京の辻から   - 心ころころ好日

名残りを惜しみ、余韻をとどめつつ…

 「あんじゃねぇ」

2015年02月08日 | こんな本も読んでみた


『風雪のペン』(吉橋通夫著)
 【声なき民に寄り添い、命をかけて真実を伝える―― 草分けの女性新聞記者となるフキ、その波瀾万丈の半生。】

著者の本はかつて『なまくら』を読んだことがあった。人間心理の豊かなバリエーション。心に響き、余韻を残した作品だった。野間児童文芸賞、さらに第3回京都水無月大賞を受賞されている。この度、「『風雪のペン』に想う」と題した文章を合評するという機会が生じた。読んでもないのに評することはできそうにない。しかも著者とは身近にご縁がある。2週間という限られた期間だが、読まないわけにはいかない…。

立ち寄った書店に置いてなくて図書館を訪ねたが、ここでもあいにく貸し出し中だった。予約で順番待ちなどしていられない。昨日の今日で手に入れることができたのは、アマゾンのおかげさまで、ピンポイントで指定など、いざという時にはホンマに強い味方になるものだと感謝。

「おとっつぁは、…世均しのために働いているだよ」
「同じ志の衆と共に立ち上がっただよ」
「帰ってきたら茶素けを食いてえで、用意しといてくれ」
しかし、父は殺された。

「おれたちは暴徒なんかでねぇ。藩閥政治の悪政を正し、だれもが幸せに暮らせる世の中にするために立ち上がった義兵だ!」
この背景は日本史で習った秩父事件でしょう。フキはこのとき7歳。厳冬に耐え雪の下から緑の芽を出すフキノトウにちなんで父母が名付けた「フキ」という名。母はこの3年前になくなっていた。一人ぼっちになったフキは、佐久の追分宿の旅籠に飯炊きとして売られ、それでも精いっぱい生きようと新たな人生が始まっていく。シンプル、簡潔な言葉で綴られ、引き込まれて読みだした。読み終わるだろうか。女性新聞記者フキの半生とは…。

「あんじゃねぇ(大丈夫だ、案ずることはない)」
フキが困ったときや失敗したときに、不安な時にはいつも父はこう言って励ましたという。
人の一生にも主題歌がある―― どなたかが言っていたのを思い出す。
コメント (6)
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