京の辻から   - 心ころころ好日

名残りを惜しみ、余韻をとどめつつ…

心に住まう本 心に住まう言葉

2022年07月04日 | 日々の暮らしの中で

『草木成仏の思想』(末木文美士)。
草木が、心の働きなどないものが、成仏する? そもそも草木に「成仏」という言葉を用いる? 
「草木国土悉皆成仏」。人間と自然の境目がなく、あらゆるものに同じいのちを見る日本人の精神性として、ごく浅く言葉は認知している。

第1章 第1節「山川草木国土悉皆成仏」は間違っている
 この言葉は、哲学者の梅原猛が言い出したことで、それを当時の中曽根康弘首相が演説の中で用いたことで、一気に広まったようだ。「典拠不明で、由来のわからない言葉が独り歩きすることになった」。
 第2節 草木成仏論の前提 
 第3節 忘れられた大思想家安然 へ。まことに遅々とした歩みで読み始めた。


心の働きを持たない非情の石や山や川や草木が成仏するという論の世界へ、どれほどの納得度で“なあるほど!”と合点できるだろう。
なぜ?なぜ?と「なぜ」をいっぱい置いておくと、答えはふといつかやってくるものだとか。自分で考え、自分の中に取り入れるには相当な時間がかかるに違いない。


新聞の書評欄で『帆神 北前船を馳せた男 工楽松右衛門』(玉岡かおる)が取り上げられていたのは3月も末のこと。漁師から船乗りになり、紆余曲折を経て江戸の海運を変革した海商・松右衛門のサクセス物語。
昔、童門冬二の『銭谷五兵衛と冒険者たち』をとても興味深く読んだことが思い出された。
栖原屋角兵衛が若い高田屋嘉兵衛に巡り合い、銭屋五兵衛も弁吉など後進の若者たちを親身に育てた。
「海の男は、皆心が広い。自分のやりたいことを、自分一代でやり遂げようとは思わない。必ず若い後進を育てていく」「志を次代に託してゆく、ということは、後から歩いてくる者に対する限りない信頼があるからなのだ」と描いた童門さん。

数学者で京大教授だった森毅さんは月に100冊の本を読んだそうだ。生前、じかにその話を交わした松尾貴史さんは驚き、「とても覚えていられない」と言ったところ、「いいんだよ、覚えてられなくても。必要なことは残るから」という言葉が返ってきたそうだ。
とても100冊など読めないし、選ぶ本も異なるわけだが、松尾さんの話を聞いていて(そうかもしれない)思ったことだ。
「読書は読んだ本の数よりも心に住まう本を、言葉を、いかに持つかではないでしょうか」と言われたのはどなただったかな。

読んでみたいという思いが最高の時に手にしたいと思っていた。
コメント (4)
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