京の辻から   - 心ころころ好日

名残りを惜しみ、余韻をとどめつつ…

「大したもん蛇」

2024年09月20日 | 日々の暮らしの中で
9月も初めころだったか、新聞の小さな記事に目が留まった。
第46回サントリー地域文化賞は、水害の記憶を継承する祭り「えちごせきかわ大(たい)したもん蛇(じゃ)まつり」(新潟県関川村)など5団体に決まった。―後略

村の全集落でつくる大蛇が練り歩き、水害の記憶を継承するユニークな祭りだと、ネット上では簡単に紹介されていた。
「越後」「水害の記録」の文字は一足飛びに、読んでまだ日も浅い、乙川優三郎氏の小説『露の玉垣』を思い起こさせた。


越後の新発田は、慶長3年に藩祖の溝口秀勝が入封して以来、長く溝口氏の城下町で、外様大名ながら一度も国替えをされずに、水害を繰り返す水田地帯を治め続けた。
領主も武士も農民も町人も、土地にへばりついて徳川の太平の世を生きた。
洪水と干ばつ、浅間山の噴火は米の不作による飢饉を何度も引き起こした。川の氾濫を無くす自然との戦いと貧困との戦いに、300年にもわたって挑み続けねばならなかった。
溝口半兵衛(1756-1819)は家老という激職の中で、藩士たちの列伝「世臣譜」の編纂を志した。 (解説より)

作者は「たった一人の人間が残した武家社会の実像」をもとに、「小藩の家臣の移ろいやすい運命」「窮乏に喘ぎながらも主家を支えてきた、国史には名をとどめない人たち」の「魂の物語」を書きたいと思われた。
作中、溝口半兵衛はその記録を『露の玉垣』と名付ける。

抗いようのない絶望の底にも、光を見る。わずかな希望を見い出す人間の粘り強さ、忍耐強さ。知恵。人間の生きる力の根源だと言うも思うも易くで、圧倒される思いで読んだ。

新潟県は名にし負う米どころ。米の恩恵を受けて生きてきた人々の祈り。先人への感謝。歴史とともに語り伝えようとする村人の尊い努力が息づいた祭りなのだろう。
継続には担い手の不足がよく話題になるが、俗化されることなく、村人の喜びごととして繰り返されるようであってほしいなと思ったりした。



スーパームーンを見た翌日、娘家族は孫娘一人を残してゴールドコーストへ。
今日から3日間、サッカーのトーナメントがある孫Lの属すチームの応援に繰り出した。




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