京の辻から   - 心ころころ好日

名残りを惜しみ、余韻をとどめつつ…

『モンテレッジォ 小さな村の 旅する本屋の物語』

2019年01月15日 | こんな本も読んでみた

イタリアのトスカーナの美しい自然に恵まれてはいるが、この世から忘れ去られてしまったような村・〈モンテレッジォ〉。
その「人知れぬ山奥に、本を愛し、本を届けることに命を懸けた人たちがいた。小さな村の本屋の足取りを追うことは、人々の好奇心の行方を見ることだった。…」(「はじめに」)。わずかに生存している子孫たちを追いかけ、消えゆく話を聞き歩き、何かに憑かれるように、一生懸命に書いた、そうです。そうして書かれたのが『モンテレッジォ 小さな村の 旅する本屋の物語』(内田洋子)。

ヴェネツィアに住み、親しく通うようになった古書店〈ベルト―二書店〉。「本は書店の細胞」。膨大な数の本があふれていても店主アルベルトは、本ごとに常に相応しい居場所を見つけてやり、少しずつ並べ直していく。その頻繁な手入れのおかげで、店内はいつも瑞々しい雰囲気に包まれているのだそうです。

一冊の本を手に取り、奥付まで見入っていると、店主が「近所に住む著者に直に尋ねてみますか」とおずおずと訊いてきたときのことを、
「どんな本でも、連れて来る情景がある。一冊の本をきっかけに、思いもかけない蔓を引き当てることもある。見知らぬ土地や人が、本を介してそばへ寄ってくる瞬間だ」、と結んだ内田洋子さんの言葉が素敵だった。

その店を開業した4代前、初代が実は〈モンテレッジォ〉からの移住者で、代々、本の行商人だったと知るのです。籠いっぱいの本を担いで、イタリアじゅうを旅した行商人たちのおかげで、各地に書店が生まれ、〈読むということ〉が広がったことを教えられる。内田さんは「矢も楯もたまらず」、村に向かう。


写真も豊富。この先どんな話が収められているのか。村の生活は? どんな歴史が? ワクワクしています。

コメント (4)
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