるようにしたのであって、同法に違反する残虐性のある有害情報サイトを閲覧可能にするものではない。
すると、同法に該当するとして、Aを起訴した同法適用②は、有益な情報を本件サイトから発信するAの表現の自由を著しく侵害しており、適用違憲であるとともに、Aは無罪である。
以上
******************************************
資料1: インターネット上の有害情報からの子どもその他の利用者の保護等を図る
ためのフィルタリング・ソフトウェアの普及の促進に関する法律
目次
第1章総則(第1条-第4条)
第2章適合ソフトウェアの指定及びその搭載義務等(第5条-第12条)
第3章フィルタリング審議会(第13条-第15条)
第4章適合ソフトウェア削除プログラムの提供等の禁止(第16条)
第5章罰則(第17条-第19条)
附則
第1章総則
(目的)
第1条この法律は,インターネットを利用する子どもを有害情報から保護するとともに,インタ
ーネットを利用するその他の国民についても,有害情報にさらされることを希望しない者が有害
情報にさらされることを防止するため,フィルタリング・ソフトウェアの普及の促進を図ることを
目的とする。
(定義)
第2条この法律において,次の各号に掲げる用語の意義は,それぞれ当該各号に定めるところに
よる。
一子ども18歳に満たない者をいう。
二有害情報インターネット上で流通している情報で,子どもに対し,著しく性的感情を刺激
し,著しく残虐性を助長し,又は著しく自殺若しくは犯罪を誘発するものとして,内閣府令で
定める基準に該当し,子どもの健全な成長を阻害するおそれがあると認められるものをいう。
三有害ウェブページ有害情報が掲載されているウェブページとして内閣総理大臣が指定する
ものをいう。
四有害ウェブサイト有害ウェブページを含み内容的に一つのまとまりをなすウェブページ群
として内閣総理大臣が指定するものをいう。
五フィルタリング・ソフトウェア有害ウェブサイトを閲覧できないようにする機能を有する
プログラムをいう。
六インターネット接続電子機器電子計算機,携帯電話その他の電子機器であって,インター
ネットへの接続機能を有するものをいう。
七プログラムインターネット接続電子機器に対する指令であって,一の結果を得ることがで
きるように組み合わせたものをいう。
(国及び地方公共団体の責務)
第3条(略)
(保護者の責務)
第4条(略)
第2章適合ソフトウェアの指定及びその搭載義務等
(有害ウェブページ等の指定)
第5条内閣総理大臣は,有害ウェブページ及び有害ウェブサイトを指定するものとする。
- 5 -
(適合ソフトウェアの指定)
第6条内閣総理大臣は,フィルタリング・ソフトウェアを開発した者からの申出を受けて,当該
フィルタリング・ソフトウェアが有害ウェブサイトを閲覧できないようにするために必要な性能
を有するかどうかを検査し,これを有すると認めるものを適合フィルタリング・ソフトウェア(以
下「適合ソフトウェア」という。)として指定するものとする。
2 適合ソフトウェアの検査の方法は,内閣府令で定める。
(告示)
第7条内閣総理大臣は,第5条又は前条第1項の規定による指定をした場合には,その旨その他
内閣府令で定める事項を告示するものとする。これを取り消したときも,同様とする。
(適合ソフトウェアの搭載義務)
第8条インターネット接続電子機器の製造を業として行う者(以下「製造業者」という。)は,こ
れを製造する場合には,適合ソフトウェアの一をこれに搭載しなければならない。
2 インターネット接続電子機器の販売を業として行う者(以下「販売業者」という。)は,適合ソ
フトウェアが搭載されていないインターネット接続電子機器を販売する場合には,適合ソフトウ
ェアの一をあらかじめこれに搭載して販売しなければならない。
(購入者による適合ソフトウェアの削除の求め)
第9条前条の規定にかかわらず,当該インターネット接続電子機器を専ら使用することとなる者
が子どもでない場合には,これを購入しようとする者は,当該インターネット接続電子機器を製
造した製造業者又はこれを販売する販売業者に対し,搭載されている適合ソフトウェアを削除す
るよう求めることができる。
2 前項に規定する適合ソフトウェアの削除を求められた製造業者又は販売業者は,その削除をす
る場合には,内閣府令で定めるところにより,あらかじめ,当該インターネット接続電子機器を
専ら使用することとなる者が子どもでないことを確認しなければならない。
(使用者による適合ソフトウェアの搭載の求め)
第10条適合ソフトウェアが搭載されていないインターネット接続電子機器を使用する者は,当
該インターネット接続電子機器を製造した製造業者又はこれを販売した販売業者に対し,適合ソ
フトウェアを搭載するよう求めることができる。
(搭載費用の助成)
第11条国は,第8条及び前条に規定する適合ソフトウェアの搭載のための費用について,製造
業者及び販売業者に対する助成措置を講ずるものとする。
(使用者による適合ソフトウェアの削除の求め)
第12条適合ソフトウェアが搭載されているインターネット接続電子機器を専ら使用する者が子
どもでない場合には,その使用者は,当該インターネット接続電子機器を製造した製造業者又は
これを販売した販売業者に対し,当該適合ソフトウェアを削除するよう求めることができる。
2 前項に規定する適合ソフトウェアの削除を求められた製造業者又は販売業者は,その削除をす
る場合には,内閣府令で定めるところにより,あらかじめ,当該インターネット接続電子機器を
専ら使用する者が子どもでないことを確認しなければならない。
第3章フィルタリング審議会
(設置)
第13条内閣総理大臣の諮問に応じて,次項に掲げる事項について調査審議させるため,内閣府
に,フィルタリング審議会(以下「審議会」という。)を置く。
2 内閣総理大臣は,次に掲げる場合には,審議会の意見を聴かなければならない。
一第2条第2号に規定する内閣府令の基準を定めようとするとき。
二第5条の規定による有害ウェブページ又は有害ウェブサイトの指定をしようとするとき。
三第6条の規定による適合ソフトウェアの指定をしようとするとき。
(組織等)
第14条審議会は,前条第2項に掲げる事項に関して学識経験のある者のうちから,内閣総理大
臣が任命する委員10人以内で組織する。
2 委員の任期は,2年とする。ただし,補欠の委員の任期は,前任者の残任期間とする。
(内閣府令への委任)
第15条前二条に規定するもののほか,審議会の組織及び運営に関し必要な事項は,内閣府令で
定める。
第4章適合ソフトウェア削除プログラムの提供等の禁止
第16条何人も,次に掲げるものを他人に提供してはならない。
一適合ソフトウェアを削除するプログラム
二適合ソフトウェアの使用目的に沿うべき動作をさせないプログラム
2 適合ソフトウェアが搭載されたインターネット接続電子機器を使用する者は,正当な理由なく,
第9条又は第12条に定める手続以外の手続で,当該適合ソフトウェアを削除してはならない。
第5章罰則
第17条第8条又は前条第1項の規定に違反した者は,1年以下の懲役又は100万円以下の罰
金に処する。
第18条第9条第2項,第12条第2項又は第16条第2項の規定に違反した者は,30万円以
下の罰金に処する。
第19条法人の代表者又は法人若しくは人の代理人,使用人その他の従業者が,その法人又は人
の業務に関して前二条の罪を犯したときは,行為者を罰するほか,その法人又は人に対しても各
本条の罰金刑を科する。
附則(以下略)
資料2: インターネット上の有害情報からの子どもその他の利用者の保護等を図る
ためのフィルタリング・ソフトウェアの普及の促進に関する内閣府令
(法第2条第2号の基準)
第1条インターネット上の有害情報からの子どもその他の利用者の保護等を図るためのフィルタ
リング・ソフトウェアの普及の促進に関する法律(以下「法」という。)第2条第2号に定める基
準は,次の各号に掲げる種別に応じ,当該各号に定めるものとする。
一著しく性的感情を刺激するもの次のいずれかに該当するものであること。
イ全裸若しくは半裸又はこれらに近い状態の姿態を描写することにより,卑わいな感じを与
え,又は性的行為を容易に連想させるものであること。
ロ性的行為を露骨に描写し,又は表現することにより,卑わいな感じを与え,又は性的行為
を容易に連想させるものであること。
ハ電磁的記録媒体に記録されたプログラムを電子計算機等を用いて実行することにより,人
に卑わいな行為を擬似的に体験させるものであること。
ニイからハまでに掲げるもののほか,その描写又は表現がこれらの基準に該当するものと同
程度に卑わいな感じを与え,又は性的行為を容易に連想させるものであること。
二著しく残虐性を助長するもの次のいずれかに該当するものであること。
イ暴力を不当に賛美するように表現しているものであること。
ロ残虐な殺人,傷害,暴行,処刑等の場面又は殺傷による肉体的苦痛若しくは言語等による
精神的苦痛を刺激的に描写し,又は表現しているものであること。
ハ電磁的記録媒体に記録されたプログラムを電子計算機等を用いて実行することにより,人
に残虐な行為を擬似的に体験させるものであること。
ニイからハまでに掲げるもののほか,その描写又は表現がこれらの基準に該当するものと同
程度に残虐性を助長するものであること。
三著しく自殺又は犯罪を誘発するもの次のいずれかに該当するものであること。
イ自殺又は刑罰法令に触れる行為を賛美し,又はこれらの行為の実行を勧め,若しくは唆す
ような表現をしたものであること。
ロ自殺又は刑罰法令に触れる行為の手段を,模倣できるように詳細に,又は具体的に描写し,
又は表現したものであること。
ハ電磁的記録媒体に記録されたプログラムを電子計算機等を用いて実行することにより,人
に刑罰法令に触れる行為を擬似的に体験させるものであること。
(以下略)
以下は、司法試験問題であるため、バランスをとったネット規制でありますが、これが、「平和問題と死刑存廃問題に関係する情報」が、「政府情報」と置き換えられると、さあたいへんです。
そしてそれは、特定秘密保護法成立の経過から、ありうるのです。
**************平成20年司法試験 憲法論述問題*****************
(注、現在、フィルタリング・ソフト法は存在していません。仮想事例です。最後の資料1、資料2参照下さい。)
Aは,平和問題と死刑存廃問題に関係する情報を無料で配信するサイト(以下「本件サイト」と
いう。)を運営していた。本件サイトには,戦場における死傷者の無残な画像,拷問を受ける人々の
画像,公開処刑の画像等,見る人に不快感を与える可能性のある画像も掲載されていた。フィルタ
リング・ソフト法施行後,本件サイトに含まれるウェブページの大半が有害情報を含む有害ウェブ
ページとして,かつ本件サイト全体が有害ウェブサイトとして指定された。このため,適合ソフト
を搭載したインターネット接続電子機器では,本件サイト内のすべてのウェブページが閲覧できな
くなった。
Aは,大人ばかりでなく子どもも真実を知った上で問題を考える必要があるという信念のもとで
本件サイトを運営していた。しかも,Aは,見る人に不快感を与える可能性のある画像が表示され
る前に,「次のウェブページには,不快感を与えるかもしれない画像が掲載されています。」という
注意を促す文章を掲げていた。遮断される以前に本件サイトに寄せられていた意見のほとんどは,
画像を見てショックを受けたが,平和や死刑の問題を真剣に考えるようになったというものであっ
た。Aは,子どもが全く見ることができず,18歳以上の者も所定の手続を踏まなければ見ること
ができないことへの対抗策として,適合ソフトが搭載されていても本件サイトを閲覧できるように
するプログラムを開発した上,本件サイトとは別の自分のサイトに同プログラムをアップロードし,
無償でダウンロードできるようにした。
このため,Aは,フィルタリング・ソフト法第17条及び第16条第1項第2号が定める,適合
ソフトの使用目的に沿うべき動作をさせないプログラムを提供する罪に当たるものとして起訴され
た。
〔設問〕
1. あなたがAの弁護人であったとして,裁判においてどのような憲法上の主張を行うか,具体的
に論じなさい。
2. Aの主張に対する検察官の主張を想定しつつ,憲法上の問題点について,あなた自身の見解を
述べなさい。
*******************************************
上記問題の内容自体は、小児科医の自分にとって、難しい問題を突きつけられています。
青少年の保護と表現の自由のぶつかり合いです。
どちらも落とせない。
しかし、判断を下さねばならない。
*************************
<原告側の主張>
1 同法が、検閲にあたり、違憲無効であることについて
憲法21条2項は、検閲を禁止する。
検閲とは、「公権力が、外に発表されるべき思想・表現の内容をあらかじめ審査し、不適当と認められるときは、その発表を禁止する行為で、思想・情報の受領前の抑制だけでなく、思想・情報の発表に重大な抑止的効果を及ぼすような事後規制も含む」(芦部説)。
同法があることで、サイト作成者が、戦争の現場や死刑の現場の情報を、そのまま発信するのではなく、加工し、悲惨な画像の掲載を控えるように行動することが考えられる。
重大な抑止的効果を及ぼす可能性があり、検閲(芦部説)にあたり、違憲である。
2 同法の法律文言の過度の広汎性ゆえ、違憲無効であることについて
同法は、「著しく残虐性を助長する情報」を有害情報とすることとし、内閣府令1条に委任して基準を設けているが、二号二は、「同程度に残虐性を助長するもの」とあり、「同程度」という評価を通じて、評価する側の主観による判断が入る余地を許している。
このことは、規制の範囲があまりにも広汎となり、違憲的に適用される可能性があるということであり、法律文言の過度の広汎性ゆえに無効である。
3 同法が、厳格な審査基準を用いて審査すると、法令違憲であることについて
表現の自由は、憲法21条1項で保障されている。
同法は、表現内容規制であり、有用な情報まで規制の対象として及ぶ可能性があり、表現の自由の保障が及ぶ情報を規制する可能性を有しているため、厳格に審査することが求められる。
すなわち、立法目的は、やむにやまれぬ必要不可欠な公共的利益であり、規制手段は、その公共的利益のみを具体化するように厳格に定められなければならない。
本件では、法の立法目的は、有害情報から子どもを保護し、有害情報にさらされずにネットを使用したいと考える大人の利益に配慮することであり、必要不可欠な公共的利益である。
一方、規制手段は、フィルタリングソフトを原則的に、機器に搭載し、有害情報と指定された情報は、自動的に閲覧できなくさせる方法をとっている。
有害情報と指定されると、そのサイト全体に規制が及び、本来有益な戦争の現場や犯罪の現場の情報であったとしても、フィルタリングソフト搭載機器のひとには、ネット上で届けられなくなるのであり、同法は、公共的利益のみを具体化しているとはいえず、過剰な規制として表現の自由を侵害している。
よって、違憲無効である。
以上、1、2、3から同法は違憲無効であり、同法と不可分な関係にある同法に基づくAの起訴も無効である。
4 同法を、Aに適用することは、違憲であることについて
同法は、Aが開設する本件サイトを、有害ウエブサイトと指定した。
本件サイトは、平和問題と死刑存廃問題に関する情報を無料で配信するサイトであり、戦争における死傷者の無残な画像、拷問を受ける人々の画像、公開処刑の画像等、見る人に不快感を与える可能性のある画像も掲載されてはいるものの、戦争や死刑の悲惨な現実を直視するためにつくられたものであった。
本件サイトは、内閣府令1条2号でいういずれの「著しく残虐性」のある情報には該当はしない。
すると、本件サイトは、有害ウェブサイトにはあたらないにも関わらず指定されたものであり、本件サイトをフィルタリングソフトを搭載した機器から閲覧できなくさせたことは、Aの表現の自由の侵害にあたり、違憲であるとともに、Aは無罪である。
<検察側の主張>
1 同法が、検閲にあたらないことについて
検閲とは、「行政権が主体となって、思想内容等の表現物を対象とし、その全部又は一部の発表の禁止を目的として、対象とされる一定の表現物につき、網羅的一般的に発表前にその内容を審査した上、不適当とみとめるものの発表を禁止すること」をいう(最高裁裁判例)。
本件では、有害情報サイトであっても、フィルタリングソフトを削除すれば、誰もが閲覧可能になるのであり、発表の禁止には該当せず、上記検閲にはあたらない。
また、原告の言う、「事後規制」として、抑制効果を有するものであるとしても、青少年保護のもとなされる以上、その規制は、違憲とまでいう強い抑止効果とは言えない。
2 同法の法律文言の過度の広汎性ではないということについて
内閣府令において、残虐性に関する基準を立て、公正な告知を行っており、その基準の適用においては、審議会を設置し、判断しているのであり、恣意的な裁量権の濫用は入らない。
また、残虐性について、何が該当するかは、条文の趣旨・文言から判断可能であり、文言の不明確性から、委縮効果を生じるものでもない。
よって、過度に広範であることで、違憲であるとは言えない。
3 同法が、合理性の審査基準を用いて審査すると、合憲であることについて
同法が制定されるに至った立法事実として、過度の性的表現、過度の暴力や残虐な表現、犯罪や違法薬物への興味を引き起こすような情報等が子どもに有害な影響を及ぼすことが言われていることがある。
青少年の保護するためには、有害情報への規制がなされることは、やむを得ず、青少年保護を目的とする規制の審査基準は、合理性の審査基準が妥当である。
すなわち、立法目的は、立法目的が重要で、立法目的を達成する手段に合理性があるかを審査し、合理性が認められない場合を違憲とすべきである。
本件では、同法の立法目的は、有害情報から子どもを保護し、有害情報にさらされずにネットを使用したいと考える大人の利益に配慮することであり、必要不可欠な公共的利益であり重要である。
手段は、フィルタリングソフト搭載を機器に義務付けることで、そのフィルタリングソフトが自動的に有害情報を排除し、青少年や見たくない大人への閲覧ができないようにすることであり、目的と手段には、合理的な関連性があると言え、合憲である。
有害情報と指定されたサイトを見たい者は、フィルタリングソフトを削除することの手間が必要となり、また、有害情報と指定されたサイトの情報発信に制限が生じるが、それは、有害情報から青少年を保護するための間接的付随的な制約に過ぎない。
よって、同法は、表現の自由を侵害するものではない。
4 同法を、Aに適用することの、適用合憲について
本件サイトは、審議会を経て、適正な手続きに則って、有害サイトの指定がなされたものである。
Aは、有害サイトである本件サイトのフィルタリングソフトの動作をさせないプログラムを、自らのサイトにアップロードし、無償でダウンロードできるようにしたのであるから、違法プログラムの他人への提供を行ったと言える。
Aの行為は、同法17条に該当し、違法であり、起訴は正当である。
<自分の見解>
1 同法が、検閲にあたるかどうかについて
検閲には、事前抑制だけでなく、事後規制であっても、思想情報の発表に重大な抑止的効果を及ぼすものは、検閲として禁止すべきものと考える。
本件では、残虐なものとして、有害情報に指定されることは、一定程度のひとへのネット上での情報発信がなされないことを意味するから、有害情報との指定をさけるよう表現への委縮効果が働くことは否めない。
ただし、同法は情報の発表自体を禁止するものでなないことや、有害情報と指定されたことを不服として、不服申立てをとる手段など他の取りうる手段もあり、委縮効果の程度もさほど強く働くとは、考えにくく、同法が検閲に当たり違憲とまで断じることはできないと考える。
2 同法の法律文言が、過度の広汎性であるかについて
残虐性の基準において、「同程度に助長するもの」という文言は、同程度のとらえ方が、広汎に定義を広げる可能性をもっており、たとえ、審議会と言う第三者機関が介在したとしても、広汎な文言解釈から、違憲な適用の可能性があることは否めない。
一方で、同法は、著しく残虐な情報が、無防備な青少年に届くことを規制する趣旨のものであり、その目的達成のために残虐性の定義する幅に余裕を持たせることも理解できるところである。
従って、同法は、広汎な解釈がある文言を用いているが、違憲とまでは断じることはできないと考える。
3 同法の「より制限的でない他の選びうる手段」の基準(LRAの基準)を用いた違憲性の判断について
同法では、表現内容規制のため侵害する可能性があり、一方で、青少年保護の規制利益もまた、重要なことはいうまでもない。
規制手段は、同法のような表現内容の規制の場合、その規制が、容易に拡大されることがありうる。
一方、行政の裁量権の幅は、青少年保護という視点からは広いと言えるが、裁判所の司法判断をする裁量権の幅も、その侵害される可能性のある人権が表現の自由であることから広いと言え、その審査をより厳格にするためにも、同法の審査に当たっては、「より制限的でない他の選びうる手段」の基準(LRAの基準)を用いることを妥当と考える。
すなわち、立法目的を達成するため規制の程度のより少ない手段が存在するかどうかを具体的・実質的に審査し、それがありうると解される場合には、当該規制立法を違憲とすべきである。
本件において、同法は、ネットの機器には、すべてのサイトの閲覧を可能とし、それらネットの機器が青少年が使用する目的の場合のものにはフィルタリングソフトの搭載を義務付けることとし、希望する成人も同様にフィルタリングソフトを搭載するという、より制限的でない手段が存在している。
よって、同法には、その目的達成により制限的でない手段がある以上、表現の自由を侵害するものとして、違憲無効であると考える。
以上、3から同法は違憲無効であり、同法と不可分な関係にある同法に基づくAの起訴も無効である。
仮に、同法が、法令違憲でないとしても、適用において違憲であるため、Aは無罪である。
以下、論ずる。
4 同法を、Aに適用することの違憲性について
(1) 同法が適用されてAのサイトを有害ウェブサイトとして指定されており(以下、「適用①」という。)、Aの同法違反の判断に当たっては(以下、「適用②」という。)、前提として、その適用の違憲性の判断がなされねばならないと考える。
なぜならば、有害情報と一見見える情報でも、実際には有益な情報であることがありうるのであり、同法により有害情報と指定をされることで個別具体的に有益な情報の侵害行為がないかを慎重に検討すべきであるからである。
従って、以下、4つの 考慮要素を立て、
①発信者の属性、
②発信者の意図、
③ウェブサイトの目的と内容
④その情報が与える影響
同法の適用①の判断をする。
本件では、
①Aは、平和問題と死刑存廃問題に関する情報を無料で配信するサイトの運営者であり、フィルタリングソフトの削除プログラムを開発・販売等を業とするものではない。
②Aは、本件サイトで、大人ばかりではなく、子どもも真実を知ったうえで、平和問題と死刑存廃問題を考えさせようとしたのであり、残額性のある画像を、意図なく発表していたのではない。
③ウェブサイトは、現実の写真が、発表されていたが、見る人に不快感を与える可能性のある画像が表示される前には、警告文が出るようにし、配慮したうえで、平和問題と死刑存廃問題を考えさせるサイトであった。
④実際に、本件サイトを見た人の感想として、本件サイトに寄せられた意見のほとんどは、画像を見てショックを受けたが、平和や死刑の問題を真剣に考えるようになったというものであった。
以上からすると、本件サイトは、残虐性のある有害情報とは断じ得ず、有害情報として、一律に指定したところに違法があったと言わざるを得ないと考える。同時に、Aとしては、自らの救済手段としては、自らのサイトに対するフィルタリングソフトを解除するソフトをネット上にアップする以外に、取り得る有効な手段がなかったとも言える。
(2)Aのフィルタリングソフト削除のプログラムをアップし、他人に提供した行為は、本来、有益な情報として閲覧されるべきものを、ただ単に閲覧できるようにしたのであって、同法に違反する残虐性のある有害情報サイトを閲覧可能にするものではない。
すると、同法に該当するとして、Aを起訴した同法適用②は、有益な情報を本件サイトから発信するAの表現の自由を著しく侵害しており、適用違憲であるとともに、Aは無罪である。
以上
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資料1: インターネット上の有害情報からの子どもその他の利用者の保護等を図る
ためのフィルタリング・ソフトウェアの普及の促進に関する法律
目次
第1章総則(第1条-第4条)
第2章適合ソフトウェアの指定及びその搭載義務等(第5条-第12条)
第3章フィルタリング審議会(第13条-第15条)
第4章適合ソフトウェア削除プログラムの提供等の禁止(第16条)
第5章罰則(第17条-第19条)
附則
第1章総則
(目的)
第1条この法律は,インターネットを利用する子どもを有害情報から保護するとともに,インタ
ーネットを利用するその他の国民についても,有害情報にさらされることを希望しない者が有害
情報にさらされることを防止するため,フィルタリング・ソフトウェアの普及の促進を図ることを
目的とする。
(定義)
第2条この法律において,次の各号に掲げる用語の意義は,それぞれ当該各号に定めるところに
よる。
一子ども18歳に満たない者をいう。
二有害情報インターネット上で流通している情報で,子どもに対し,著しく性的感情を刺激
し,著しく残虐性を助長し,又は著しく自殺若しくは犯罪を誘発するものとして,内閣府令で
定める基準に該当し,子どもの健全な成長を阻害するおそれがあると認められるものをいう。
三有害ウェブページ有害情報が掲載されているウェブページとして内閣総理大臣が指定する
ものをいう。
四有害ウェブサイト有害ウェブページを含み内容的に一つのまとまりをなすウェブページ群
として内閣総理大臣が指定するものをいう。
五フィルタリング・ソフトウェア有害ウェブサイトを閲覧できないようにする機能を有する
プログラムをいう。
六インターネット接続電子機器電子計算機,携帯電話その他の電子機器であって,インター
ネットへの接続機能を有するものをいう。
七プログラムインターネット接続電子機器に対する指令であって,一の結果を得ることがで
きるように組み合わせたものをいう。
(国及び地方公共団体の責務)
第3条(略)
(保護者の責務)
第4条(略)
第2章適合ソフトウェアの指定及びその搭載義務等
(有害ウェブページ等の指定)
第5条内閣総理大臣は,有害ウェブページ及び有害ウェブサイトを指定するものとする。
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(適合ソフトウェアの指定)
第6条内閣総理大臣は,フィルタリング・ソフトウェアを開発した者からの申出を受けて,当該
フィルタリング・ソフトウェアが有害ウェブサイトを閲覧できないようにするために必要な性能
を有するかどうかを検査し,これを有すると認めるものを適合フィルタリング・ソフトウェア(以
下「適合ソフトウェア」という。)として指定するものとする。
2 適合ソフトウェアの検査の方法は,内閣府令で定める。
(告示)
第7条内閣総理大臣は,第5条又は前条第1項の規定による指定をした場合には,その旨その他
内閣府令で定める事項を告示するものとする。これを取り消したときも,同様とする。
(適合ソフトウェアの搭載義務)
第8条インターネット接続電子機器の製造を業として行う者(以下「製造業者」という。)は,こ
れを製造する場合には,適合ソフトウェアの一をこれに搭載しなければならない。
2 インターネット接続電子機器の販売を業として行う者(以下「販売業者」という。)は,適合ソ
フトウェアが搭載されていないインターネット接続電子機器を販売する場合には,適合ソフトウ
ェアの一をあらかじめこれに搭載して販売しなければならない。
(購入者による適合ソフトウェアの削除の求め)
第9条前条の規定にかかわらず,当該インターネット接続電子機器を専ら使用することとなる者
が子どもでない場合には,これを購入しようとする者は,当該インターネット接続電子機器を製
造した製造業者又はこれを販売する販売業者に対し,搭載されている適合ソフトウェアを削除す
るよう求めることができる。
2 前項に規定する適合ソフトウェアの削除を求められた製造業者又は販売業者は,その削除をす
る場合には,内閣府令で定めるところにより,あらかじめ,当該インターネット接続電子機器を
専ら使用することとなる者が子どもでないことを確認しなければならない。
(使用者による適合ソフトウェアの搭載の求め)
第10条適合ソフトウェアが搭載されていないインターネット接続電子機器を使用する者は,当
該インターネット接続電子機器を製造した製造業者又はこれを販売した販売業者に対し,適合ソ
フトウェアを搭載するよう求めることができる。
(搭載費用の助成)
第11条国は,第8条及び前条に規定する適合ソフトウェアの搭載のための費用について,製造
業者及び販売業者に対する助成措置を講ずるものとする。
(使用者による適合ソフトウェアの削除の求め)
第12条適合ソフトウェアが搭載されているインターネット接続電子機器を専ら使用する者が子
どもでない場合には,その使用者は,当該インターネット接続電子機器を製造した製造業者又は
これを販売した販売業者に対し,当該適合ソフトウェアを削除するよう求めることができる。
2 前項に規定する適合ソフトウェアの削除を求められた製造業者又は販売業者は,その削除をす
る場合には,内閣府令で定めるところにより,あらかじめ,当該インターネット接続電子機器を
専ら使用する者が子どもでないことを確認しなければならない。
第3章フィルタリング審議会
(設置)
第13条内閣総理大臣の諮問に応じて,次項に掲げる事項について調査審議させるため,内閣府
に,フィルタリング審議会(以下「審議会」という。)を置く。
2 内閣総理大臣は,次に掲げる場合には,審議会の意見を聴かなければならない。
一第2条第2号に規定する内閣府令の基準を定めようとするとき。
二第5条の規定による有害ウェブページ又は有害ウェブサイトの指定をしようとするとき。
三第6条の規定による適合ソフトウェアの指定をしようとするとき。
(組織等)
第14条審議会は,前条第2項に掲げる事項に関して学識経験のある者のうちから,内閣総理大
臣が任命する委員10人以内で組織する。
2 委員の任期は,2年とする。ただし,補欠の委員の任期は,前任者の残任期間とする。
(内閣府令への委任)
第15条前二条に規定するもののほか,審議会の組織及び運営に関し必要な事項は,内閣府令で
定める。
第4章適合ソフトウェア削除プログラムの提供等の禁止
第16条何人も,次に掲げるものを他人に提供してはならない。
一適合ソフトウェアを削除するプログラム
二適合ソフトウェアの使用目的に沿うべき動作をさせないプログラム
2 適合ソフトウェアが搭載されたインターネット接続電子機器を使用する者は,正当な理由なく,
第9条又は第12条に定める手続以外の手続で,当該適合ソフトウェアを削除してはならない。
第5章罰則
第17条第8条又は前条第1項の規定に違反した者は,1年以下の懲役又は100万円以下の罰
金に処する。
第18条第9条第2項,第12条第2項又は第16条第2項の規定に違反した者は,30万円以
下の罰金に処する。
第19条法人の代表者又は法人若しくは人の代理人,使用人その他の従業者が,その法人又は人
の業務に関して前二条の罪を犯したときは,行為者を罰するほか,その法人又は人に対しても各
本条の罰金刑を科する。
附則(以下略)
資料2: インターネット上の有害情報からの子どもその他の利用者の保護等を図る
ためのフィルタリング・ソフトウェアの普及の促進に関する内閣府令
(法第2条第2号の基準)
第1条インターネット上の有害情報からの子どもその他の利用者の保護等を図るためのフィルタ
リング・ソフトウェアの普及の促進に関する法律(以下「法」という。)第2条第2号に定める基
準は,次の各号に掲げる種別に応じ,当該各号に定めるものとする。
一著しく性的感情を刺激するもの次のいずれかに該当するものであること。
イ全裸若しくは半裸又はこれらに近い状態の姿態を描写することにより,卑わいな感じを与
え,又は性的行為を容易に連想させるものであること。
ロ性的行為を露骨に描写し,又は表現することにより,卑わいな感じを与え,又は性的行為
を容易に連想させるものであること。
ハ電磁的記録媒体に記録されたプログラムを電子計算機等を用いて実行することにより,人
に卑わいな行為を擬似的に体験させるものであること。
ニイからハまでに掲げるもののほか,その描写又は表現がこれらの基準に該当するものと同
程度に卑わいな感じを与え,又は性的行為を容易に連想させるものであること。
二著しく残虐性を助長するもの次のいずれかに該当するものであること。
イ暴力を不当に賛美するように表現しているものであること。
ロ残虐な殺人,傷害,暴行,処刑等の場面又は殺傷による肉体的苦痛若しくは言語等による
精神的苦痛を刺激的に描写し,又は表現しているものであること。
ハ電磁的記録媒体に記録されたプログラムを電子計算機等を用いて実行することにより,人
に残虐な行為を擬似的に体験させるものであること。
ニイからハまでに掲げるもののほか,その描写又は表現がこれらの基準に該当するものと同
程度に残虐性を助長するものであること。
三著しく自殺又は犯罪を誘発するもの次のいずれかに該当するものであること。
イ自殺又は刑罰法令に触れる行為を賛美し,又はこれらの行為の実行を勧め,若しくは唆す
ような表現をしたものであること。
ロ自殺又は刑罰法令に触れる行為の手段を,模倣できるように詳細に,又は具体的に描写し,
又は表現したものであること。
ハ電磁的記録媒体に記録されたプログラムを電子計算機等を用いて実行することにより,人
に刑罰法令に触れる行為を擬似的に体験させるものであること。
(以下略)